1971年の創業以来、全国に900以上の店舗を構えるドーナツチェーン店のミスタードーナツ。日本で知らない方はいないほどの有名店ですが、同店がシンガポールにもあることを読者の皆様はご存じでしょうか。
駐在員の方や移住している方など、日本人が多く住んでいるシンガポール。それに伴い、伊勢丹や高島屋などの日系デパートはもちろん、ドン・キホーテや松屋など日本人にとってなじみの深いお店も豊富にあります。もちろん値段は日本より割高になりますが、日系のお店が多く普及しているため、日本人にとってシンガポールは比較的暮らしやすい国であるように思います。
そんなシンガポールですが、長年多くの方から希望がありながらも店舗がなかったお店があります。それが、ミスタードーナツです。シンガポールにもダンキンドーナツ(Dunkin' Donuts)やクリスピー・クリーム・ドーナツ(Krispy Kreme Doughnuts)など外資系ドーナツ店はありましたが、やはり甘さ控えめな日本式のドーナツを求める方が多いようで、店舗化を希望するとの意見があったようでした。
以前ポップアップの期間限定店舗として渡星したことがありましたが、店舗化はされず、2023年についに正式店舗化されました。1号店オープンの際には、開店前から並ぶ方もたくさんおり、長蛇の列となりました。「おひとりさま10個まで」という個数制限も設けられるほどでした。
2025年8月9日に建国60年を迎えるシンガポールでは、現在多くの企業がナショナルデー記念商品を作っており、ミスタードーナツシンガポールも今回マイロ(日本ではミロと呼ばれる商品)フレーバーのドーナツ2種類を期間限定で販売しています。本稿では、同店が提供している建国60周年のドーナツについてご紹介します。
ミスタードーナツシンガポールについて
ミスタードーナツシンガポールを運営しているのは、「RE&S」という会社です。同企業は1988年に設立され、シンガポールとマレーシアで本格的な日本食のダイニング体験を提供するマルチコンセプトのF&B店舗のオーナー兼運営会社です。
シンガポールのミスタードーナツでは、日本と同等の材料を使用して、大阪のミスタードーナツアカデミーで研修を受けたスタッフが高品質なドーナツを毎日作り、提供しています。品質確保のため、数量限定で販売しているので、商品によっては売り切れ次第終了となるそうです。品数は日本よりも少ないものの、ポン・デ・リング、フレンチクルーラーなど約20種類ほどを提供しています。
そんな同店から期間限定で発売されているマイロフレーバーのドーナツは2種類です。日本人の方々の中には、なぜ記念すべき60周年の商品がこのフレーバーなのだろうと思った方もいらっしゃるかと思います。下記では、シンガポール国民にとってマイロがどのような存在であるのかを説明していきます。
MILO(マイロ)とは
シンガポールでは、ネスレの麦芽飲料「MILO(マイロ)」は国民的な飲み物として親しまれています。鉄分やビタミン、カルシウムなどの栄養素が含まれているマイロは、シンガポールでは幼い時から各家庭で子どもに積極的に与えていたり、健康診断や献血、病院の検査などの際に飲むように病院から提供されたりと、人々にとってなじみ深いものとなっています。シンガポールでは、鉄分の豊富さや栄養価の高さから子どもの発育や貧血予防などの面でマイロが大きく活躍しているのです。
その国民的人気は日常でも多く垣間見ることができます。コンビニや飲食店、オフィスビルの自販機など、さまざまな場所で販売されているのはもちろん、学校のイベントなどでも「MILO Van」と呼ばれるワゴン車が出動し、無料でマイロを振る舞うこともあるそうです。また、調べてみると、シンガポールでは年間4億杯のMILOが飲まれている(世界最大の消費国は隣国のマレーシア)、島内の研究開発施設では17カ国からさまざまな分野の研究者約100人を集め、MILO商品のイノベーションを推進しているという調査結果もあります。こうしたことからもわかるように、マイロは人々の生活に深く根付いています。
ミスタードーナツシンガポールの店舗と建国60周年記念のマイロドーナツ
下図は実際の店舗の写真です。お店には種類豊富なドーナツがずらりと並んでいます。看板やディスプレイも日本と同様なので、お店だけ見ていると海外にいることを忘れてしまいそうです。訪問時は平日に伺ったにもかかわらず、多くの人がお店にドーナツを求めに来ていました。シンガポールにお店ができてから大分月日が経っていますが、今も人気があることがわかる光景でした。
ナショナルデー記念商品もしっかりと広告が掲げられ、宣伝されていました。今回販売されているドーナツは2種類で、マイロのクリームドーナツと、もう1つがマイロのポン・デ・リングです。
下の写真が購入したマイロドーナツ2種です。
クリームドーナツは日本でも最近ブームとなっているマラサダのような丸型になっており、中にマイロのクリームが詰めてあります。ポン・デ・リングは半分に切られた部分にマイロクリームが入っています。
ドーナツを入れる紙袋にも「Mister Donut×MILO」と書かれており、これはマイロのドーナツを購入したからこそ手にとれる特権です。こうした細やかなパッケージの工夫にもこだわりを感じます。
クリームドーナツは生地がふわふわでとても軽いことにまず驚きました。柔らかな生地とマイロのコクのあるクリームがよく合い、お味もとてもおいしいです。クリームは甘さ控えめでたっぷりと入っており、一口食べるたびにマイロの香りがふわっと香るのも心地よかったです。
ポン・デ・リングももちもちとした生地とマイロクリームがとてもマッチしています。ポン・デ・リングは日本のミスタードーナツでも人気の商品ですが、シンガポール国民の中でも高評価だそうです。お餅のようにもちっとした生地のドーナツは海外ではあまりメジャーではないので、こうした日本ならではの発想は珍しく、多くの方の心を掴んでいるのかもしれません。どちらのドーナツもまわりにフレーバーやトッピングをコーティングするのではなく、中に入れているのが食べた時の驚きも増して面白いと思いました。
日本にもミスタードーナツはありますが、マイロフレーバーはシンガポールならではの商品です。加えて期間限定なので、在住者の方はもちろん、ぜひ旅行者の方にもお試しいただきたいドーナツです。機会があれば、ぜひシンガポールの人々にとっての国民飲料であるマイロ味をお楽しみください。
▼参考(URLは外部リンクへ飛びます)
Mister Donut Singapore公式HP
https://misterdonut.com.sg/
Choris Gan(04 Jul 2025).I visited Milo’s R&D centre in Jurong - here are 5 things you may not know about the iconic drink. CNA lifestyle
https://cnalifestyle.channelnewsasia.com/dining/milo-singapore-fun-facts-milo-van-467386
WEI YIN(01 JUL 2025). We Toured The Nestlé R&D Centre In SG & Watched How MILO, The OG Breakfast Drink, Is Made. The SMART LOCAL
https://thesmartlocal.com/read/milo-singapore-tour/
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