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燃やすか、還るか?紙化が映す文化の違い

アメリカでも、環境対応型のパッケージの一つの策として紙化が進められていますが、日本と微妙にアプローチが異なっているのは、アメリカと日本のゴミの分別の違いが影響しているからではないでしょうか。

私が日本に住んでいた頃は、ゴミは燃えるか燃えないかで大まかに分け、その後に段ボールや古紙、リサイクル容器、電池、スプレーなど、細かい分別に苦労しました。

対照的に、今私のいる地域では、ゴミは埋め立てかリサイクルの二つに分けられることが一般的です。ちなみに私のマンションの共同ゴミ捨てスペースには、一般ゴミとリサイクルゴミ(しかも紙、プラスチック、ガラス瓶、缶などがごちゃ混ぜです!)のたった二つの容器が設置されているだけです。

こういった日常的なゴミ捨ての習慣やイメージの違いが、パッケージにも表れていると思うのです。

我が子のために地球と未来を残したい:『DYPER』

紙化と聞いて思い浮かぶのは、ゴミを燃やすことで有害物質を減らせる良さや、燃やすことでゴミの量を減らせる可能性ですよね。特に日本では、「燃やせるゴミ」という表現があるくらいで、ゴミを燃やすことに対しては割と前向きな印象があるように思います。

一方でアメリカでは基本、ゴミを燃やすことはないので、ゴミがゴミのまま、ずっと地球上に残るイメージを持っているような気がします。

『DYPER』というオムツは、毎年数十億個もの使い捨ておむつが埋め立て地に積みあがる現実に危機感を持ったことから開発されました。オムツそのものも地球環境に優しく、化学物質やプラスチックを最小限に抑える設計になっています。

その理念はパッケージにも反映されています。アメリカでもオムツのパッケージは、プラスチックの外装に赤ちゃんの笑顔が大きく浮かぶデザインが一般的ですが、『DYPER』はクラフト感あふれる紙の包みに、色数を減らしてインクの使用量も削減したシンプルな構成で、売り場でもかなり目立つ上に、企業理念がダイレクトに伝わってきます。(画像1)

DYPERの写真

(画像1)

ただ、素朴な疑問も浮かびますよね?オムツは湿気厳禁な商品だと思うのですが、紙化によってその辺りの機能性も弱まったりしないのかな?と。多少地球環境に負荷がかかっても、赤ちゃんファーストでいいのではと思うのですが、『DYPER』としては「不便で不完全であることは承知の上。このままオムツで埋め尽くされてしまった未来を、赤ちゃんに残してはいけない」という考えだそうです。

なるほど!使用済みオムツが燃えるゴミとなる日本で育った私からはちょっと出てこない着想です。

パッケージもプラントベース:アサイーボウル

(画像2)

紙をどのように定義するかにもよると思うのですが、このSAMBAZONのアサイーボウルは、100%プラントベースのパッケージで作られています。

(画像3)

それは早い話が「紙」では?という気がしなくもないですが、当商品の内蓋に書いてある主張(画像3)を和訳してみますと…「当社のアサイーボウルは、公正な取引、有機栽培、そして野生採取された成分を使用して、持続可能な方法で製造されています。そのため、私たちのパッケージングも同じ価値観を持つべきだという考えから、サンバゾンは誇りを持ってこの新しいパッケージングを先駆的に採用しています。このパッケージは、堆肥化可能な素材と100%植物由来の繊維で作られています。」とのことです。

紙化したということより、埋め立てた後に地球に還ることを強調したいように受け止めました。

(画像4)

(画像5)

(画像6)

このパッケージ、パルプモールド同じような製造工程だと思うのですが、かなり自由度の高い構造になっております(画像4)。外装のスリーブの下には、その名の通りボウルとアサイーシリアルの入ったトッピングのポーションが一体となっています(画像5)。ポーション部分を倒してアサイーボウルの完成です(画像6)。

耐水性を出すための加工も樹脂を避けたのか、内蓋のシールもがっちり糊付けされていて剥がしづらく、開けるのに少々手こずりましたが、持続可能性のためならこのくらい、人類は我慢すべきかもしれませんね。

紙筒のデオドラント Oceanly

(画像7)

人類の我慢といえばこちらのデオドラント商品ブランドOceanlyです。

スティックのりの構造で中身を繰り出すタイプのデオドラント商品は、日本でもポピュラーだと思いますが、こちらの商品は、少し丸みがかった四角柱の紙筒パッケージです。紙だからこそ表現できた自然な風合いと色使いは魅力的で全種類揃えたくなりますね。

繰り出しタイプなのに角があるこのスティック構造、どのように紙で実現できたのか興味が湧きます。

(画像8)

底の部分を見てみますと、なんのことはない。回すのではなく、底に空いた穴から中身を押し出すタイプなのがわかりました。

力づくでもありますし、出し過ぎた時に戻すのも大変そう…ですが、やはり先ほどのアサイーボウル同様、地球のためなら多少は人間が頑張る必要がありそうです。

環境対応へのメッセージもオシャレに

環境に配慮した商品やブランドが登場する際、そのメッセージをパッケージにも取り入れるのは、日本とアメリカの共通点ではないでしょうか。

ただ、環境に対する取り組みを伝える際、日本では少々真面目で教育的なトーンになりがちですが、アメリカの市場ではお客様は神様ではないからか(?)友達同士のような軽妙な呼びかけになることもあります。

『Cocojune』という商品(画像9)は、動物性食品を摂らないヴィーガン向けに作られた、ココナッツをベースとしたヨーグルト代替品です。その中身はヨーグルトそのもののようなテクスチャで、スパイシーな酸味とココナッツの風味が舌に残りますが、ヨーグルトを代替する商品として、その満足度はかなり高いのではないでしょうか。

(画像9)

そして、こちらの商品も中身のヴィーガン志向に合わせて、パッケージもプラスチックフリーにこだわっています。裏返してみると、お客様へ向けたメッセージが(画像10)目に飛び込んできます。

(画像10)

またしても拙訳で恐縮ですが

「かんぱ〜い!

このちょっとしたカップは紙でできています。

ゴミなんてクールじゃないよね。

みんなでプラスチックニュートラルを目指そう!」

とあります。

「カーボンニュートラル」は日本でもよく聞く言葉かもしれませんが、一方で「プラスチックニュートラル」はまだ馴染みが薄いかもしれません。

しかし、「プラスチックフリー」とともに、これからますます注目を浴びる概念となる可能性がありますね。

商品だけでなく、そのメッセージまでもが環境に配慮した未来を想像させてくれます。

燃やすか、還るか?紙化が映す文化の違い

紙化のコンセプトが、パッケージが埋立地で地球に還ることにもつながっていることが、日本とのパッケージ表現の違いに現れているように思います。

紙化に対する多様な表現には、ただ単に「紙化しました!」だけでは伝わらない、アメリカのゴミ処理事情と環境対策の視点が感じ取れます。

逆に言えば、紙化は環境に適した取り組みの一環ではあるものの、他の解決策とともに検討すべき要素の一つに過ぎず、日本ほど紙化へのアクションは盛んではないかもしれません。ではどのような解決を試みているのか?今後もさまざまな解決策を取り上げ、環境への取り組みを紹介していきたいと思いますので、次の機会を楽しみにお待ちいただければ幸いです。

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