アメリカの新ブランド専門のグローサリーストアでみるパッケージとトレンド
ニューヨークをはじめアメリカの大都市では、新商品や新サービスを発表する機会の場として、ポップアップストアが定番になっていますが、ニューヨークでは、そんなポップアップストアを常設店化したお店、Pop Up Grocerという、個性的な食品と日用品の新商品を集めたグローサリーストアがあります。
いわゆる規模の小さなスーパーマーケットなのですが、個性的なブランドの新商品のみを扱う面白いお店で、定期的に商品が入れ替わっていきます。
そんなお店が登場した背景にあるのは、人々の消費行動に大きな変化をもたらしたパンデミックの最中に急増した食品や日用品の分野におけるニッチな新ブランドたちです。今回はそんな新ブランドの商品が集まる店、Pop Up Grocerで見つけた新しいブランド商品のお洒落なパッケージや現在の流行を紹介します。
新ブランド専門のグローサリーストア
店内は普通のスーパーマーケットでは見かけないような、カラフルな色使いのポップな商品がたくさん並び楽しい雰囲気になっています。パスタやソース、お菓子、缶詰、インスタント食品、野菜、冷凍食品、代替肉や代替ミルク、シリアル、ノンアルコール飲料、コーヒー・お茶、美容品、ペットフードなど新ブランドが多く登場している人気の分野毎に商品が整然と並べられています。
最近登場する新しいブランドは、特定のニッチに特化したスモールビジネスが多く、個性的なブランドや商品のコンセプトに加え、健康、環境などに配慮したプレミアム感のある商品構成で、商品パッケージもこだわりを持ってデザインされている高いクオリティのものが多いのが特徴です。
新しいものを試すことが好きな人々が多い雰囲気で、客層は女性が多めですが、中には、近所の子供たちや、子供連れのファミリーたちの姿も見かけます。
アメリカでは、近年、お店への来客数が増え売上が上がるため、カフェを併設する異業種のお店が増えています。
こちらのお店にも、くつろげるカフェが併設され人気になっています。
大手ブランドの商品は一切置いていないお店ですが、日常的なお買い物、例えば、野菜やミルク、魚、お菓子など食料品の買い物を一通りすることができます。
お洒落なパッケージの商品など、他のお店では見たことがない商品が多く、通常のスーパーでの買い物とは一味違う発見の多いショッピング体験ができます。そして、それぞれの商品をよく見てみると最近のアメリカの流行が見えてきます。
冷凍食品と野菜のパッケージ
まずは、冷凍食品コーナーから。こちらは、アメリカを代表するメニューであるバーガーのパテが目を引く面白いパッケージでした。
アメリカでは、近年、牛肉を食べない人が増えており、シーフードや代替肉の商品が増えて来ています。こちらは、ノルウェー産の養殖サーモン、ハーブとスパイスからなるプレミアム感のあるパテの冷凍食品です。
バーガーの絵のパッケージは、パテの部分が切り抜かれ、箱の中のサーモンのパテの実物が見えるように工夫されており、この商品は、バーガーに挟むパテであることが一目でわかります。説明不要の絵を見るだけでその商品の用途がわかる、これ以上わかりやすいデザインはないかもしれません。イメージ写真ではなく、中身の具材の実物が見えるようになっているので安心して購入することができます。
そして、野菜コーナーからは、アメリカのスーパーの野菜コーナーで定番のパック入りサラダ野菜です。
ニューヨーク発のBowery Farmingは、農薬を一切使わず、清潔な環境の建物内で野菜を生産するインドア農業(Indoor Farming)を特徴とするブランドです。
ほうれん草は、農薬の残留が多い野菜のひとつであり、農薬が使われた野菜はその農薬を落とすためにさらに薬剤が使われて洗われることも懸念されています。健康意識が高まっている今、体に悪いものを一切使用しない、クリーンな環境で育てられた野菜の需要が高まっており、そんなクリーンなイメージを強調するように、真っ青なパッケージで目を引き、農薬が一切使われていないこと、洗わずに食べられることなどのメッセージがとても鮮明にわかるようになっています。
レトロな食品パッケージ
食品棚の人気商品は、パスタソースやパスタ、サーディンの缶詰などがあります。
パスタは、ニューヨークのSoHoにあるイタリア料理店、RUBIROSAの商品です。
パンデミックを機に、このイタリア料理店はパスタやソース、オリーブオイルなどを商品化しています。こちらのカタツムリのような形をしているLumacheと呼ばれるパスタのパッケージのデザインのように、最近レトロなデザインと色のパッケージがとても流行っています。
このパッケージのような格子柄が使われている商品が他ブランドでも色々登場していて、食品系の新ブランドの定番デザインになっています。
パスタソースは、Z世代が作り出した次世代のソースとして話題になっている西海岸ロサンゼルス発の商品です。商品名のフォントの使い方やコントラストのきいた色使いなどが目を引きます。
そして、小さいながらもとても存在感のあるカラフルなアートの絵柄のパッケージの商品が今アメリカで流行中のサーディンの缶詰です。この特定の商品に限らず、アメリカなどでは、最近TikTokなどのSNSの影響もあり、綺麗なパッケージのシーフードの缶詰が人気になっています。
木製の大き目のチーズボードの上にチーズやクラッカーなどと一緒に、小さい缶詰も並べておつまみとして楽しむような動画が拡散され流行し、このサーディン缶のような可愛いアートなパッケージの缶詰がとても人気になっています。
こちらは、2020年に創業したFishwifeというシーフードの缶詰専門ブランドの商品です。スペインで製造されたイワシの缶詰で、レトロな可愛いデザインのイラストが印象的です。
童心をくすぐるイラストのパッケージ
アメリカらしい朝食の定番であるシリアルの品揃えもこのお店では普通のスーパーマーケットとは全然異なります。Magic Spoonというブランドは、子供心をくすぐる絵本に登場するような可愛いアートなパッケージの商品を展開しています。
高タンパク質で低炭水化物、砂糖を一切使わないなど、原材料にこだわりを持って作られたヘルシーな商品をモットーとしているブランドです。
ミルクも可愛らしい絵柄のパッケージの商品となっていますが、実はこちら、普通のミルクではありません。
アメリカでは、動物性のミルクは最近好まない人が増えており、このお店でも動物性のミルクは一切置いていません。代わりにあるのは代替ミルクです。こちらのミルクは動物性ではないホエイのタンパク質(animal-free whey protein)によって作られた代替ミルクで、本物の牛乳に近い味を再現しています。
チョコレートミルクやストロベリーミルクなどのフレイバー付きの商品もあります。動物から搾取をしないというメッセージなど、みんなに伝えたいメッセージがパッケージに込められています。最近こういったイラストによる可愛い楽しい絵柄のパッケージの新商品をとても多く見かけます。
クラフト感を漂わすドリンクのパッケージ
ドリンク商品の売り場の冷蔵庫も今流行りの商品や新ブランドの商品が並びます。ノンアルコールドリンクを好む人が急増し、ブランドもたくさん増えています。カクテルのノンアルコールドリンクから始まり、ビールもノンアルコール商品が色々登場しています。
こちらは、アメリカのクラフトビールで人気のIPAのノンアルコールビールです。昔ながらのビールとは明らかにパッケージのデザインが異なる、クラフトビールらしいパステルカラーのお洒落なデザインのパッケージとなっています。
ヘルシー志向の人が増えてきて、ジュースも人工的なものでなく、旬の果物の味を届けたいという本物志向のブランドもでてきています。ロサンゼルスのLovely Bunch Incという2021年創業のアップルジュースのブランドは、酸味と甘みのある旬のりんごを缶に閉じ込めたような今までのアメリカのジュースを覆す本物のジュースを提供するブランドとして生まれました。
フレッシュなりんごを純粋にジュースにすることを表現しているようなシンプルなデザインですが、まっさらなアルミ缶にシールを張ったデザインのパッケージは意外にも目を引くものとなっています。
ヘルシーさを演出するお菓子のパッケージ
スナック菓子も最近はお洒落なパッケージのブランドが色々と登場しています。特に目を引く可愛いイラストのスナックは、子供たちだけでなく、大人にも人気があります。
最近はスナック食品においても原材料や調理方法に注意を払ったものが増えており、カリフラワーなど野菜ベースの材料を使用し、油で揚げずオーブンで焼いたスナックや、トマトのような野菜や果物をフリーズドライさせたヘルシーなスナックなどが人気になっています。
アートなパッケージのStellar Snacksは、母と娘で作りあげたプリッツェル菓子のブランドです。愛情いっぱいの商品をモットーとしており、お菓子そのものはもちろんですが、そのお菓子のパッケージもクリエーターによる心のこもった作品となっています。
実はこのブランドでは、アーティストたちが新しい表現をするキャンパスの場としてパッケージデザインの機会を提供しており、アーティストたちとコラボしそれぞれのパッケージを制作しています。スモールビジネスだからこそできる、面白い試みが見られるブランドです。
ペットフードも人気分野に
グローサリーストアで販売している食品は、最近は人間のものだけではありません。
ペットのためのフードが並ぶ棚も多くの所で見られるようになってきています。この小さなお店でも、ペットのための棚があり、ドッグフードが売られています。通常の食品同様、ペットフードも原材料にこだわりのあるヘルシーな商品が増えており、骨の形の可愛いドッグフードが透明窓から見えるなどパッケージにも色々な工夫が凝らされています。
パンデミックにより人々の消費行動や興味に大きな変化が起こりましたが、そんな変化に応じて、アメリカでは、食品や日用品の分野で多くのニッチな新ブランドが誕生して来ています。
日常の買い物と言えば、以前は、大手ブランドの定番商品ばかりが並ぶ画一的なスーパーが一般的でしたが、最近では、ホールフーズをはじめとした新商品に注力しているスーパーマーケットやお洒落な新商品を色々揃えたキュレーション的なお店も増えており、お買い物中に新しい発見があって楽しめるお店も多くなって来ています。
あまり知られていない新ブランドが新商品を開発するときに、最も大切な要素の一つが、目にした人が思わず手に取り購入してみたくなるような魅力的なパッケージです。最近の新しいブランドは、デザインはもちろん、ブランドが伝えたいメッセージや、商品の特徴の説明をうまくパッケージに盛り込むなど様々な工夫が凝らされています。
SNSをはじめとしたオンラインでのPRに加え、Pop Up Grocerのような実店舗でのプロモーションが可能なお店も増えており、今後ますます多様で面白い食品や日用品の新商品の登場が期待できそうです。
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