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世界のパッケージデザインリニューアル

2022年の最大のブランドリニューアルはコカコーラの「Sprite」です。グローバルブランド ディレクターは、『スプライトの新しいブランド アイデンティティはシャープで明確です。雑音を切り抜け、アイコニックなブランドとしての自信を伝えます。』と述べています。ブランド力に自信を持つSpriteならではのリニューアルに対するゆるぎない自信です。Spriteは同時に瓶の色を緑から透明に変え、サステナビリティへの対応も進めました。


Sprite new design

PRTIMESで2022年のプレスリリースから「パッケージリニューアル」を検索すると、「キリンの『キリン氷結(R)無糖』シリーズが年間販売目標を達成」、「チョコレート市場売上No1の人気チョコバー『ブラックサンダー』パッケージリニューアル発売」、「コカコーラ『やかんの麦茶』を、パッケージデザインをリニューアル」などの多数のリニューアル記事を検索することができます。

今や、ブランドにとってパッケージデザインのリニューアルは時代や市場、競争環境に適応するための欠かせない活動となっています。売り上げが芳しくないブランドなら失うものはありませんが、それなりに市場に定着している商品であれば、デザインリニューアルはある意味リスクを伴います。巧みに少しずつリニューアルしていく戦略を取るブランドも少なくありません。

今回3回目の開催となる米国The Designalytics Effectiveness Awardsはパッケージデザインリニューアルと売り上げの関係を明確にして効果的なリニューアルブランドを表彰しています。今回はPackaging Digestの記事から興味深い記事を引用紹介します。Designalyticsコンテストは100% データ連動型であり、販売実績が重要な指標になっています。

最優秀賞「GoodPop」シズル感の拡大とブランドロゴの強調

健康的なフローズントリーツ(冷菓)メーカーの GoodPopは、2022年の  Designalytics Effectiveness Awards コンテストで大賞を受賞しました。ブランドは2021 年初頭に発売されています。

植物由来のGoodPopのリニューアルポイントは、より大胆で一貫性のあるオンパック ブランディングです。パッケージの前面にある商品写真はシズル感を増し、ブランドアピールを強化しています。ブランドの認知度と食欲をそそる感性的な魅力を高めることで、新デザインは前年比で売上を 40% 増加させています。

Designalytics の消費者評価では、冷凍食品の購入者の 75% が、以前のものよりもリニューアルパッケージを好んでいます。リニューアル以前のデザインに比べて訴求点がスッキリと明確になっているのが分かります。

GoodPop*左がリニューアル前、右がリニューアル後

モダンでキャッチーなロゴと写真

Danonのオイコスギリシャヨーグルトの新しいパッケージデザインは、モダンでアイキャッチな強い書体とリアルな果実写真が使われました。
Designalyticsの調査では、消費者の81% が、このデザインは以前のデザインよりも「おいしそう」と認識しています。

売上高も同様に魅力的でした。再設計開始前の 9ヶ月の売上高は、前年同期と比べて 18% 減少していました。しかし、リニューアル後 4 ヶ月までに、売り上げは 7% 増加しました。

Oikos*左がリニューアル前、右がリニューアル後

Unileverは新旧のデザインのバランスをとりました

Dove Men+Care パーソナルケア製品のパッケージを刷新する Unilever のアプローチは、確立されたブランド資産を活かし、より斬新で効果的なデザインのバランスを取る慎重なアプローチを採用しました。

旧来のデザインを基本的に踏襲するとともに、より立体的な色彩表現とキャッチーな表現を追加する進化的なパッケージリニューアルでした。具体的には、ボディウォッシュ製品の新しいデザインには、「水分補給」や「リフレッシュ」などの形容詞と「皮膚科医が推奨するナンバーワン」のコピーが加わりました。

Unileverが、再設計の開始後26週間の売上を追跡したところ、売上が前年同期と比べて17%増加しています。

Dove Men+Care*左がリニューアル前、右がリニューアル後

Hershey はラッパーのデザインを微調整

Hersheyのパッケージデザインは1951年以来基本的に変更されていません。ハーシーズチョコレートバーラッパーのデザインリニューアルに関しては、市場に定着している伝統のデザインを基本に、若干の修正を加えました。

おなじみのHershey’sのロゴを少し小さくし、リアルな製品写真を追加し、美味しさをアピールしました。リニューアルでは、Hershey’sチョコレートバーのフレーバーを区別しやすいよう色分けも採用しました。

クラシックなデザインを効果的に活用したこのアプローチは、発売後 9 ヶ月間の売上が前年比で 9.1%増加しています。

Hershey*左がリニューアル前、右がリニューアル後

Country Archerは特徴的なロゴで認識率を高めました

Country Archer Provisions は、市場で成功を収めましたが、市場調査を通じて、そのブランド想起率と全体的な認知度が低いことが分かりました。

改善のために、新しいロゴデザインを含むパッケージのリニューアルを行いました。味わい深いクローズアップ写真。フレーバーのナビゲートに役立つカラーブロックを採用しています。

新しいデザインの発売から26週間で、売り上げは28%増加し、前年の成長率のほぼ2倍を達成しました。

Country Archer*左がリニューアル前、右がリニューアル後

Icelandicは伝統を活かします

濃厚でクリーミーなIcelandicのプレミアムヨーグルトに新しい消費者を引き付けることを目指して、Icelandic Provisions は核心的なパッケージリニューアルを行いました。

バイキングのロングボートの新しいロゴと鮮やかな色が、新しいパッケージデザインに反映されました 。2021年夏のリニューアル後、売上が6.4% 増加。さらに、発売後 6ヶ月の売上高は、前年同期と比べて16%増加しました。

Icelandic*左がリニューアル前、右がリニューアル後

La Mexicanaのリニューアルはシンプルに

Lakeview Farms は、La Mexicanaサルサブランドを全国的展開するために、パッケージのリニューアルを実施しました。

新しいデザインは、ブランドの雄鶏のイメージを大きくし、パッケージの前面と蓋に配置しました。デザイナーはブランドのフォントを変更および拡大し、さらに、古いパッケージの前面に表示されていたさまざまなコピーを削除し、スッキリさせました。

リニューアルが成功し、販売の減少傾向を逆転させています。売上はリニューアル前の-8%から、リニューアル後は+15%に変化しました。

La Mexicana*左がリニューアル前、右がリニューアル後

Nada moo! ブルーの色彩でアピール

植物ベースのアイスクリームブランド間の競争の激化により、パッケージをリニューアルしました。新しいパッケージでは、ロゴを大きく展開しています。また、ブランドの認知度と一貫性を保つために、すべてのパッケージにロイヤルブルーを使用しました。以前は、パッケージはフレーバー毎に異なった色を展開していました。

新しい蓋のデザインも人目を引くもので、青と白のストライプが特徴的です。ブランドは2020年の夏に、15周年に合わせてリデザインを開始しました。

発売後 6ヶ月で、ブランドの売り上げは前年同期比で 27% 増加しました。年間で約350万ドルの増加です。世界的なパンデミック下を考えると、驚くべきことです。

Nada moo*左がリニューアル前、右がリニューアル後

持続可能なパッケージングが Gosling の売り上げを押し上げました

バミューダのGoslingラムブランドの経営陣は、Goslingのジンジャービールのパッケージリニューアルに際して、持続可能性と競争上の優位性を考えました。

ブランドはプラスチック製の6パックリングを板紙のキャリアに置き換えました。缶のグラフィックは視覚的な変更を加え、メタリックゴールドをよりポップにし、赤と黒をより豊かに見せました。缶前面のあざらしの絵柄もリファインしています。

パックをより環境に優しくしたことで、リニューアルにより販売が促進されました。再設計の開始から26週間で、Goslingのジンジャー ビールの売上は前年比で6%増加しました。

Gosling*左がリニューアル前、右がリニューアル後

デザインのリニューアルにはリスクが伴います。意図せずデザインクオリティーが低下したり、消費者の好みの変化を捉えきれずニーズのないイメージに変わったりするリスクがありますが、最も回避すべきは「既存顧客が離反してしまう」ことです。今回awardにノミネートされたブランドは、いずれも市場でのポジションを獲得していたブランドが多く、既存ブランドのイメージを壊さないレベルで、修正したものが多かったのが特徴です。

結果的に成功したリニューアルについて、その要因は分析できますが、市場に導入する前にシミュレーションできれば、成功確率も高くなります。最近のAI技術はかなり精度高くマーケッターの期待にこたえることができるようになっています。

AIによるシミュレーション

Designalyticsはシンジケートデザインリサーチと呼ばれる手法で、新しいデザインがどのような可能性を持っているかを瞬時に分析します。具体的にはクリエイティブプロセスの初期段階にデザインコンセプトを評価し、予測性の高い定量的データと定性的な消費者フィードバックを迅速に受け取ることができます。

Designalyticsは市場におけるリーダーブランド10点に加えて、注目される2ブランドのそれぞれのデザイン属性がデータベース化されており、パッケージリニューアルにおける、既存商品の長所、短所を明確にし、デザインリニューアルに際して最も効果的な選択肢を選ぶことができます。

Vizit

Vizit の人工知能技術は、デジタル商品棚(ECサイトでの販売画面)で商品画像がどの程度販売パワーを持ち、ターゲット層にアピールできるかをシミュレーションすることができます。最も有望な設計コンセプトを包括的に評価し、市場での結果と一致することが証明された予測指標を使用して、影響力の大きい改善の機会を明らかにします。

パッケージ デザインの世界は、オンラインショッピングの高まりとともに進化しています。競争の激しいアルコールセグメントを含む、事実上すべての消費者向けパッケージ商品カテゴリーのパッケージングが、この移行の影響を受けています。

Vizit は、何百万ものオンラインインタラクションのパターンを使用して、人間の視聴者の視覚的好みをシミュレートし、画像の効果をランク付けして画像のパフォーマンスを予測します。このような分析により、ブランドはパッケージリニューアルで、オンライン消費者を効果的に引き付け、購入に導くことができます。

2022年5月のTargetのショップ調査で、Vizit は小売業者のWebサイトで最も検索されたスピリッツ、ビール、ワイン製品のオンライン画像を分析しました。Vizit は合計で 300個の製品 (各カテゴリーから 100 個) の画像を分析。このミックスには、52 のスピリッツブランド、37のビールブランド、45のワインブランドが含まれていました。

分析の結果、ドンフリオ (テキーラ)、ステラアルトワ (ベルギー エール)、オイスターベイ (白ワイン)の画像が、消費者の注意を引き、Targetのデジタルシェルフでの購入を誘導するのに最も効果的であることがわかりました。

日本でもAIが自動でデザインの生成と評価を繰り返し、最適な商品パッケージデザインを提案するサービス「パッケージデザインAI」の提供をプラグ社が発表しています。同社はこれまでデザイン評価に特化していましたが、新たにデザインの自動生成も可能になりました。パッケージデザインAIは、画像素材をアップロードするだけでAIがデザインを生成するサービス。

920万人分の消費者調査のデータを元に、消費者が好むデザイン案をAIが選出し、そのデザイン案を元にさらにデザインを生成。デザイン生成と評価を繰り返すことで、優れたデザインを作り出せるという。デザインを評価するAIについては、画像情報処理を専門分野とする東京大学の山崎俊彦教授との共同研究で精度を高めています。最終的には1000案の中からトップ100を表示。「おいしそう」「かわいい」「シンプル」「高級感・上質感」など19のイメージワードでランキング表示でき、商品のコンセプトに合致したデザインを選択できます。

 

 

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