忙しいニューヨーカーにとって、今日本で暮らしのキーワードになっている「ていねいな暮らし」は、なかなか現実的ではありませんが、それでも、食生活に気を使う人(使いたい人)は、とても多いです。週末のグリーンマーケットには、以前よりも、オーガニックな季節の新鮮な食材を買い求めるニューヨーカーが増えてきました。それでも、ウィークデーは外食や出前(ニューヨークは出前のバラエティが豊富です)に頼る人も多く、せっかく買った食材も全部使い切れないことが多いのが現実のようです。
そんなニューヨーカーの悩みを解決してくれるのが、食材の宅配ビジネス。まずメニューを選び、材料のすべて(調味料まで測って)を1パックにして届けてくれるところや、家では温めるだけにして届けてくれるところなど、アイデアもそれぞれに工夫が見られます。最近はコンペティター(競合他社)も多く、以前は月契約でないとダメだったのに、一食でも頼めるなど、消費者にとって嬉しい選択も可能になってきました。
“健康的で美味しい食事を作り、毎週あなたのドアに届けます。”
日本ではあまり聞き覚えのない言葉かもしれませんが、ニューヨークには「パーソナルシェフ」という職業があります。個人宅の食事(朝食〜夕食、ホームパーティの食事)を任されるシェフで、住み込みで働くのが一般的です。「うちにも、夕飯だけでもそんなシェフがいてくれたら、どんなに楽だろう」。そんなニーズに応えてくれるのが、クッキング・ユニティ(COOK UNITY)です。
マンハッタンのチェルシー地区にキッチンがある、50人+のシェフのコミュニティで、さまざまな文化的背景や経験を持つフリーランスのシェフたちがメンバーで、好みのシェフの料理が選べます。オーガニックやローカルな新鮮な材料で作る料理は、外食と比べてリーズナブルでカロリーも控え目。単発でも週ごとでもオーダーが可能なのも嬉しい点です。
オーダー方法はインターネットから日時とメニューを指定します。メニューは、週替わりで、冷凍ではなく、スクラッチ(オーダーごとに作る)が届きます。定期契約すると、栄養士から食事のアドバイスなどももらえて、お気に入りシェフを見つけられれば、パーソナルシェフがいるような利便性が得られるという訳です。
“シンプルレシピとともに新鮮な食材を届けます”
この業界のパイオニアとも言えるのがブルーエプロン(BLUE APRON)です。好感度の高いブルーのエプロンがトレードマーク。オーダー方法はホームページまたはアプリから、専属シェフのレシピ(ひとつのフライパンで簡単にできるレシピが多い)から好みのメニューを選択します。レシピに書いてあるすべての材料の入ったボックスが宅配で届きます。調味料も必要量測って小分けにパックされています。
ステップバイステップのクッキングレシピ(カード)をみながら調理するのですが、すべての材料を使い切るので無駄がでません。リサイクル可能なアイスパックとパッケージングも、エコでうれしい。二人〜家族プランもあり、ディナーパーティなどエンターテイメントメニューもあって利用者が多いです。一食7.49ドルからスタートで、キャンセルはいつでも可能です。
“パーソナライズされたオーガニックで安全な食材を使ったヘルシーな食事プランを提供します“
アメリカで暮らしていると、ダイエットの種類の多さに驚かされます。グルテンフリー、ビーガン、ベジタリアン、ペスタタリアン(お肉は食べないけれど魚は食べる菜食主義)といった様々なダイエットに対応するメニューを揃えているのが、Sun Basketです。わずか15分でできるレシピ1週間分が届くシステムです。
他には、アメリカの人気料理研究家でもあるマーサスチュアートの料理が自宅で作れるMartha & Marley Spoonや、メキシカンなどお国料理に特化したメーカー、ダイエット(減量)に特化したメーカーなどもありました。
今回のリサーチを通して知ったのは、利用者がどのメーカーにするかを選ぶ際に重要視しているのが、ヘルシーで美味しいのはもとより、食費の節約(同じ料理の材料を自分でスーパーに出かけて買い揃えるより安いかどうか)、時間の節約、無駄がでないことなどの合理性や利便性。そして、包装資材のパッケージへの取り組みも採点に欠かせないチェックポイントだということ。
リサイクル資材を使うという社会貢献度の高さは、その会社の成熟度につながり、清潔で内容がわかりやすいパッケージは、商品の内容と同等に、選んだ料理を、作る(食べる)時のモチベーションを上げてくれる重要な要素だということです。
忙しい、料理が得意でない、などの理由の他に、料理に興味を持つ子どもたちのクッキング体験にも、ギフトにも良いという声があり、このマーケットは、今後もいろいろなアイデアが期待できる将来性のあるマーケットなのだと感じました。
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