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パッケージのリニューアルによる売り上げ拡大

1995年、日本コカ・コーラ株式会社はコカ・コーラのボトルをコンツアーボトル(胴部がくびれているボトル)に変更しました。それ以外の要素は何も変更していないにも関わらず、ボトルデザイン変更後に売上が7%も伸びています。典型的なパッケージリニューアルの成功例です。

パッケージのイノベーション-紙パックの導入

パッケージリニューアルの事例ではありませんが、それまで標準的に使われていたパッケージから新しいパッケージ形態に転換することで、消費者行動や購買行動に変化を与えた例を取り上げます。具体的には今では当たり前の牛乳やお酒の紙パックです。

牛乳パックの先駆けは1938年(昭和13)アメリカのエクセロ社のピュアパック。1952年(昭和27)スウェーデンのテトラパック社の学校給食でお馴染みの三角形(四面体)のテトラクラシック容器の開発に遡ります。これをきっかけに1964年の東京オリンピックや大阪万博で紙容器が日本全国に導入されました。

紙パックの導入は、ちょうど1960年代のスーパーマーケット業態の誕生、進化と同期したこともあって、急速に普及しました。日本乳牛協会によれば、1877年頃1合のブリキ缶を使って、牛乳配達が始まり、1889年には牛乳ガラス専用瓶が登場し、1951年厚生省が「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」を公布。無色透明のガラスびんの使用を義務化し、いわゆる牛乳配達制度が普及しました。1970年代半ばには契約軒数が350万軒に達しています。しかし、スーパーのような大規模小売店が普及してくると、牛乳は手軽に店で買える商品となりました。同時に、瓶に比べて、軽く、扱いやすい紙パックが普及したことで、消費者の購買行動を変化させ、紙パックは一挙に普及しました。1970年代9割が瓶であったのに対し、2019年には紙が85%に達しています。

日本酒は、以前は樽で酒販店に配達され、そこから徳利などで計り売りされていました。当時は水を混入して販売することなどもあり、それを防ぐために一升瓶が導入されました。一升瓶の導入はお酒のブランド化、税金の収入源の明確化など近代化に貢献しています。しかし、一升瓶は重く、持ち運びや取り扱いに不便で、冷蔵庫にも入りません。遮光性が高く、廃棄しやすく、取り扱いしやすい紙容器は2005年に50%に達しています。

今日紙容器はお風呂などの水回りで使われる、シャンプー、粉末で、湿気に弱い入浴剤などにも活用されています。

爽(ロッテ)

1999年に新感覚アイスとして市場導入されたロッテの爽は、それまで丸型のカップが一般的だったアイスクリームカップに四角のカップを導入しました。四角のカップはアイスクリームを販売している冷凍ショーケースを上からみた場合に、表面積も大きく見やすく、見つけやすいという利点がありました。また、最近の持続可能性や、LCAなどでも輸送効率の良さが見直されていますが、四角のパッケージは輸送効率面でも優れています。またカップも1枚の紙から効率的に組み立てられています。

もちろん中身のアイスクリームが評価されての結果でしょうが、20年以上のロングセラー商品として、ランクインしているという意味ではパッケージの効果も見逃せません。

粒ガムボトルパッケージ

残念ながら最近はグミに押されて下降気味のガム人気ですが、その絶頂期2002年に、それまで個人向けの商品であった粒ガムに大型のボトルガムパッケージが導入されました。当時のコマーシャルなどを思い起こすと、ファミリー需要やオフィス需要を狙った商品として位置付けられたものと記憶しています。

当時のデータを振り返ってみると、ファミリーボトルの売り上げが伸びるだけでなくガム全体の売り上げを押し上げています。まさにパッケージが新しい市場を創造した結果といえるでしょう。

粒ガム売り上げ

粒ガム売り上げ推移

パッケージデザインリニューアル

パッケージデザインリニューアルは、動きの激しい現代の事業環境では多くのブランドが必要としています。あのアンディーウォーホールで有名なキャンベルスープのラベル2023年、半世紀ぶりにリニューアルしました。赤と白のアイデンティティを大切に残し、現代的なロゴの適用、そして高級感を演出するワードマークの設置、100近い商品を識別しやすいデザインを導入することで、消費者の利便性を向上させました。今年の売り上げは前年比9.29%増加しており、好調の中でのリブランドとなりました。

パッケージのリニューアルと売り上げの関係については筆者の記事「世界のパッケージデザインリニューアル」(https://pake-tra.com/package/14746/)をご覧ください。

リデザインが売上にどう貢献したか確認できます。リニューアルについては単純にデザインのリデザインなのか、商品そのもののリニューアルも同時に行われるのかによって、意味合いも異なってきます。当然ながら商品そのもののリニューアルを伴う場合はインパクトも強くなります。

また、最近のインターネット記事の中にもいくつか注目される事例があるので整理してみます。

昭和産業「オレインリッチ」

ピュアひまわり油100%がセールスポイントの『オレインリッチ』は、文字情報で健康や品質などの訴求を行っていましたが、アイトラッキング調査から、ひまわりを大きく描いたパッケージデザインにリデザインしました。リデザイン前と比較して売り上げは約3倍伸びています。

やかんの麦茶 (日本コカ・コーラ)

21年4月に発売し、22年4月にリニューアル。22年8月に累計出荷数量が5億本を突破。日本コカ・コーラの最近10年間で最も早い記録となりました。レトロ感を訴求したパッケージで、2若年層の取り込みに成功。パッケージを見ると、日本の伝統的なあさぎ色(薄い藍色)を背景に、アイコンとしてやかんが描き、のれんをイメージしたラベルプリントが施されています。

鼻セレブ(王子製紙)

王子製紙の「鼻セレブ」は1996年の発売当初は「ネピア モイスチャーティシュ」というネーミングでした、まだ保湿ティッシュが知られていなかったので、売れ行きもかんばしくありませんでした。2004年に高級なティッシュ「鼻セレブ」というネーミングに変えたところ、一躍大人気商品に成長しました。同時にパッケージデザインも愛らしい動物を採用しています。

ザ・チョコレート

明治の『ザ・チョコレート』が大幅にリニューアルしました。ザ・チョコレートは、2014年に初登場し、2016年と2020年、今回2023年の合計3回リニューアルされています。

通常のチョコレートよりも2倍の価格を設定した「明治 ザ・チョコレート」は、パッケージを通常の横視点から縦視点に見た目を変えたことで、1年間で3000万個を売る、大ヒットとなりました。

新鮮を演出するパッケージ

キッコーマン「いつでも新鮮シリーズ」はボトルを2重構造にすることで、開栓後もしょうゆが空気に触れることがなく、内容物の酸化による劣化を防ぎ、醤油を90日間新鮮に保持します。同社の新鮮シリーズは2016年に売り上げ100億を突破しました。また、長期保存が可能なことから全世界で課題になっている食品ロスへの対応という面でも機能性パッケージの貢献が期待できます。

新鮮シリーズのパッケージを粘体のマヨネーズに拡張したのが味の素のピュアセレクトシリーズです。とれたて3日以内の国産新鮮卵のみを使用し、世界で初めて酸度20%の醸造酢の安定生産を実現した内堀醸造㈱の専用酢を使用。菜種・大豆・コーンのみを素材とするピュアオイルだけを使用したマヨネーズはJPCパッケージコンペティションの最上位賞経済産業大臣賞を受賞した新鮮キープボトルによって提供されています。

ピュアセレクトマヨネーズ容器

ピュアセレクトマヨネーズプレスリリース:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000059753.html

食品ロスに貢献するパッケージについては農林水産省の「食品ロスの削減に資する容器包装の高機能化事例<第2版>(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/attach/pdf/index-65.pdf)をご覧下さい。

 

欧州では最近賞味期限の表示を撤廃する動きもみられます。賞味期限の日付に左右されず、消費者が自分の目で判断して、食品ロスを削減しようという動きです。センサー機能を持ったラベルやインテリジェントパッケージを使用して、よりダイナミックに賞味期限を表示するようなパッケージの利用も進んでいます。

全国の土産物のランキングでも常にトップを誇っている北海道の石屋製菓の「白い恋人」はバリアフイルムを使った個装パッケージを活用して、賞味期限を180日に設定しています。長期保存を実現することで、食品ロスの削減、在庫リスクの軽減、売り上げ、利益の向上などの経営効率化を実現しています。

また、レトルト技術やレンジクッキングへの対応など機能性パッケージは生活の質の向上を実現しています。

コンビニ、スーパーなどで活躍するMAP包装

コンビニやスーパーなどの惣菜で最近伸びているのが、「ガス置換包装(MAP)」という包装技術です。これは酸素・窒素・二酸化炭素をコントロールし、食品の保存にもっとも適した環境を作り出す技術です。この技術によって食品の賞味期限を延長し回転率の低い店舗でも新鮮な食品を提供することができます。このように、高機能なパッケージの技術によって、付加価値を強化して販売面での貢献に繋げることが重要です。

パッケージリニューアルによる売り上げの変動

パッケージは商品そのものではありませんが、デザイン、ブランディング、高機能、高付加価値化、デジタル技術などの進歩によって、商品の一部として機能するようになってきています。また、eコマースの拡大や、リテールメディアの拡大などの流通、販促形態の変化に伴ってパッケージの役割も変化しつつあります。いつか、「このパッケージで売り上げが拡大したんだ」と言える時代が来るかもしれません。

 

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