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2027年、パッケージが変わる

パッケージの話をする時、持続可能性の視点で、素材が注目されます。また、マーケティングの視点からはデザインや形態が注目されますが、意外に見落としやすいのが、ラベルや製品バーコードです。そんなラベルやシールの世界で、2027年に大きな変化が待っています。一つは欧州で義務化されるデジタル製品パスポート(DPP)、もう一つは50年間頑張ってくれた、バーコードに代わる新規格GS1 Sunriseの登場です。

デジタル製品パスポート(Digital Product Passport)

EUでは2019年以降、「欧州グリーンディール」と呼ばれる持続可能な経済成長を実現するための政策が取り入れられてきました。この政策では、投資計画や2050年までの気候中立の法制化などの目標が設定されており、廃棄されていた製品や原材料を「資源」としてリサイクルし、循環型の経済システムに転換する「サーキュラーエコノミー」の実現を目指しています。
この政策の一環として、2024年6月に欧州連合が公布した「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」で、DPPの導入が義務付けられました。

2030年までに、DPPは全ての製品に義務付けられます。EUのエコデザイン規則に基づき、EU内で製品を製造、運用、販売する全ての企業を対象に、2027年から段階的に導入が開始されます。DPPの目的は、デジタル接続を通じて消費者、企業、規制当局に最大限の透明性をもたらし、すべての関係者が共同で循環型社会を目指す情報インフラになることです。

DPPは、製品の原材料調達からリサイクルまでの情報をデジタルで管理するシステムです。製品に関する様々な情報を記録し、サプライチェーンの関係者や消費者がアクセスすることで、製品の透明性やトレーサビリティの向上を目指します。

消費者は、DPPによってより正確な情報に基づいた購入機会を得られます。企業は、サプライチェーンを管理、合理化、最適化を行う基盤になります。QRコード、NFC、RFID経由でアクセスできるデータには、材料や化学物質の含有量、修理方法、スペアパーツ、組み立て手順、耐用年数終了時の廃棄ガイダンスなど、商品に関連する多くの情報が含まれ、製品のライフサイクル全体をカバーしています。

DPPは、ブランドロイヤリティの向上を実現します。
店頭やオンラインで購入を検討する際、DPPをスキャンすることで、製品の環境に対する取り組みを確認できます。「サステナブル」や「環境に優しい」といったイメージ訴求だけではなく、具体的なデータで、企業やブランドの環境配慮に関する信頼感を伝えられます。DPPは製品の真正性の証明としても機能するため、偽造品や粗悪品を排除することもできます。また、製品のアフターケアや使用上の注意などの情報で、製品の長期利用を促進し、無駄を減らすこともできます。

企業にとってはカスタマーエンゲージメントを強化できます。これまでは卸売を介した製品販売においては、メーカーが顧客接点を持つことが困難でしたが、DPPを通じて、企業は直接顧客とつながることができ、顧客の購買行動や嗜好をより深く理解し、パーソナライズされたサービスや製品を提供することが可能になります。

これまでは一度消費者に販売された製品の行方を追うことが困難でしたが、セカンダリーマーケット(中古市場)での真贋確認が容易になることで、自社プラットフォームでの再販売やレンタル事業の基盤構築など、従来の販売モデルを超えた新たな収益源の確立も期待できます。また、再購入への情報提供など、LTV(顧客生涯価値)マーケティングにも寄与します。

生産ラインから得られる詳細なデータを活用することで、メーカーはプロセスの最適化を図り、廃棄物を削減し、生産効率を向上させることで、消費量、原材料費、人件費を含む各製品の正確な生産コストや、LCA(ライフサイクルアセスメント)の実態を把握できます。

デジタル化、高速化、透明性の向上

DPPは、パッケージ関連データの透明性を高めます。材料の管理、製品のトレーサビリティ確保、規制の遵守は、長い間、業界の課題でした。
消費者と規制当局は、持続可能な循環型経済の発展における重要な懸念である、包装の原産地、構成、リサイクル可能性について、より高い透明性を求めています。DPPは、法的要件に対応すると同時に、消費者のニーズにも応えます。

さらに、DPPは、まったく新しい顧客体験を提供します。スマートフォンでスキャンするだけで、消費者は、使用されている材料からリサイクル可能性や廃棄の推奨事項まで、製品のパッケージに関するすべての関連情報に即座にアクセスできます。この透明性は、特に持続可能性に関して信頼を育みます。

DPPによる規制遵守

DPPの導入にはメリットがあるものの、データの標準化と既存システムへの統合に関しては課題が伴います。これらの要件は、企業にとって組織的および技術的なハードルとなります。DPPは、サーキュラーエコノミー実現の鍵となる技術として、世界的に注目されています。日本でも、DPPの導入に向けた動きが加速しており、関連する企業や団体は、今後の動向を注視する必要があります。

GS1 Sunrise 2027 2Dコードへの移行

EAN/UPCリニアバーコードを利用する既存の小売バーコードシステムは50年以上にわたって機能してきましたが、機能性を強化するニーズの高まりに伴い、2DコードであるDataMatrixとQRコードの時代が到来しました。1D(リニア)コードから2Dコードへの移行は、米国ではGS1 Sunrise2027イニシアチブと呼ばれ、他の国では「2D Migration(2次元への移行)」と呼ばれています。2Dコードへの移行は、各商品ブランド、小売業者、消費者にメリットをもたらします。
GS1 sunrize2027を導入するのは米国、イギリス、オーストラリア、アイルランド、フィリピン、香港、日本の7カ国です。

GS1 Sunrise 2027は、魔法のように1Dコードから2Dコードへの切り替えを済ませるものではありません。すべてのPOSシステムと小売業者のソフトウェアは、GS1 Sunriseのガイダンスに従い、2027年に開始される2Dコードのスキャンの要件を満たしておく必要があります。現時点の推定では、2027年までにGS1の2Dコードにエンコードされたデータを処理できるPOSシステムが大幅に増加される見込みです。

2Dバーコードは、サプライチェーンのニーズと消費者のニーズの両方を満たす、単一の標準化された方法を提供します。2Dバーコードに記録された情報は、在庫管理の改善、リコール準備の強化、持続可能性の向上と倫理的な調達、優れた製品認証、ブランド信頼の向上を実現します。
GS1は、GS1 Sunrise 2027への対応を検討している商品ブランドに対し、既存のEAN/UPCバーコード(1Dコード)に加えて商品パッケージに2Dコードを追加する方法で、2Dコードへの移行の取り組みに参加することを推奨しています。

GS1は、『2D Barcodes at Retail Point-of-Sale Implementation Guideline』(小売店向けPOSに2Dコードを対応させるためのガイドライン)の中で、移行期間中に使用できるコードの選択肢と、2027年の完了時(目標)のコードを比較できるように指針を提供しています。

移行期間は従来のEAN/UPC(1Dコード)と2Dコードを両方用います。
2Dコードの利用によって商品ブランドとしてはさらなるデータを追加できるメリットがあり(例えばGS1 Digital Link がエンコードされたQRコードは、消費者との間のインタラクティブ性の向上にも利用できます)、店舗側ではPOSシステムを更新しなくても各製品をスムーズに販売開始できるようになります。

GS1 Sunriseイニシアチブにより、消費者製品の2Dコードへの切り替えが推進されます。世界的な規制、コーディング標準、消費者の好みの変化に伴い、消費者向け製品での2Dコードの使用は増え続けています。GS1は、世界中のメーカーや小売業者向けのデータ標準を確立するグローバル組織として、リニアコードから2Dコードへの移行の最前線にいます。

GS1 Sunrise 2027 イニシアチブは、消費者が販売時点で製品とやり取りする方法と、小売業者、ブランド所有者、製造業者がバーコードデータを使用する方法に革命を起こすことを目的としています。GS1は、従来のEANおよびUPCバーコードからGS1規格の2D QRコードまたはGS1 DataMatrixコードに移行することで、データ容量を強化し、トレーサビリティ、ブランド保護、サプライチェーンの効率を向上させながら、消費者エンゲージメントを向上させると考えています。

グローバルヘルスケア企業であるフレゼニウス・カビは、GS1 DataMatrixバーコードを導入し、ポートフォリオ全体の製品ラベルを強化することで、イノベーションを継続しています。これにより、臨床医は患者ケアに必要なより多くの重要なデータにデジタルでアクセスできるようになります。700種類以上の製品(その多くは小型パッケージ)を扱うフレゼニウス・カビは、世界的に一意の製品コード、バッチ/ロット番号、有効期限など、適切なラベル表示プロトコルを策定するために、綿密な検討を進めています。

プーマ、ペプシコ、P&Gといった多くの大手ブランドは2027年の目標に先立ち、段階的にGS1を導入しています。ペプシコが新しいコードを用いて、サプライチェーンのニーズと消費者の要望を満たすためにどのようにデータを取得しているかについては、こちらのビデオをご覧ください。
(https://youtu.be/Yrjx16VlLko)

2Dバーコードへの移行の課題と期待

2Dバーコードへの移行には、いくつかの課題があります。
現在1Dコードを使用しているオペレーションは、新しい標準にシームレスに移行するために既存プロセスの変更が必要です。GS1を従来のPOSの置き換えと考えるのは誤りです。GS1はこれまでのビジネススタイルを大幅に変えることになります。新しいシステムへの移行には、新しい品質管理規則、製造手順、および対策を明確に確立することが重要です。従来のように製造業者が、事前に印刷されたコードのラベルを購入するのではなく、生産プロセスの一部としてオンデマンドで2Dコードを印刷する方が効率的で、正確だからです。DPPに関しては欧州の法規制、ESPR規則などの理解も重要です。

また、2Dバーコードの導入はパッケージの広告メディア化、パーソナルメディア化、リアルタイムプロモーションやリテール広告などとの連携も実現します。

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