ビジネスパーソンが読むメディア。マーケティング、セールスプロモーション、パッケージの企画・開発に役立つアイデアと最新の情報を、世界中から配信。

「掛け算」商品の魅力

芸能人や有名シェフがプロデュースしたインスタント食品や、ドラマやアニメとのメディアミックスのチルドデザートなど、相乗効果を狙った商品って多いですよね。私も日本に住んでいた時は、そういうものが大好きで、ワクワクしながら購入したものです。

アメリカにも何かとかけ合わさり、思いがけない形となって親しまれているものがあります。今回は、そんなユニークな掛け合わせ商品に焦点を当ててご紹介します。

ファーストフードの味をスーパーで:Wendy’s CHILI(ウェンディーズチリ)

かわいい赤毛の女の子のマークでお馴染みのファーストフードチェーン「ウェンディーズ」は、日本にも店舗があるので、訪れたことがある方も多いでしょう。私も高校生の頃、よく通っていて、その中でも「ウェンディーズチリ」は他にはない特別なメニューなので毎回頼んでいました。

ひき肉と豆をスパイシーなトマトベースのチリソースで煮込んだ「チリ」は、正式には「チリコンカン」という料理名です。アメリカでは手作りの家庭料理としても親しまれている庶民の味ですが、「ウェンディーズチリ」は、スーパーで入手できる缶詰に掛け合わされた商品があります(画像1)。

日本でも人気の合わせ調味料の味が、お袋の味になっているなんて話をよく聞きますが、アメリカでも古くから親しまれているファーストフードチェーンの味が、そのまま伝統の家庭の味として定着しつつあるかもしれませんね。

ウェンディーズのチリコンカン缶

画像1

テネシー名物同士のコラボ:ジャックダニエルのプルドポーク

ウェンディーズのチリはその店のメニューをそのまま商品化したものですが、こちらの商品はテネシーの名物同士の組み合わせです(画像2)。ジャックダニエルはテネシーウィスキーの代名詞であり、プルドポークは豚肉を細かくほぐして甘辛い濃厚なソースで絡めた、アメリカの三大BBQ料理の一つとして知られるテネシーの名物料理です。この二つの組み合わせなら間違いないでしょう。

ジャックダニエルのウイスキーを使ったソースで絡めたプルドポークは、本格的な味が簡単に楽しめる一品です。レトルトパックに蒸気抜き用の穴を開けて、黒いトレーに置いて電子レンジで加熱するだけで出来上がります。

正直なところ、ソースの味が濃いためウィスキーの風味は実感できませんでしたが、それでも美味しいプルドポークが楽しめます。スーパーには数多くのプルドポーク商品がある中で、このテネシー同士のコラボレーションは独自の魅力を放っています。

ジャックダニエルのプルダックポークパッケージは黒で統一

画像2

スイーツ界の大コラボ:オレオやスニッカーズのアイス化

アメリカで大人気のブランド、オレオやスニッカーズはオレオ味やスニッカーズ味といったような、イチゴ味やミント味などと並ぶ一般的な味の名称としてすでに定着しています。

アメリカでは、アイスクリームの商品には多くのコラボレーションが見られ、定番の味であるオレオやスニッカーズも当然アイスクリーム化されています。画像3に見られるアイスクリームは、既存のアイスクリームブランドとのコラボ商品というより、お菓子のオレオそのもの、スニッカーズそのものをアイスにしたパッケージデザインです。ですから、ブランド同士のコラボというよりも、人気のお菓子がアイスというカテゴリーと掛け合わされた感じがしますね。

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、中央の黄色の「Nestle Toll House」はチョコクッキーで有名なブランドであり、一番右の「Twix」もチョコレートバーの定番です。

アイスクリームのパッケージ

画像3

名司会者がプロデュースするアイスはスウィート:『Ben&Jerry’s(ベンアンドジェリーズ)』

アメリカ人はアイスクリームが大好きなのでしょう。シーズンごとに新商品もたくさん登場します。そのような中で目立つにはコラボレーションが効果的、ということで深夜テレビ番組の有名司会がプロデュースしたアイスなんかもあります(画像4)。日本で言えば有吉弘行さんがプロデュースしたアイスクリームのようなイメージでしょうか。

名物司会者が印刷されたアイスクリームパッケージ

画像4

この二人は慈善事業としてもこのプロデュースを行なっていて、自身の持つ基金や、子供ための慈善団体を通じて売り上げを役立てています。アイスクリームはスウィート、つまり「甘い」ものですが、「スウィート」とは同時に「やさしい」という意味もあります。『Ben and Jerry’s』は、このコラボ商品は「スウィート」という言葉が持つ二つの意味を掛けているとも言っています。なかなか粋ですね。

先入観を突き抜ける甘さと辛さ:タバスコジャム

タバスコといえば、辛い調味料としてファンも多く、私もパスタを食べるときは必ず振りかけます。独特な酸味も魅力的ですよね。

さて、そんなタバスコのジャムがあると言ったら信じられますか? 私は初めてこの商品を見た時、ジャム売り場にジャー瓶入りのタバスコが間違って置かれているのかと思いました。でもこちら、タバスコブランドがジャムカテゴリーと掛け合わされた商品です。

ただし、パンや製菓用途よりも料理に添えることが多いみたいですね。確かに、ターキーにブルーベリージャムを添えるような、料理にジャムを使うレシピはこちらにはよく見かけます。ジャムは甘いもの、という味の先入観を覆すクロスカテゴリー商品と言えるでしょう。

タバスコジャムのビン

画像5

メジャーブランドを抱えているからこそできるブランド・オン・ブランド

『Lay’s(レイズ)』はフリトレー社のポテトチップスの主要ブランドで、シンプルな塩味やサワークリームオニオンなど、さまざまな味がラインナップされています。フリトレー社は他にも『チートス』や『ドリトス』など、多くの人気ブランドを抱えています。

そのため、画像6のように『チートス味』の『レイズのチップス』を作ることも可能なのです。『チートス』は短いスティック状のスナックですが、その独特のパウダーが人気の秘訣でもあり、その味をポテトチップスで楽しめるのは大きな魅力です。

緑のパッケージの方は、オリジナルは『Funyun’s(ファンユンズ)』というオニオン風味のリング状スナックの、ポテトチップス版です。スーパーでこの商品を買った際に、レジ係の人が「『ファンユンズ』の味の『レイズ』なんて出たの!?私も買わなくちゃ!」と言い、それを聞いた他のお客さんも「そういうのを待っていた。」と会話に参加してくるほど、ブランド名と味の記憶がしっかりと結びついているのです。

このように、強いブランドを複数持っている企業は、自社内のブランドを自由に掛け合わせてお互いのブランド力を享受でき、さらにブランド力を高めることができるのでしょう。

レイズのカラフルなパッケージ

画像6

さらにフリトレー社には『SIMPLY(シンプリー)』というブランドがあります。

『シンプリー』は、人工香料や着色料を使わない方針で作られた自然派スナック菓子を取り揃えているブランドです。ただし、『シンプリー』に独自の商品はなく、『シンプリー』の開発方針で作られた『チートス』や『ドリトス』が存在するだけなのです(画像7)。

先ほどご紹介した『レイズ』がポテトチップスという商品形態を表していたのとは異なり、『シンプリー』のブランドは開発や製造の方針を示している点が興味深いです。

シンプリーはナチュラルテイストなデザイン

画像7

また、フリトレー社が『チートス』ブランドから自然派商品を発売せず、わざわざ『シンプリー』ブランドから出したところも面白い点ですね。既存の『チートス』ファンは、派手な色や濃い味を好んでおり、自然で健康的なものを『チートス』に求めているわけではないとして、『チートス』のジャンクなブランドイメージを守るために、外部の『シンプリー』ブランドにこれらの健康志向の商品を託したのかもしれません。

これは、先ほどの『レイズ』の例のような、ブランド同士のいいとこ取りを狙ったわけではなく、健康志向のニーズを持つ新たな顧客を取り込むための戦略なのではないでしょうか。企業の思惑について、色々と想像が膨らみます。

最後に

コラボやクロスカテゴリーなどの掛け合わせ商品企画が大きな効果を持つのは、日米共通のようです。ただ、私の印象では、日本では組み合わせの妙味やストーリー性が重視されるため、キャッチコピーやマークなどに情報が詰め込まれている一方、アメリカではセレブリティの名前や写真、ブランドのロゴだけで商品の特徴や価値をシンプルに伝えるパッケージが多いように思います。皆さんは今回ご紹介した商品の中で、試してみたい掛け算の商品はありましたか?

 

▼編集部おすすめ記事

お菓子だけじゃない、アソートパック事情

 

このライターの記事

Top