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愛されキャラ?頼れるキャラ?アメリカの商品キャラクター

日本の商品のパッケージデザインに欠かせない要素の一つに「キャラクター」がありますよね。実は私も中身が必要というわけでもないのに、そのキャラが好きだからと、グッズ感覚で買っていたことがあります。

もちろんアメリカにも、キャラクターがパッケージの主役になっている商品はありますが、その役割は日本とは少し違うように感じます。今回は、アメリカのパッケージに登場するキャラクターと、その活躍ぶりをご紹介します。

マインドフルなスナックの道を説く:『レッサーエヴィル』

スナックブランド『レッサーエヴィル(Lesser Evil)』は、健康志向のスナックを展開しています。普通、ポップコーンのパッケージといえば、トウモロコシやポップコーンそのもののシズルカットがドンと載っているのが定番ですが、ここには瞑想する僧侶のイラストが!見た目だけでかなりインパクトがあります。

ブランド名の『Lesser Evil』は「より小さな悪」という意味。どうやら「世の中に不健康なスナックはたくさんあるけど、うちはその中でも罪悪感が少ない方だよ」というメッセージが込められているようです。
ちなみにこの僧侶っぽいキャラクターですが、ブランドの公式サイトでは特定の宗教を示すわけではなく『Guru(導師)』とだけ紹介されています。まさにこのキャラクターが、ユーザーにとってスナック菓子の「より良い選択」を導いてくれているのでしょう。

レッサーエヴィル

リアルタッチの頼れる味方:『ミスタークリーン』/『クエーカー』/『カズンウィリー(いとこのウィリー)』

日本のパッケージにはかわいいキャラクターデザインが王道ですよね。先ほどの『レッサーエヴィル』のキャラクターには「なんだか硬派な僧侶がいる…?」と驚かれたかもしれませんが、実はこれでもまだかわいいタッチなのです。

アメリカには、リアルな壮年男性が「ブランドの顔」として君臨するケースも結構多いのです。その中でも最も親しまれているのは、ハウスキーピング用品でおなじみの『ミスタークリーン』ではないでしょうか。彼はどのスーパーにもほぼ必ず出没していて、ハウスキーピングコーナーはもはやミスタークリーンの縄張りです。

スーパーに並ぶミスタークリーン
厚い胸板、不適な笑み、片耳のピアスがトレードマークのミスタークリーン。パッケージに登場するときはバストショットが多いのですが、時々腰までの身体も登場します。商品を力強く差し出す姿は頼もしく、品質への安心感が増しますよね。

ミスタークリーンのパッケージ
次は、日本でもご存じの方も多いのではないでしょうか。
オートミールブランド『クエーカー』のクエーカー教徒のキャラクターです。

クエーカーのパッケージ
実は、この『クエーカー』は実在する宗教のクエーカー教とは関係がないそうです。ブランドの設立者がクエーカー教の誠実さや純粋さに惹かれ、「うちのブランドが目指すものに近い!」と感じて、そのまま名付けたそうです。

また、クエーカー教徒の装いや雰囲気がブランドイメージを表すビジュアルにぴったりだと思い、キャラクターにも採用したそうです。少し古風なタッチですが、実は時代に合わせて微調整され、今のクエーカー教徒は若々しい感じになっているそうです。気づいている方、いましたか?

クエーカーのキャラクター
さて、ミスタークリーンもクエーカー教徒も実在の人物をモデルにしていないそうですが、こちらの『カズンウィリー(いとこのウィリー)』は、実在のウィリーさんをモデルにしているそうです。農場で働く人情味あふれるアメリカ男性の姿、とうもろこし農場直送の「安心ポップコーン」としてのアプローチにぴったりなキャラクターです。

『レッサーエヴィル』のGuruが健康への配慮を精神性で表現しているのに対し、こちらは産地の信頼感をしっかり押さえています。ところでこのウィリーさん、右側の『ムービーシアターバター味(映画館のバター味)』というフレーバーに限っては、星型のサングラスをかけて弾けています。こういう遊び心、いいですね。

カズンウィリーのパッケージ

ちょい足しちょい引きデザイン:『ケロッグフロステッドフレークス/ブラン』

いとこのウィリーさんのように、ちょっとアレンジを加えて「いつもと違う感」を出す手法は、キャラクターを使ったデザインの常套手段の一つのようです。

日本でもおなじみの『コーンフロスティ』のキャラクター、トラの『トニー』はアメリカでも大人気です。対象商品を2個買うと1冊の本がもらえるキャンペーン中には、全く同じアングルでメガネをかけ、本を読んでいるという、ちょっとしたアレンジが加えられていました。普段アクティブなトニーが、キリッとインテリ風に変身しています。

日本ではアクティブなキャラクターであれば、シチュエーションに合わせてバリエーションを派手に出しそうなところですが、「ちょい足し」におさめるあたりが洒落てます。

コーンフロスティのパッケージ
逆に「ちょい引き」になる例は同じケロッグの『レーズンブラン』に登場する太陽のキャラクター『サニー』です。このサニー、普段はレーズンがたっぷり入ったスコップを両手に持って、一箱にレーズンが2杯分入っていることをアピールしています。
ただ、同じシリーズでもレーズンが入っていない商品のときは、手ぶらでニコッと笑っているだけなんですね。レーズン入りだと誤解を与えてはならないという誠実さ、律儀さがやけにかわいいと思いませんか。

レーズンブランのパッケージ
ケロッグのシリアルのパッケージに登場するキャラクターは、「ちょい足し/ちょい引き」程度で、ポーズや衣装などにあまりバリエーションはありません。
おそらく、ケロッグにとってはトニーやサニーはブランドロゴに近い存在で、消費者への認知を高める狙いで、あえて同じデザインで統一しているのではないでしょうか。

アメリカのパッケージキャラかわいい代表:『ピルスベリー』

パッケージに登場する人気キャラクターと言えば、『ドゥボーイ』の名を挙げるアメリカ人は多いのではないでしょうか。その名前からもわかるように、生地(Dough)を象徴するキャラクターで、ピルズベリー社の焼き菓子やパン生地素材の商品に登場します。

ピルスベリーのパッケージ
アメリカではオーブン料理が盛んなためか、こうした商品が日本よりも多く、その分どこででも彼を目にします。ケロッグシリーズのキャラとは違って、さまざまなポーズのバリエーションが存在し、どれもとってもかわいいのです。

ピルスベリーのいろんなパッケージ
ただし、『ドゥボーイ』という愛称で親しまれていますが、実は本名は『ポッピンフレッシュ』。しかも、妻子もいるので、ボーイというよりおじさんに近いかもしれません。それでも、この愛らしさは日本の「かわいい」に通じるものがあり、日本でも人気が出る可能性を秘めていると思います。

グッズ目当てに行くスーパー:『ターゲット』

最後に、商品ではないのですがスーパー『ターゲット』のマスコットキャラクターを紹介させてください。ここには、犬の『ブルズアイ』がいます。

実は私、何度かターゲットに買い物へ行くうちにこのブルズアイにはまってしまい、他にもスーパーはいくつもあるのに、ついついターゲットに足を向けてしまうようになってしまったのです。ブルズアイの名の通り、目の周りのブチがターゲットの的(マト)にかけてあって巧妙なデザイン。店内のディスプレイでも大活躍で、見るたびに癒されます。

ターゲットのパッケージ
ターゲットではブルズアイを起用したPB商品もたくさんあり、見かけると手に入れてしまいます。画像は最近購入したグッズの一部です。ボードゲームやエコバッグ、クリスマスツリーのオーナメントと、カテゴリーも多岐にわたっています。この辺りの戦略は日本のキャラクター商品の展開に近いのではないでしょうか。

ブルズアイを起用したグッズ

最後に

日本の商品キャラクターはかわいいものが多く、親しみやすさでユーザーとの距離を縮めてくれる効果がありそうです。
一方、アメリカのリアルタッチなキャラクターは、品質や機能の高さを保証してくれる頼れる存在として企業の立ち位置にいる気がします。ケロッグのシリアルシリーズのキャラクターも、企業メッセージや商品の特徴を伝える役割を担っていますし、日本のキャラクターに近いかわいさを持ったドゥボーイもシェフ姿で、プロの立場から家庭での調理の成功を保証しているかのよう。

日本では商品キャラクターを身近に愛でてきた私としては、こうしたアメリカのキャラクターたちが少し「企業寄り」に感じられてちょっぴり寂しく、余計にターゲットのブルズアイに懐かしさを覚えて愛着が湧いてしまうのでした。

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