ニューヨークでは、街を歩いていると、パブリックアートや壁画をはじめ、店頭や商品などさまざまな面白いアートやデザインに出会うことができます。
中でも最近よく目にするのが、イラストやアニメなどに影響を受けた、クラフト感のある手書き風のデザインです。手書き風のイラストは、トートバッグや文房具などさまざまな分野の商品で採用されていますが、最近ではさらに商品のパッケージにも取り入れられるようになっています。
レトロな手書き風など個性的なイラストを用いたパッケージは、注目を集めやすく、こだわりや上質感、オーセンティックなブランドのイメージなどを表現することができます。
そんなニューヨークで見かけた、印象的な手書き風デザインのパッケージで効果的なブランディングを行っている例を紹介します。
イタリアの老舗パスタブランド
イタリアのパスタ会社、「Di Martino」は、老舗感のあるレトロな自社デザインに加え、さまざまなブランドとのコラボも行い、ペンネやスパゲッティをはじめさまざまな形のパスタや、ギフト用のパスタ詰め合わせセットなどをおしゃれなパッケージで販売しています。「Di Martino」は1912年に、乾燥パスタの名産地として知られるナポリ近郊のグラニャーノ(Gragnano)で創業した老舗パスタ会社です。現在では、アメリカにも進出しており、ニューヨークでも購入できます。
こちらは、イタリアを代表するラグジュアリーファッションブランド、「Dolce&Gabbana」とのコラボレーションで、イタリアをテーマとしたカラフルな色使いと華やかな柄のおしゃれなパッケージになっています。家族みんなで食卓を囲むほのぼのとした家庭的なイラストも印象的です。「Dolce&Gabbana」とのコラボ商品は、個別のパスタの他、パスタ詰め合わせセットのギフトボックスもあります。
イタリアブランド同士のコラボレーションで、イタリアのプロモーションも兼ねたデザインになっている点も面白いです。パスタのパッケージの裏側には、「Di Martino」のトレードマークになっているナポリ近郊のヴェスヴィオ火山に加え、ベニスのリアルト橋、ピサの斜塔、ミラノやフィレンツェのドゥオーモ、ローマのコロッセオなどイタリア各地にある代表的な名所のイラストが描かれています。
「Di Martino」は「Dolce&Gabbana」の他、映画などでも話題になった「Barbie」ともコラボをしています。バービーらしいピンク色のパスタパッケージやコック姿のバービーが描かれたギフトボックスなども販売されています。ギフトボックスには、パスタと一緒にコラボデザインのエプロンや親子で楽しめるバービー人形も入っているなど、一工夫ある楽しい商品も販売しています。
世界を旅する気分になるクッキー
アメリカの「Makabi & Sons」は、世界を旅するというコンセプトで商品展開しているロサンゼルスのクッキーブランドです。その世界観を作り上げるのに活躍しているのが、手書き風イラストのパッケージです。
こちらは、紅茶の国、イギリスを表現した「オックスフォード」という名のバニラアールグレイクッキーです。箱を開けると、内側のパッケージ(写真右)もレトロなデザインで、「Escape the Ordinary」というメッセージとともに、航海の冒険を連想させる夢が膨らむデザインになっています。
世界のいろいろな地を訪れ、世界のいろいろな味を体験する、そんなコンセプトのシリーズのクッキーですが、他には、南フランスのヴェルドンのラベンダークッキーやメキシコのオアハカのチョコレートクッキー、イタリアのカプリをイメージしたレモンポピークッキーなどがあります。
フランスはレトロな女性のイラスト、メキシコはガイコツ、イタリアはピサの斜塔とバイクが描かれた、それぞれの国から想像するイメージのイラストが描かれたパッケージになっています。
日本をテーマにしたクッキーもあり、日本の宇治の抹茶と黒ゴマの味が楽しめ、鶴のイラストが描かれたパッケージになっています。
老舗ブランドのレトロなイラスト缶
こちらのレトロなイラストデザインの商品は、19世紀末から続く老舗ビューティブランド「Rosebud Perfume Company」のものです。薬局を起源とするブランドで、昔の医薬品に描かれていたようなレトロなアメリカらしいデザインになっています。手書き風の女性や花のイラストデザインが描かれ、トーンを抑えた色味が古くからある薬局の商品らしさを演出し、効能がありそうな雰囲気を醸し出しています。
通常は単品で販売されていますが、ギフト用セットも登場しています。丸い缶入りの商品を3個セットにしたギフトパッケージで、紙箱ではなく、統一感のある上品なデザインの缶を使用し、あえて今っぽさや新しさを加えず、老舗ブランドならではの世界観を維持しています。
こだわり人気レストランのパスタソース
ニューヨークの人気イタリアレストラン「Carbone」のパスタソースが、スーパーマーケットで人気の商品になっています。「Carbone」は、ニューヨークのグリニッジビレッジに、2013年にオープンした高級イタリア料理レストランで、味はもちろん、ミッドセンチュリーをテーマにしたおしゃれな店舗の内装でも知られています。アメリカや世界各地にも進出している他、2021年からは、レストランブランドのさまざまなパスタやピザソースの販売も行っています。
この商品のパッケージデザインは、手書き風のイラストで、ニューヨークのグリニッジビレッジにあるおしゃれなオリジナル店の絵が描かれています。
レストランは、クラシックなイタリアらしいヴィンテージスタイルと、ミッドセンチュリーのニューヨークスタイルが融合した洗練された雰囲気のお店です。そんなレストランのコンセプトを表現した商品のパッケージデザインで、映画のワンシーンのようなクラシック感と、おしゃれなコンテンポラリー感が伝わってくるイラストデザインになっています。
ニューヨークの老舗薬局のギフトバッグ
1838年創業のニューヨークの老舗薬局「C.O. Bigelow」は、オリジナルブランドのソープやクリームなどのボディケア商品も発売しており、贈り物などとしても人気になっています。最近、そんな人気の商品が可愛いギフト用パックで買えるようになりました。ギフトパッケージのデザインは、手書き風のイラストで、ニューヨークの有名なビルなどの街の建物を背景に、グリニッジビレッジにあるオリジナル店が描かれています。
このギフトセットのメインの組み合わせは、ボディソープとボディローション、またはハンドソープとボディローションです。一見、包装紙に包まれているように見えるのですが、実はしっかりとした丈夫な箱製のギフトボックスに入っています。そのため、オンラインで注文しても包装が破れたりなどのトラブルもなく、綺麗な状態で受け取ることができるので、ギフトとしてのオンライン注文でも安心して購入することができます。
パッケージの表側には、ニューヨークにある老舗の「C.O. Bigelow」のお店の絵が描かれています。そして背景には、ニューヨークの街の景色を象徴する有名なビル、エンパイアステートビルやクライスラービルなどが描かれ、とてもニューヨークを意識したデザインになっています。パッケージの裏側を見ると、中身の商品がわかります。
ソープなどのギフトセットというと、四角いギフトボックスを通常利用すると思いますが、この薬局が選んだパッケージは、お店でギフトを包装していた時の名残を感じる包装紙で包んだような温かみのある形のギフトボックスです。
話題の新オリーブオイルブランド
「Graza」は、アメリカで話題の高品質のエキストラバージンオリーブオイルの新しいブランドです。2022年から販売を開始し、現在では、ホールフーズなどのスーパーマーケットやグルメ系のセレクトショップなど、いろいろなお店で広く販売されています。
個性的な手書き風のイラストが描かれている緑色のスクイズボトルのパッケージがトレードマークとなっており、お店でも一際目立つ存在になっています。料理系のYouTubeなどでもよく目にするブランドです。
オリーブオイルと言えば、どこの家庭にもすでに常用しているものがある基本的な調味料なので、新規参入の余地があまりないように思われますが、そんな中「Graza」は業界の新顔として登場し、順調に広まっています。
「Graza」は、オリーブオイルの有名な産地であるスペイン・ハエン(Jaen)産のピクアル(Picual)種のみを使用したシングルオリジンの高品質なエキストラバージンオリーブオイルを比較的リーズナブルな価格で販売しています。商品は、10月に収穫した若いオリーブから作られた「仕上げ用に使うオリーブオイルDrizzle」という商品と、11~12月に収穫した成熟したオリーブから作られた「調理用のオリーブオイルSizzle」という商品の2点のみです。
「Graza」は、愛嬌のあるキャラクターと滑らかな美しいフォルムの利便性の高いスクイズボトルを用い、他のブランドとは大きく異なる個性的なデザインをブランディングの要の一つとしています。
スクイズボトルは、レストランなどでよく使用される、液だれを防ぐ工夫が凝らされた再利用可能なプラスチック製のボトルです。オリーブオイルの容器としてのプラスチックの使用には、長期間の品質保存の観点ではネガティブな側面もありますが、使いやすく、光を通しにくい不透明プラスチックが使用されています。今までのオリーブオイル商品にはなかった美しいフォルムの容器で一際目立ち、初めて見る人には思わず何が入っているのだろうと好奇心を抱いてしまう商品です。
オリーブオイルのリフィルも販売されており、何度もリフィルして使用できます。リフィルにも共通したキャラクターのイラストが描かれ、クラフトビールのようなデザインの缶入りオイルになっています。その人気から現在では、追随するブランドも増え、スクイズボトルの商品をいろいろ見かけるようになっています。
近年の個性的な手書き風イラストを用いたパッケージデザインの商品をよく目にするようになっている背景には、レトロブームやクラフトブームに加え、イラストやアニメなどさまざまな所で手書きデザインの良さが見直され、注目されてきていることが挙げられます。
老舗ブランドから新ブランドまでさまざまなブランドが、こだわりや個性などのアイデンティティとその特別感、またオーセンティックなイメージなどそれぞれのブランドが表現したいメッセージを手書き風イラストに込めたパッケージデザインをブランディングの要の一つとして行っており、今後も、さらにおしゃれで個性的なデザインのパッケージを見る機会が増えていきそうです。
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