昨今、環境汚染や地球温暖化などをより身近に感じるようになり様々な環境問題への危惧が高まって来ています。アメリカでは、自然環境をこれ以上悪化させない、良くするための活動が市民やNPO、そして企業などでも取り組まれるようになっています。アメリカの企業では、目標やポリシーを表明し環境問題への取り組みの姿勢を見せている企業が多くありますが、実際に自然保護となる活動を実践し世の中を変えていこうという熱意が伝わってくる企業はそこまで多くはないのが現状です。そんな中、自然保護自体をビジネスの核とし、消費者を巻き込みながら環境問題に取り組んでいる企業があります。
消費者と共に環境保護活動を行う企業
アメリカ、カリフォルニア州生まれのアウトドアブランド、Patagoniaは、高機能なアウトドアウェアで知られ、世界的にも人気があります。Patagoniaは、1973年にロッククライマーのYvon Chouinardにより創業された、自然を愛し、環境への配慮を掲げるアウトドアブランドです。Patagoniaは、1985年以来、売上の1%を、環境問題に取り組む組織に寄付をし、また、地域コミュニティに積極的に関わり、利益を追求する私企業でありながら、社会に良い影響を与えることを同時に追求するベネフィット・コーポレーションという形態をとっている個性的なブランドです。直営店のお店へ行くとそんな企業の姿勢がとてもよく伝わってきます。
地域のコミュニティ活動に力を入れているPatagoniaは、ニューヨークでは、セントラルパークにも近い、アッパーウエストサイドにある店舗で、Run Clubというイベントを定期的に開催し人々を集めています。全米の色々な地域にある、Patagoniaは、その地域の人々の興味や趣向にあった、ヨガや自転車、山や川でのアクティビティなどのコミュニティイベントを企画しています。そんなコミュニティ活動の中には、企業理念である、地球と環境を守るための活動としてごみ拾いなどのクリーンアップイベントを企画することもあります。
Patagoniaでは、衣類を長く大切に着れることをモットーにモノづくりをしているブランドです。そんな企業ならではの活動で、壊れてしまった衣類を無料で修理してくれるイベントも開催しています。物を大切にすることを伝えることが目的のイベントです。そのためPatagoniaの自社製品だけでなく、他社の製品でも無料で修理をしてくれます。Patagoniaは、このように地域コミュニティを巻き込みながら、長期間に渡り一貫して環境問題に関するメッセージを消費者に送り続けています。そうすることで環境問題に積極的に取り組む企業としてのブランドイメージが確立されていくと同時にファンも増え、企業としての成功にもつながっています。
サステナブルな商品を推進するECサイト
アメリカでは、近年、環境問題への取り組みを企業理念の中心とし、食品や消費財など特定の分野においてサステナブルな商品の開発に特化する新しいスモールビジネスが増えて来ています。環境問題を中心に据えたスモールビジネスの中でも特に目を引くようなブランドは、環境問題を意識している大企業から投資を受けたり、傘下に入ったりするケースもよく見られます。
最近では、そんな環境保護に取り組む企業のサステナブルな商品のみを扱うECサイトが登場しています。通常、無数の商品が並ぶスーパーやECサイトで、消費者が環境に配慮された信頼できる商品を探し出すのは容易ではありません。しかし専門サイトの登場により環境保護を念頭に置いた商品を見つけやすくなり、環境保護に積極的に取り組む企業のPRにもなっています。
そんなサステナビリティを中心に据えたECサイトの一つが、2020年に創業したHiveで、環境に優しいリサイクルパッケージの商品から、サステナブルな食品まで、色々な商品が取り扱われています。
例えば、廃棄野菜も利用する、食材のアップサイクルで作られたチップス、Veggie Pulp Chipsや、小規模の家族経営の農家の生産者からのみ仕入れをし、廃棄率がゼロに近いトウモロコシの99.9%を使用して素材を無駄にせず生産されている、PipCornという商品などがあります。
どちらの商品のパッケージも、リサイクルができるものが使用されています。
Hiveのオンラインショップは、そんな環境保護の取り組みをしているブランドの商品を消費者たちにわかりやすく伝える役割を担っています。Hiveの独自な視点で全ての商品を評価し、消費者に平易な言葉で紹介しています。そんなHiveのオンラインサイトは非常にわかりやすく、消費者としては勉強にもなります。それぞれの商品説明のページに必ずその商品のパッケージのリサイクル方法が明記されています。リサイクルが可能なパッケージの商品が増えていますが、具体的なリサイクル方法がわかりにくい商品も存在します。そんな消費者たちの戸惑いを解決してくれる、一歩踏み込んだわかりやすいサイトになっています。
一般的なリサイクル方法ではない場合は、そのパッケージをまとめて特定の場所に送ることもでき、その際の郵送パッケージなども有料ですがHiveのサイトで購入できるようになっています。全ての商品について、環境保護的観点から、そのブランドについて、そしてその商品について、パッケージのリサイクル方法についても詳しく紹介されていて、消費者が学ぶことができるサイトとなっています。
Sharという携帯できるパッケージに入ったナッツミックスの商品があります。この商品のパッケージは、1回きりではなく、中身がなくなった後も、何度でも再利用できることを視野に作られています。環境保護を意識し、プラスチックを使用しない、プラスチックフリーのパッケージで、リサイクルもでき、堆肥化可能なパッケージとなっています。
Sharのパッケージについているメッセージです。売り上げの20%は、環境保護団体に寄付されることが明示されています。消費者は、自分が購入する商品の売り上げが一企業の利益となるだけではなく、世の中によいインパクトを与えるような使い方をしてくれる企業を選んで商品を購入する姿勢になってきています。
脱プラスチックを推進するECサイト
環境に優しいブランドの商品を扱うECサイトは他にもあります。
Grove.co は、プラスチックフリーを理念に、脱プラスチックや、リサイクルできるパッケージなど環境に優しい商品を販売しています。Grove.coでは、自社ブランドの商品に加え、同じくサステナブルを念頭においた様々なブランドの商品も扱っています。例えば、便利で使い捨てにしてしまうラップの代替品として、布に蜜蝋を染み込ませて作られるプラスチックフリーの、Bee's Wrapの蜜蝋ラップや、プラスチックフリーの紙パック、アルミ缶などが使用された詰め替え用商品などが販売されています。
Grove.coは、消費者を巻き込む取り組みが面白く、買い物体験を楽しくしてくれる販売サイトになっています。環境に優しい商品を購入しはじめたばかりの利用者を、さらにのめり込ませる工夫をしています。商品を注文すると、おまけでエコフレンドリーなおすすめ商品が同梱されて届きます。例えば、ガラス製のリユーズできる掃除用のスプレーボトルや濃縮洗浄剤、環境に優しいクルミのスポンジなど、よりエコな生活ができるアイテムを一緒に届けてくれます。
液体のソープや洗剤など消費財のパッケージは、現在色々な素材のものがあります。紙のパッケージや、アルミ缶のパッケージ、そして、プラスチック使用率が低いエコなプラスチックのパッケージなどです。脱プラスチックを目指して、各企業がそれぞれ工夫を凝らしてより環境に優しいパッケージの開発に取り組んでいます。
エコフレンドリーな商品展開で有名なSeventh Generationは、2016年以来、イギリスを本拠とする世界的な一般消費財ブランド、Unilever傘下のブランドになっています。通常の洗剤と比べ少量で洗浄力が高く、水の使用量も減らし、プラスチックの使用量も低いエコなパッケージを利用しています。
これらオンラインショップの配送用のボックスもメッセージに溢れています。
ボックスに使用されているインクも含めて、リサイクルが可能なボックスです。
パッケージのリサイクルについて参照するサイトのページのアドレスも書かれています。
環境保護に取り組むブランドの商品を集めたサステナブルなECサイトを積極的に利用する消費者たちは、褒められるべき、環境保護への意識の高い人たちです。そんな地球への気配りを周りの人たちにも伝えていきたい、という面白いメッセージのついた配送ボックスになっています。
多くの企業では、利益を追求する現行の企業活動と環境問題への取り組みを両立させるのはなかなか難しく、「環境問題に積極的に取り組んでいます」、「こんな目標を掲げています」など、表面的なPRメッセージは色々発せられていますが、具体的な取り組みや実績が見えない企業も少なくないです。そんな中ですが、最近では、環境問題への取り組みを企業理念の中心に据え、利益の追求と環境問題への取り組みを同時に叶える環境問題に真意に取り組む企業も増えて来ています。
Patagoniaなど長い歴史のあるアウトドアブランドからサステナブルな商品のみを扱う新しいECサイトまで、どちらも、消費者に環境保護の大切さを訴えかけながら環境に優しい商品を販売し、環境保護活動に影響を与える存在になっています。環境保護への意識が高い消費者が増えるとこれらの企業の売上が上がり、さらに環境保護に貢献することができるようになるという利益と環境保護活動の両立が可能な良い循環を築いています。
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