パケトラ読者の皆様、こんにちは。パリ在住ライターの大内聖子です。ここパリではクリスマスが近づいていることもあって、デパートやショップのウィンドウが一層華やかになってきました。
そんな街角で最近よく見かけるのが、「タイポグラフィ」が印象的なパッケージです。タイポグラフィとは、文字のかたちや配置を工夫して、美しく読みやすい表現をつくるデザイン技術のことです。パッと目を引く個性的なパッケージが多いフランスですが、今回はその中でも特に「文字デザイン」に注目してみました!
1827年創業、老舗菓子店「Boissier」

「Boissier」パリ2区の新店から
まず皆様にご紹介したいのは、パリの老舗コンフィズリー(菓子店)、「Boissier(ボワシエ)」です。2027年に創業200周年を迎える「Boissier」は、日本でもお馴染みのスイーツ「マロングラッセ」発祥のメゾンです。フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴも顧客の一人だったそうで、彼の詩の中には「Boissier」のフルーツキャンディを称える一節が残されています。

色とりどりのフルーツキャンディ「ボンボンブール」が棚に並んでいます。

ペタルチョコレート(花びらの形をしたチョコレート)
マロングラッセをはじめ、フルーツキャンディやペタル(花びら)チョコレートなど、看板商品をいくつも抱える「Boissier」。コレクションしたくなるレトロなパッケージにも心惹かれてしまいます。近年ではなかなか見ることのない、クラシカルで優美なブランドロゴも特徴的です。

キャンディが詰められていたかつての巾着袋(写真右)
さらに、2025年に新しくオープンしたパリ2区のショップでは、2階部分に小さなミュージアムスペースが併設されています。そこで見かけたのは、フルーツキャンディ「ボンボンブール」が入っていたという当時の巾着袋や、1935年に使用されていたレトロなキャラメルのパッケージです。

1935年のキャラメルパッケージ
流れるように美しいタイポグラフィが、ひときわ印象に残りました。そして驚いたのが、90年経った現在でもそのタイポグラフィがまったく変わっていないという事実です。

現在のキャラメルパッケージ
近年のフランスでは、こうしたデザイン、しかも潔く「商品名だけ」で構成されたパッケージをほとんど見かけません。イラストやキャッチコピーが目立つ中で、このキャラメルのパッケージはまさにタイポグラフィが主役といえる貴重な存在だと感じました。
バラエティ雑貨店「HEMA」

「HEMA」の広告、パリの地下鉄構内にて
先日、パリの地下鉄を利用していた時のことです。駅構内の広告パネルに、印象的なタイポグラフィのパッケージが掲載されていました。パネルのサイズが特大だったので、そのブランドが「HEMA(エマ)」であるとすぐに判断することができました。
「HEMA」とは、オランダ発のプチプラ・バラエティ雑貨店です。イメージとしては日本の「3COINS(スリーコインズ)」のようなものでしょうか?チェーン展開で、ありとあらゆる雑貨が揃っていて、お財布にやさしい価格帯がフランス人にも人気です。

エスプレッソ用のコーヒー豆
さて、私は駅で見かけた商品を探して、早速「HEMA」の店舗に足を運んでみました。広告にあった商品は、「エスプレッソ用のコーヒー豆」。ダークロースト・コーヒー豆のパックで、アラビカ種とロブスタ種の豆をブレンド、中煎り~深煎りに焙煎しています。ちなみにパッケージにある数字は、コーヒーの強度を示しているそうです。

コーヒーカプセル20個入り(デカフェ)
コーヒー豆だけでなく、エスプレッソマシン用・カプセルのラインナップもありました。こちらは豆のイラストが「文字の延長線上に」あるようで、とてもスタイリッシュなイメージです。コーヒーの商品にはあまり使われないようなビビッドカラーも珍しく、「ポップで手に取りたくなる商品」という印象を受けました。

コーヒーカプセルのラインナップ(HEMA)
フランス伝統の葡萄マスタード「Denoix」

葡萄の果汁が入ったマスタード
次にご紹介したいのが、フランスの伝統を継承した「Denoix(ドゥノワ)」の紫マスタード、「Moutarde violette de Brive(ムータード・ヴィオレット・ドゥ・ブリーヴ)」です。1839年に設立された「Denoix」は、中央フランスにある大規模なリキュール製造所です。当時の伝統を継承する形で、着色料や香料を一切使用しないリキュールやクルミのワイン、ワインビネガー、マスタードなどを製造しています。

背面には教皇クレメンス6世のイラストが。
中央フランスの昔ながらの特産品である紫マスタード「Moutarde violette de Brive」は、「Denoix」によって現代風にアレンジされました。葡萄の果汁と上質なマスタードの種から作られていて、辛味を抑えたマイルドなフレーバーが特徴的です。
さらに瓶の背面には、同じ地域出身の「教皇クレメンス6世」のイラストが!教皇クレメンス6世とは、14世紀にこの地方で紫マスタードの生産に心血を注いだ人物なのだそうです。

フタにも美しい文字が書かれています。
フランス中世の趣を感じさせる美しい文字フォントと、葡萄や教皇の「マスタードらしからぬ」イラスト。そのすべてが印象的で、フランス土産にもってこいの商品だと思いました。
これがチョコレート?!「TIBITÓ」

「TIBITÓ」のタブレット・チョコレート
一方で、「チョコレートらしからぬ」商品にも出会いました。2015年創業の「TIBITÓ(チビト)」は、コロンビア発のチョコレートブランドです。世界最高級のカカオの一つである、コロンビア産カカオの豊かさを探求したいという好奇心と願いから誕生しました。

チョコレートらしからぬデザインのパッケージ
フランスは、チョコレートの一大消費国でもあります。スーパーやデパートには日本の2~3倍ものチョコレートが並んでいるのが常ですが、その中でも「TIBITÓ」が今、一番目立っているのではないでしょうか。チョコレートの棚に並んでいなければ、パッと見ただけではチョコレートかどうかも分からないユニークな文字デザインをしています。

包み紙にもタイポグラフィ
さらに面白いのは、包み紙にも素敵なタイポグラフィを見つけたことです。視覚的にも手触りにも優しい紙質は、もちろん環境に配慮したものです。さらに、「パッケージデザインが少し和風テイスト」だと感じたのですが、それもそのはず、「TIBITÓ」の包装は日本文化のシンプルさと優雅さにインスピレーションを得たのだそう!
チョコレートの味も上品で、自国コロンビアでは2016年、コロンビアカカオ生産者連盟主催の「第1回全国手作りチョコレートコンテスト」において、コロンビア最高の手作りチョコレートバー賞を受賞したそうです。
パンに塗るスプレッドといえば「Confiture Parisienne」

パリのデパート「Le Bon Marche」のクリスマスコーナー
最後に、早くもクリスマスムードが漂うパリのデパート「Le Bon Marche(ル・ボン・マルシェ)」から、特に印象に残った二つの商品をご紹介したいと思います。
一つは、パリ唯一のジャムブランド「Confiture Parisienne(コンフィチュール・パリジェンヌ)」からです。2015年に誕生した「Confiture Parisienne」は、かつて果樹園が広がっていた時代のパリで、ジャムが特産品だったという歴史を現代に蘇らせたブランドです。

「Confiture Parisienne」のスプレッド
旬の果実と未精製の砂糖を使い、銅鍋で丁寧に煮詰められている「Confiture Parisienne」のジャムです。2025年のホリデーシーズンには、期間限定で「Citrus Circus(シトラス・サーカス)」と名づけられたフルーツ・スプレッドが登場しました。

外箱・特製ボックスも付属(Confiture Parisienne)
「Citrus Circus」は、サクサクのアーモンドプラリネにカカオ、オレンジやレモンがミックスされたフルーツ・スプレッドです(パンに塗るもの)。瓶のほかに、外箱と特製ボックスも付属されているため、より特別感が味わえそうですね。
そしてこちらはなんと、サーカスのテントを模したデザインなのだとか。クリスマスの祝祭ムードを高めてくれる素晴らしいイラスト・カラーに加え、弾けるようなタイポグラフィが素敵です。

イラストが描かれた特製ボックス。6枚のカードになるというユニークなデザイン(Confiture Parisienne)
フランスにおけるクリスマスは、一年の中でもっとも大切な家族のイベントです。「Citrus Circus」のギフトボックスは、クリスマスツリーの下、そしてテーブルの中央に置けるようにデザインされていて、まるで「食卓への招待状」のように飾ることができるそうです。
キュートなお菓子「Sophie M」

「Sophie M」のお菓子(右:ビスケット、左:フォーチュンクッキー)
二つ目は、パッケージがとてもキュートなお菓子ブランド「Sophie M(ソフィー・エム)」です。幼い頃から甘いお菓子が大好きだったという創業者ソフィーは、その思い出を形にし、2007年に夫とお菓子ブランド「Sophie M」を創設しました。
パッケージはそんな少女時代を思い起こすようなハッピーなデザインで、私たち消費者にも優しい印象を与えてくれます。その色合いは淡く柔らかで、パステルカラーがメインとなっています。丸みのあるタイポグラフィに、黒猫ちゃんが見え隠れしているところも可愛らしいと感じました!
タイポグラフィにかなり特徴のあるフランス
フランスでは、洗練されたミニマルさと、時を超えて受け継がれるクラシックさ、その二つのタイポグラフィが共存しているように感じます。特にクラシックなデザインには、フランス語特有の綴りや、記号も関係している印象を受けました。
そんなタイポグラフィはブランドのこだわりや情熱が宿る、とても奥深い存在だと改めて実感しています。もちろんフランスでは、商品パッケージだけでなく、街の看板やショーウィンドウ、そして広告パネルでも美しい文字を見かけることができますよ。
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