ニューヨークのメディアが絶賛する「Stick With Me(スティック・ウィズ・ミー)」の仕掛ける戦略ポイント
マンハッタンのダウンタウン、ソーホーの東側に位置するノリータ地区は、おしゃれなブティックやカフェが集まる人気の地区。その一角に「まるで宝石のようなチョコレート」と各メディアが絶賛する小さなクラフトチョコレートのブティック「Stick With Me(スティック・ウィズ・ミー)」はあります。
わたしも、その噂は聞いていたものの、今回初めて出かけてみました。ドアを開けると、5人も入ったらいっぱいになるような小さな店構え。ショーケースに並ぶチョコレートボンボンは、噂通り「宝石」や「アートピース」という表現がふさわしい、うっとりするような美しい佇まいで、わたしはショーケースを覗き込みながら、思わず「わあ、きれい!」と声に出してしまいました。
わたしを出迎えてくれたのは、この店のショコラティエでありオーナーのスザンナ・ユーンさん。ニューヨークでもトップクラスのミシュラン三ツ星レストラン「Per Se(パー・セ)」でハンドメイドの繊細なシェル(外側の殻)の技法を習得し、ヘッド・ショコラティエとして活躍した後、2014年に「スティック・ウィズ・ミー」をオープンしました。すべてのチョコレートは、奥の工房で彼女が手作りしています。
大理石やガラスのようなツヤ感は高技術を要し、チョコレートを温度を精密に調整した環境で少量生産するからこそできる輝きなのだそう。上質な原材料にもこだわり、例えば、フランスのヴァローナ社のチョコレート、タヒチのバニラビーンズ、カラマンシーはフィリピンから、柚子や抹茶は日本から、直接輸入しているボンボン(ひとつ3.40ドル)のフレーバーは26種類。
「ブラックセサミ・パッション・マンゴ」「ピスタチオ・マジパン」「カラマンシー(柑橘)・メレンゲパイ」「グアバ・パッション」「柚子」「マカデミア(ナッツ)・ライスパフ」「ピーナッツバター&ジェリー」「スモア(など、フィリング(ボンボンの中の詰めもの)の組み合わせはとても独創的。ボンボンを一口頬張ると、ワインを味わうときと同じような感覚で、口の中に広がるフレーバーをひとつひとつ吟味しながら味わえる楽しさがあります。
「スティック・ウィズ・ミー」はチョコレートだけでなく、BOOK型のボンボン用のギフトパッケージも注目されています。サイズは、6個入り(25ドル)、12個入り(49ドル)、24個入り(88ドル)、54個入(188ドル)の4サイズ。Lサイズは季節限定のデザインも登場します。
ギフトボックスの由来をスザンナさんご自身に伺いました。
Q このギフトボックスのアイデアはどこから?
A 「ウェス・アンダーソン監督の映画『グランドブタペストホテル』のホテルの外観のシーンからヒントを得ました。箱をデザインする際に、中に入れるチョコレートと同じくらい、ボックスも楽しいものにしたかった。ボックスを本に見立てて、ページをめくるように、ひとつひとつの(ボンボンの)ストーリー(フレーバー)を味わってほしいと思いました。」
Q クリエイティブなパッケージは、商品の販売促進に重要な役割を果たすと思いますか?
A 「クオリティーの高いチョコレートには、同等のパッケージが必要だと考えました。それは、チョコレートの入れ物としての価値だけでなく、チョコレートを受け取る相手への敬意も込めて、存在感のあるものにしたかったのです。」
幸運にもいろんな種類のチョコレートボンボンを試食させていただき、スザンナさんのインタビューを終えて、スティック・ウィズ・ミーは、チョコレート・ショップというより、嗅覚と味覚、そして視覚で楽しむことができるエディブルなアートが買える「アート・ギャラリー(このフレーズはスザンナさんのお話の中にも出てきました)」なのだと感じました。
ブック型のギフトボックスも主役を張るくらいインパクトがあり、小さな店構えからは想像できない 「一度訪れたら忘れられない(頭から離れない = Stick With Me)」 存在感のあるショップです。賞味期限は約7日間。要冷蔵ですが、ニューヨークからのお土産としても自信を持ってお勧めできます。
202A Mott St New York, NY 10012
(646) 918-6336
info@swmsweets.com <https://swmsweets.com/pages/about#>
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