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包装市場の最新トレンド2025(その1):持続可能な包装

今回は2回に分けて包装市場の最新トレンドを整理します。
2000年以降、包装分野で最も注目されているのが持続可能な包装です。持続可能な包装とは、環境への影響を最小限に抑えるよう設計された包装で、リサイクル可能、再利用可能、生分解可能な材料の使用や、包装の製造、輸送、および廃棄の過程でエネルギー消費や二酸化炭素排出量の削減を図るものです。
また、マイクロプラスチックやPFAS(有機フッ素化合物)など、生態系への悪影響を及ぼす物質の排除が課題となります。これらの要因は複雑に絡み合っており、LCA(ライフサイクルアセスメント)などの総合的な評価が必要です。

一般的なイメージでは、プラスチックから紙への変更といったワンパターンの発想に陥りやすいのですが、紙は確かにリサイクル面では有利ですが、紙の生産には多くの電力と水が必要で、プラスチックの軟包装に比べて重さや体積の面で不利になります。さらに、森林伐採に対する抵抗やコスト面の課題も指摘されています。
ワインやスパークリングワインに使われるガラス瓶はリサイクルに適していますが、欧州から日本や米国に輸送される場合は重量面で負荷が高く、着色瓶は透明瓶へのリサイクルができません。リサイクル率の高いアルミニウムは関税対策によってコストアップの可能性もあります。

2015年にBBCが放送した「プラスチック・オーシャン」以来、プラスチックの海洋汚染に対する注目が集まり、プラスチックの廃棄物削減やリサイクル、プラスチック代替素材が注目されています。食品配達やパーソナルケア分野では、再利用可能な包装が注目されています。プラスチックの循環型経済という共通のビジョンに向けて協力する企業、非営利団体、政府機関、研究機関を結集したPlastic Pactによると、米国の「プラスチック協定ロードマップ」では、2025年までにプラスチック包装の100%が再利用可能、リサイクル可能、または堆肥化可能にすることを目指しています。

カーボンニュートラルな包装プロセスにも注目が高まっています。企業はCO2排出量を削減し、再生可能エネルギーに投資して、効率的かつ環境に優しい閉ループシステムの構築を進めています。また、包装の軽量化により、輸送コストと炭素排出量を削減する動きも進んでいます。堆肥化可能なフィルムや植物由来の素材の進歩により、品質を損なうことなく循環性を向上させることが可能になってきています。高度な機械やロボットにより、自動化プロセスはより効率的になり、無駄が削減されます。また、材料の使用は最適化され、リサイクル施設の自動選別システムにより、材料回収の精度や速度も向上しています。

1.リサイクル可能な紙ベースの包装

プラスチックの代わりにリサイクル可能な紙ベースの包装が食品や飲料業界で採用されています。Smithersによれば、2034年まで包装業界の売り上げは1.8兆ドルに達し、2028年から2034年の間にCAGR(年成長率)は3.9%で、繊維ベースの包装は包装消費量の39.8%で最大となり、成形パルプは、幅広い用途と低いEPR(拡大生産者責任)で最も高い成長が見込まれています。仏カルフールは、一部の生鮮食品の包装をプラスチックから紙ベースの素材に切り替え、リサイクル率を向上させました。

UPM Specialty PapersとEastmanは、菓子から冷凍食品まで、油脂や酸素のバリアを必要とする食品向けに、バイオポリマーでコーティングした新しい紙包装材料開発で連携しました。コーティングには、UPMの堆肥化可能でリサイクル可能なバリアベースペーパーに塗布されたBioPBSポリマーを含むEastmanのバイオベースの堆肥化可能なSolus添加剤が使用されています。

従来、紙と押出コーティングを組み合わせる際の課題は、(特にバイオベースまたは生分解性の押出コーティングの場合)コーティングの紙への接着性にありましたが、UPM Specialty PapersとEastmanが開発した技術が、課題を解決しました。UPMによると、この技術は従来の低密度ポリエチレン(LDPE)押出コーティング装置と互換性があり、既存の設備の活用が可能で、薄いコーティングでプラスチックの使用量が減り、既存の繊維リサイクルの流れの中でリサイクルできるように設計されており、バリアを維持しながら高い熱シール性を実現します。

2.生分解性およびコンポスタブル(堆肥化可能)な素材

生分解性プラスチックや堆肥化可能な素材を使用した包装が増えています。これらの素材は、適切な条件下で自然に分解され、環境負荷を軽減します。ネスレは、一部の製品でコンポスタブルな包装を採用し、家庭用コンポストで分解可能な素材を使用しています。

韓国に拠点を置くポリヒドロキシアルカン酸(PHA)バイオポリマーの主要生産者CJ Biomaterials,Inc.は、韓国の大手コンビニエンスストアチェーンCUで販売されるカップヌードルの製造にPHA技術を使用しました。CJ Biomaterials,Inc.は2023年に、特許取得済みのPHAとポリ乳酸(PLA)を組み合わせた電子レンジ対応の紙コーティング技術を開発しました。この紙コーティング技術は、紙コップの機能性と品質を損なうことなく、石油由来のプラスチックを減らしながらバイオベースの含有量を増やします。

BAR-U-EATは、堆肥化可能な植物由来の包装でこの分野で初のBPI認証を受けました。カリフォルニア州のすべての包装が2032年までに第三者によってリサイクル可能または堆肥化可能であることが求められるカリフォルニア州SB 54法に準拠しています。

3.リサイクル素材の活用

国際的スナック企業モンデリーズ・インターナショナル社は、英国諸島で販売されるキャドバリーのシェアリングバーに、80%認定リサイクルプラスチック製のパッケージを導入しました。年間約3億本のシェアリングバーの包装に、約600トンの使用済みリサイクル(PCR)プラスチックが使用されます。

モンデリーズは、パッケージ製造のAmcor社および軟包装のJindal Films社と連携し、Amcor社のAmPrima®リサイクルプラスチックを使用したリサイクル可能なパッケージを開発しました。Amcorは豪州のTip Top Bakeriesと提携し、30%リサイクルプラスチック製の包装袋を製造しています。このパッケージは、製品に含まれるリサイクルプラスチックの最低レベルが30%であることを保証する国際持続可能性およびカーボン認証プラススキームによって認証されています。
2024年9月に一部の店舗で発売されましたが、現在はオーストラリアのほとんどの小売店で、さまざまなTip Topパンが販売されています。

キャドバリーの新しいパッケージのリサイクル素材は、マテリアルリサイクルではなく、高度なリサイクル技術(ケミカルリサイクル)を使用して作られ、食品用途で利用可能です。モンデリーズは、マスバランス方式でキャドバリーのシェアリングバーの包装材に含まれる再生プラスチックの割合を計算していますが、この包装材は、国際持続可能性および炭素認証(ISCC)PLUSによって80%再生プラスチックと認証されています。

Smart Planet Technologies社のHyperBarrierは、特許取得済みの三元ナノ複合コーティングで、紙ベースのフレキシブル包装における一般的なポリエチレンコーティングに比べて、酸素バリア性能が最大20倍、湿気バリア性能が最大15倍向上しています。紙やフレキシブル包装の場合、これまでのバリアの選択肢はポリエチレンコーティング(バリアー性が低い)か、ホイル、エチレンビニルアルコール/EVOH、またはその他のプラスチックの層を積層した高価な多層ラミネートでしたが、HyperBarrierは、手頃な価格で酸素、湿気、および耐油機能を保持しています。

4.海藻ベースの包装

海藻を原料とした包装素材が注目されています。海藻は再生可能で、栽培に淡水や農地を必要としないため、環境に優しい選択肢です。世界の藻類市場は急速に成長しており、毎年約10億ドルの売り上げを生み出しています。

インドネシアの企業Evowareは、海藻を原料とした食用包装を開発し、インスタントラーメンの調味料パックなどに採用しています。インドネシアでは、海苔の収穫量が販売量を上回っているため、海苔が余って処分されています。インドネシアで海苔を採って生活している人たちの多くは貧困層で、十分な収入が得られていません。より多くの海苔を買い取ることで、彼らの生活を潤わせたいと考えています。材料は食用で、生分解性があり、家庭で堆肥化できるため、野生生物に害を与えることなく安全に自然に戻すことができます。

NotplaのOohoは、藻類ベースのパッケージの有力な一例で、海藻ベースの食用および生分解性のウォーターポッドです。これは、再利用可能なボトルと組み合わせて使用される持続可能なソリューションで、スポーツイベントなどで大きな注目を集めています。2019年のロンドンマラソンでは、30,000個を超えるOohoポッドがランナーに配布され、プラスチック廃棄物が大幅に削減されました。
米国を拠点とするLoliwareは、使い捨てプラスチックストローの代替品として設計された海藻ストローを開発しました。紙製の代替品とは異なり、濡れた後も最大24時間構造を維持します。Loliwareのストローは食べられますが、2カ月以内に自然分解されます。

ロンドンを拠点とする新興企業MarinaTexは、魚の廃棄物と紅藻類から作られたバイオプラスチックフィルムを開発しました。この革新的な素材は包装用に設計されており、プラスチック汚染を削減する可能性が認められ、国際エンジニアを表彰する「ジェームズダイソン賞」を受賞しました。このバイオプラスチックはLDPE(低密度ポリエチレン)より強度が高く、家庭での堆肥化条件下で4~6週間で分解されます。

Oohoの開発元であるSkipping Rocks Labは、食品業界のプラスチック廃棄物を削減するために、調味料やソース用の使い捨てプラスチック袋に代わる環境に優しい製品を開発しました。この海藻小袋は6週間で生分解します。

5.菌糸体(マイセリアム)や玉ねぎの皮を利用した包装

菌糸体を培養して作られる包装素材は、軽量で丈夫で、堆肥化可能です。米国のEcovative Designは、菌糸体を使用した包装材を開発し、家具メーカーのIKEAが採用しています。

英国のHuidは、タマネギの皮を堆肥化可能なセルロースベースの包装材に変えています。食品廃棄物を再利用して拡張可能な包装材にすることで、食品小売業界で深刻化する使い捨てプラスチック包装への解決策と、紙ベースの包装による森林伐採への解決策を期待しています。

6.再利用可能な包装

再利用可能な包装システムを導入する企業も増えています。Loopは、再利用可能な容器を提供するプラットフォームで、ユニリーバやペプシコなどの大手ブランドが参加しています。

英国の消費者の半数は、再利用および詰め替えシステムを導入しているブランドで買い物をする意識が欧州の中でも高く、最近発表されたOpinium社の消費者調査では、英国人の3分の2(65%)が、すべての小売業者が再利用および詰め替えシステムを提供して、使い捨てプラスチックの使用を減らすべきだとしています。
再利用および詰め替えシステムが便利になると、消費者の3分の2以上(68%)が毎週の買い物に取り入れる可能性が高く、18~34歳の若い層では、その意識は77%に上ります。

Loopを採用したWalmartの商品

Loopを採用したWalmartの商品

米国のOzziは、現在、病院やカリフォルニア大学サンディエゴ校、ピッツバーグ大学、クレムソン大学など、400を超えるキャンパスの食堂でサービスを提供しています。使い捨てのテイクアウト食品容器を再利用可能な容器に置き換え、施設内でプラスチック製の食品容器を再利用するための閉ループシステムを提供しています。

Ozziの再利用可能なO2GO容器は、30%のリサイクル材料を使用したBPA(ビスフェノールA)フリーのポリプロピレン(PP)で作られています。容器は、エコラボによる1,000回の商業用高温洗浄テストに合格しており、NSF(National Sanitation Foundation)によって安全性が認定されています。

7.詰め替えソリューション

ユニリーバは、利便性、製品の数量と価格の管理、および柔軟なプラスチック袋の全体的な削減を目標として、スリランカ、バングラデシュ、インドネシアの市場やスーパーマーケットチェーンで詰め替えソリューションの試験運用を支援してきました。

スリランカでの取り組みは、2019年にスリランカのベンチャー企業ベガ・イノベーションズと提携し、合理化されたサプライチェーンを持つ大手チェーンやスーパーマーケットなどの近代的な商業施設に、2台の大型ハイテク詰め替え機を設置しました。各マシンには、ユニリーバのDove、Sunsilk、Sunlightブランドを含むホームケア製品とパーソナルケア製品が提供されました。

さらに、ユニリーバは2020年にジャカルタで詰め替え機を通じてDove、Rinso、TRESemméなどの家庭用・パーソナルケアブランドを販売しています。アパートの建物と一般貿易Kioskに2台のデジタルマシンを導入したところ、インドネシアの顧客は価格、利便性、投与量の管理を重視していることが判明しました。
ユニリーバは2018年以降、世界中で50回以上の再利用および詰め替えの試験運用を行っており、その学びを自社の使い捨てプラスチック包装削減戦略に活用しています。

2024年4月に当初の2025年目標を修正し、硬質プラスチックについては2030年までに、軟質プラスチックについては2035年までに、100%再利用可能、リサイクル可能、または堆肥化可能な包装を目標としています。

8.バイオプラスチック

世界のバイオプラスチック市場は、2021年に81億4,000万ドルと評価され、2022年から2027年にかけて約14%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2027年には180億5,000万ドルに達すると予測されています。世界のプラスチック生産量はわずかに減少しているものの、技術の進歩、研究開発の増加、用途の拡大により、バイオプラスチックの需要は着実に増加しています。

コカ・コーラは、植物由来のPETボトルを開発し、一部の製品で使用しています。飲料世界大手コカ・コーラは、植物由来プラスチックを100%使用し(キャップとラベルを除く)、商業規模の製造技術を用いた同社初となる飲料用ボトルのプロトタイプを発表しています。

世界で最もリサイクルされているプラスチックであるPETは、約30%のモノエチレングリコール(MEG)と約70%のテレフタル酸(PTA)の2つの分子から構成されています。同社が2009年に発売したPETボトル「プラントボトル」には、サトウキビなどの植物由来原料を30%使用したMEGが含まれていますが、PTAは石油由来のものが使用されています。プラントボトルは、従来のPETと同様の外観・機能・リサイクル性を備えていますが、地球と地球資源に与える影響は従来のPETよりも少ないとされています。

Inova Market Insightによれば、アジアではパッケージへの植物性インクの利用が増加しています。

New Bottle Co.(NBCo)は、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、「消えるように設計された」成形繊維ボトルを発表しました。NBCoは、竹、ススキ、ユーカリ、バガスなどの農業廃棄物の「再生可能な資源」から作られた、従来のプラスチック包装の代替品です。
同社はセルロースを使用して繊維特性を最適化し、強度があり成形可能な素材を製造しています。カスタム配合とバイオ添加剤によって湿気や酸素に対するバリア特性を実現し、有害なプラスチックコーティングを排除しています。

9.リサイクルPET

米食品会社Albertsonsは、米国初の持続可能なワインパッケージとして、100%リサイクルPETボトル入りのBee Lightlyワインを発売しました。Bee LightlyのフラットrPETボトルは、二酸化炭素排出量を削減し、パレットの使用量を44%削減して出荷効率を高めています。

リサイクル可能なrPETボトルは、同じ容量の従来のガラスボトルよりも87%軽量で、革新的なフラットパッケージデザインは、従来のワインボトルの形状に比べて二酸化炭素排出量が少なくなっています。Bee Lightlyのフラットパックボトルは、標準的なガラスボトルに比べて、同じ量のワインを輸送するのに使用するパレット数が44%減少します。

10.軽量化と縮小化

包装の軽量化や縮小化により、材料使用量と輸送コストを削減します。P&Gは、洗剤の包装を軽量化し、プラスチック使用量を削減しています。ミニマルなパッケージングは、材料費の節約、時間と労力のコストを削減、配送重量コストの削減、梱包サイズの縮小、組み立ての簡便化をもたらします。

薄壁包装市場は、Towards Packagingによると、2023年の499億ドルから6.4%のCAGRで成長し、2032年までに世界規模で767.7億ドルに達すると予測されています。薄壁プラスチック包装は、食品や飲料業界を中心に多くの業界で普及しています。食品の場合、薄壁包装は、ヨーグルトカップなどの乳製品の容器、冷凍食品、果物、野菜、ベーカリー製品、調理済み食品、ジュース、スープ、肉類などに広く使用されています。
また、肉や保存食などの日用品におけるガラスや缶の代替品として、新たな市場機会を生み出します。

全世界で、アジア太平洋(APAC)地域は世界のプラスチック生産量の半分以上を占めており、総計3億9,070万トンの51%を占め、世界のプラスチック生産量において極めて重要な役割を果たしています。世界最大のプラスチック消費国である中国とインドは、APAC地域におけるプラスチック包装の主要市場であり、消費者が包装商品へとシフトするにつれて需要が高まっています。

米国とカナダのコカ・コーラが数十年ぶりにボトルのデザインを一新しました。ボトル1本あたりの重量は21gから18.5gに軽減されました。このパッケージングの取り組みを通じて、2024年と比較して2025年は年間17,000台以上の自動車を道路から排除するのと同等の量の二酸化炭素排出量を削減できるとしています。IKEAも家具の包装を軽量化し、輸送効率を向上させています。

11.水溶性包装

P&Gのジェルボールやハイセロンなど、水に溶ける包装素材を使用し、廃棄物を削減する試みが行われています。イギリスの企業Soluble Technologyは、水溶性の包装フィルムを開発し、洗剤や農薬の包装に使用しています。これらの水溶性フィルムは無毒で、堆肥化可能で、廃棄されると無害な成分に分解され、環境に悪影響を与えません。
(参考)YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=xt-HELNExI8&t=36s

12.モノマテリアル化

プラスチック包装は、保存期間の延長や衛生面の配慮などにより、多くの食品・飲料分野で主流を占めています。特に生鮮食品では、プラスチック包装が主流となっています。Innovaによると、食品の品質保持と製品の安全性は、持続可能性をわずかに上回り、依然として世界中の消費者の最大の関心事となっています。

各国でプラスチック規制法案が策定される中、プラスチック包装業界はリサイクル実績の改善を求められ、モノマテリアル化が進んでいます。また、PVCやポリスチレンなど、リサイクルが難しい材料の排除が進んでいます。バイエルのPETブリスターパックは、PVCと比較して、二酸化炭素排出量を38%削減し、水の使用量を78%削減し、土地使用量を53%削減しています。

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