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プラスチックから紙へ。フランス発、進化する紙パック飲料の世界

テイクアウト容器、冷凍食品、飲料…フランスでは、こうした製品に使われるプラスチック容器が、近年ますます姿を消しつつあります。代わって増えているのは、「紙」でできたパッケージです。環境にやさしいアイテムとして、手に取る方も安心感を抱きます。

中でもフランスの紙パック飲料は、デザインのバリエーションがとても豊かです。今回は、フランス市場を代表する紙パック飲料「水」「ジュース」「植物性ミルク」「スープ」の4つのカテゴリーに焦点を当てて、詳しくご紹介したいと思います!

「水」が紙パック入り?!フランスの新ミネラルウォーター

紙パック入りミネラルウォーター「AQUA PAX(アクアパックス)」

紙パック入りミネラルウォーター「AQUA PAX(アクアパックス)」

「水」といえば、多くの人がペットボトルに入った水を思い浮かべることでしょう。ところが近年、フランスのスーパーマーケットでじわじわと増えているのが、このような「紙パック入り」のミネラルウォーターです。

初めて見かけた際は、「水が紙パックに?!」と、ちょっとした違和感を覚えたものです。ですが今ではすっかり慣れ、「これまでどうして無かったんだろう?」と思うほど、その手軽さと環境配慮のバランスが心地よく感じられるようになりました。現在はEU域内で、複数のメーカーが紙パック入りのミネラルウォーターを販売しています。

店頭に並ぶミネラルウォーター

店頭に並ぶミネラルウォーター

たとえば、「EAU NEUVE(オー・ヌーヴ)」。これはフランスの飲料メーカー「La Compagnie des Pyrénées(ラ・カンパニー・デ・ピレネー)」が2021年にローンチした、紙パック入りミネラルウォーターです。

「EAU NEUVE(オー・ヌーヴ)」

「EAU NEUVE(オー・ヌーヴ)」

「EAU NEUVE」の水は、スペインとの国境に位置するピレネー山脈の標高1,332メートル地点で採水されています。パッケージには、植物由来で構成された紙素材が88%使用されていて、紙パック入りの水としてはフランスで初めて市場に登場しました。サイズ展開は330ml、500ml、そして1.5Lです。発売当初は採水が行われている地方のみ、約600店舗で展開していましたが、現在はフランス全国約2,000店舗にまで販路が拡大しています。

なお、飲み口部分はEUの規制により、「キャップと本体が一体化」した仕様になっています。これは2024年7月にスタートした制度で、3L以下の飲料容器では、キャップが本体に固定されていなければなりません。ペットボトルのキャップは海洋ゴミの中でも特に多いという理由で、これらを削減する狙いがあるとされています。

現在、EU域内の飲料容器はキャップが外れない仕様になっています。

現在、EU域内の飲料容器はキャップが外れない仕様になっています。

ストローが不要で、キャップも固定されている「紙パック入り」のミネラルウォーターは、今のフランスで確実に広がりを見せています。

唯一の難点を挙げるとすれば、その価格でしょうか。1本1.5ユーロ(約240円)と、一般的な500mlペットボトル入りミネラルウォーター(約40サンチーム=65円前後)に比べると、やはり割高です。今後、ペットボトルの使用をさらに減らしていくには、マイボトルと紙パック入りウォーターを上手に併用する工夫が求められそうです。

フランスの紙パック飲料といえばこれ。ココナッツウォーター

フランスでよく見かけるココナッツウォーター

フランスでよく見かけるココナッツウォーター

フランスでは、ジュースといえば缶や瓶入りが主流ですが、ある飲料だけは必ず紙パックで販売されています。それが、ほんのり甘くて透明なジュース「ココナッツウォーター」です。この分野の先駆け的存在が、アメリカ発のブランド「VITA COCO(ヴィタ・ココ)」です。さわやかでヘルシーな低糖飲料として、フランスでも2010年代から人気を集めています。

水のイメージに合うブルーカラーが印象的

水のイメージに合うブルーカラーが印象的

ココナッツウォーターは、気温の高い時期になると特に需要が高まる印象があります。そのため、スーパーマーケットでは330mlに加えて、1Lサイズも販売されています。近年ではフランス国内のメーカーからも商品が登場しており、オーガニック専門店「La Vie Claire(ラ・ヴィ・クレール)」では、ショップオリジナルのココナッツウォーターを見かけました。

デザインはシンプルにヤシの実

デザインはシンプルにヤシの実

こちらはストロー付き

こちらはストロー付き

「La Vie Claire」のココナッツウォーターは、フランスでは珍しいストロー付きタイプです。もちろんストローは紙製で、プラスチック製が姿を消した今のフランスを象徴しています。

人気沸騰中、植物性ミルクも紙パックで

フランスの豆乳の豊富なバリエーション。スーパーマーケットのコーナーで

フランスの豆乳の豊富なバリエーション。スーパーマーケットのコーナーで。

フランスでは、ヴィーガンや健康志向の高まりを背景に、植物性ミルクの市場が急速に拡大しています。中でもよく見かけるのは、日本でもおなじみの豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、そしてライスミルクの4つです。

さらに、ココナッツミルクやくるみのミルクといったバリエーションも増えており、フランス市場の規模の大きさがうかがえます。これらはすべて、紙パック飲料として販売されているものです。

上段、左からくるみミルク、オーツミルク、豆乳。下段左からココナッツミルク、オーツミルク、植物性プロテイン飲料

上段、左からくるみミルク、オーツミルク、豆乳。下段左からココナッツミルク、オーツミルク、植物性プロテイン飲料。

プロテイン入りの豆乳。味は日本の調整豆乳に似ています。

プロテイン入りの豆乳。味は日本の調整豆乳に似ています。

私もよく豆乳を購入しますが、フランスの製品で特徴的だと感じるのは、パッケージに「飲み方」のイメージ画像が添えられていることでしょうか。フランスでは日本ほど豆乳の歴史が長くないため、こうしたビジュアルによって「どのように飲めばいいのか」が想像しやすくなっているのかもしれません。もちろん、飲み口は本体に固定された「一体型」タイプです。

側面のデザイン

フランスで作られている豆乳の側面デザイン。

キャップは本体に固定されている

キャップは本体に固定されている。

アーモンドミルクも、豆乳に次いで人気のある植物性ミルクです。レジェ(薄め)かアンテンス(濃いめ)かといった味のバリエーションが豊富なことが特徴で、パッケージの側面にその違いがはっきり表示されているのも便利だと感じました。

アーモンドミルク

フランスで作られたアーモンドミルク。

上段2つは味の強さ、テクスチャー(とろみがあるかどうか)が、5段階で表示されています。下段には用途別、温冷どちらの料理に適しているかが示されています。

上段2つは味の強さ、テクスチャー(とろみがあるかどうか)が、5段階で表示されています。下段には用途別、温冷どちらの料理に適しているかが示されています。

スープは必ず紙パック!なフランス

スーパーマーケットのスープコーナー。実写のようなデザインが特徴的です。

スーパーマーケットのスープコーナー。実写のようなデザインが特徴的です。

最後にご紹介するのは、フランスの家庭料理でも定番の「スープ」です。とはいえフランスのスープはミキサーが必要なことも多く、一からの手作りはなかなか大変です。そんな背景もあって、スーパーマーケットには温めるだけで食べられる便利なスープが数多く並んでいます。

種類が豊富で、2パックで3ユーロ前後(約480円)という手頃さも嬉しいポイントです。パッケージはもちろん紙製で、たまに瓶入りを見かけることはあっても、プラスチック容器にはこれまでまったく出会いませんでした。

上部を広げ、ハサミで注ぎ口をカットします。

上部を広げ、ハサミで注ぎ口をカットします。

今回ご紹介した中では、スープだけが唯一キャップの付いていない紙パック飲料です。これはフランスのスープがとろみの強い「ポタージュ風」であることに関係しているのかもしれません。注ぎ口は自分でカットする仕組みなので、切り口の広さも自由に調整可能です。フランスの濃厚なスープもスムーズに注げて使いやすいです。

紙のラベルを外すと、本体のデザインは非常にシンプルです。

紙のラベルを外すと、本体のデザインは非常にシンプルです。

パッケージデザインはシンプルでわかりやすく、野菜をイメージしたグリーン系のカラーが多いのも印象的でした。イラストより実写風のデザインが施されているのも、スープ系の特徴だと感じます。

こちらは手で簡単に切れるタイプでした。

こちらは手で簡単に切れるタイプでした。

フランスは飲料以外もプラスチック製から紙製にシフト

洗剤やシャンプー、お菓子類など、フランスでは飲料に限らず、さまざまな製品の容器が紙製へとシフトしています。

そして今回、改めて気づいたのは、紙パック飲料はプラスチック容器に比べてデザインスペースが広く、パッケージの側面にたくさんの情報を盛り込めるという点です。植物性ミルクがそうであったように、詳しい情報があることで消費者に安心感を与えてくれます。今後はさらにユニークで、斬新な紙パック製品が登場することでしょう!

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