パケトラ読者の皆さま、こんにちは。パリ在住ライターの大内聖子です。まだ寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか? こちらパリの冬はカラッと晴れる日本の冬とは違い、雨が多く、どんよりとした空が広がっています…。
こうしてテンションが沈みがちな季節の中で、少しだけ楽しみなことがあります。それは、冷えた空気の下で「香水」が綺麗に香ること。フランスの人々にとっても、やはり暑い夏より冬に香水を楽しむことが多いようです。今回は、そんなフレグランスのボトルデザインをご紹介します。コスメカウンターで思わず「二度見」してしまうような、美しいデザインを集めてみました。
ゲラン(Guerlain)

パリ、シャンゼリゼ大通りにあるゲラン本店
まずは、世界的に有名なフランス発のフレグランスメゾン「ゲラン(Guerlain)」から。ゲランが誕生したのは、今から約200年前の1828年のことです。これまでに「ミツコ」や「シャリマー」「サムサラ」といった、名香の数々を世に送り出してきました。パリのシャンゼリゼ通りにある本店の建物は、市の歴史的建造物に指定されているほど由緒ある場所でもあります。

ゲラン本店の2階フロア
実は、そんなゲランの香水ボトルに「ある特徴」が存在することをご存じでしょうか? ガラスボトルの表面に、なんと無数の「蜂」があしらわれているのです。

これは、19世紀、フランスの皇后ウジェニーのために作られた香水「オー・ド・コロン・インペリアル」のボトルに、皇帝ナポレオン三世の象徴である「蜂」が刻まれたことがきっかけです。以来、蜂はゲランとフランスの品格を「そっと伝える」アイコンとして、長く受け継がれてきました。

新作フレグランス「L'HEURE DORÉE(黄金の時間)」
そして2026年1月には、ラマダン明けを祝うラグジュアリーライン「Rendez-Vous d'Exception」が新作として発表されました。ボトルのカラーは、とても珍しい漆黒色。こぼれるようにあしらわれたパールも、中々に印象的です。
このデコレーションは、パリの刺繍工房による手仕事で仕上げられています。もはやフレグランスというより、工芸品に近い存在感ですね。高級なイメージを抱くのも、ボトルがフラットではなく立体感にあふれているからでしょう。

新作フレグランス「ROUGE BONHEUR(赤の幸福)」
さらに、2026年の旧正月限定版として、"火の馬"をモチーフにした特別ボトルも登場しています。鮮やかな赤のボトルには、パリのジュエラーが手がけたという馬の装飾が。今年2026年は「午年」ですので、私たち日本人にも親しみやすいデザインだと感じました。ただし、お値段はそれぞれ790ユーロ(約14万6,000円)とかなりの高額!24金メッキとスワロフスキーのクリスタルで仕上げられているため、フレグランスボトルというよりはまるでジュエリー、宝飾品のような感覚でした。
ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)

「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)」はベルギー発のラグジュアリーブランド。モードなファッションも素敵ですが、その香水ボトルも一見に値します。
"相容れないように見える要素や色の組み合わせ"を特徴とするボトルデザインは、「これまでに見たことがない!」と思わせるほど斬新。さらに、過去のコレクションで使用した生地をアップサイクルして香水の収納ケースに用いるなど、ファッションとの連動性にも注目したいところです。


ちなみに、こちらの香水ボトルは、レフィルを購入することで長く愛用できるとのこと。美しいファブリックを落とし込んだボトルは、お部屋に置いておくだけで素敵なインテリアになりそうです。その香りはファッションブランドらしく、モードでおしゃれ。香りもさることながら、どのボトルデザインを迎え入れようか、コスメカウンターで迷ってしまいそうだなと感じました。

ペンハリガン(PENHALIGON'S)

日本でもよく見かける「ペンハリガン(PENHALIGON'S)」は、イギリス発のフレグランスブランド。英国王室御用達の称号を与えられた、由緒あるメゾンの一つでもあります。

ペンハリガンのボトルデザインは本当に素敵です。水晶のような丸いキャップに、リボンやボウタイがあしらわれた、クリアで美しいフラコンボトル。ペンハリガンのフレグランスを見ていると、「ボトルデザインの大切さ」に改めて気付かされます。
そんなペンハリガンにも、通常のシリーズとは異なるラグジュアリーラインが存在します。「ポートレートコレクション」という名の、物語性に富んだ特別なラインです。

手前の香水ボトルが「ポートレートコレクション」
動物の顔をかたどったユニークなキャップが印象的な1本。これは一体、何なのでしょうか?
「ポートレートコレクション」と呼ばれるこちらの高級ラインは、2016年に初めて登場しました。ペンハリガンの創業一家は、イギリスの老舗フレグランスメゾンという一面とは別に、古くからヨーロッパの芸術家たちと交流があったといいます。その面々は、オペラの演出家や舞台監督、画家といったアーティストたち。多方面で活躍する彼らにインスパイアされ、「ストーリー仕立て」として発売されたのが「ポートレートコレクション」です。
舞台は19世紀後半のイギリス、田園地帯に建つ大邸宅。そこに住む家主のジョージ卿とその一族の秘密、そして英国上流階級のからみ合う人間模様を、香りで表現しています。

「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)オードパルファム」
たとえば、象をあしらった「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)オードパルファム」は、ジョージ卿の"優秀な執事"をイメージしたもの。香りのテーマは、執事が握る一家の「秘密」です。とても上品でマチュアな香りですが、少し内省的でミステリアスな印象も受けました。執事のイメージがよく表れています。
他にも、鹿、羊、サイ、馬、ドラゴン……と、さまざまな動物のモチーフがある「ポートレートコレクション」。ボトル、というよりキャップに大きな特徴があるため、使うたびにワクワクした気持ちになりそうですね。キャップを落として壊してしまわないか心配ですが、「他に見たことがない」という意味では、やはり唯一無二だと思います。

新シリーズ「ポーション&レメディ コレクション」

パッケージに封蝋印があしらわれています。
さらに、ペンハリガンには、2023年(日本では2024年)からスタートした新しいシリーズ「ポーション&レメディ コレクション」があります。こちらはBOXパッケージに"封蝋印"があしらわれていました。こうして趣のあるデザインも、老舗メゾンならではの魅力ですね。
メモ(MEMO PARIS)

次にご紹介するのは、日本未発売の香水ブランド、「メモ(MEMO PARIS)」です。パリ発祥であるメモのコンセプトは、香りで「旅」をすること。世界中の魅力的な都市にインスパイアされた、さまざまなフレグランスを発表しています。
メモの名前の由来は、思い出の意味の"MEMORY"からきています。なお、すべての香りが性別を問わない「ジェンダーレス仕様」。レザーの香りを中心とした、個性的でクールなオードパルファムが揃っています。

ボトルの形自体はシンプルなのですが、メモの特徴は何よりも、"パッケージのイラストデザイン"にあると思っています。メモは創業以来、写真家やイラストレーターなど多彩なアーティストとコラボレーションを続けてきました。つまりパッケージデザインを手がけるのは、現役で活動するクリエーターたち。フレグランスのコンセプトである旅先の風景を、絵葉書のようにパッケージへ落としこんでいる、というわけです。

パリの香り「オデオン(Odéon)」MEMO PARIS Instagram
たとえば、パリに実際にある街「オデオン(Odéon)」をイメージした香りでは、この街から見上げる"空"がパッケージに描かれています。これほど素敵なら、香りよりボトルデザインに惹かれて購入を決める人もいるのではないでしょうか?

メモのショップカードも素敵でした。
キリアン(Killian)

次にご紹介するのも、フランス発祥のフレグランスです。その名は「キリアン(Killian)」。LVMHグループの創始者の孫であり、世界的コニャックメゾンとして名高いヘネシー家のご子息、キリアン・ヘネシー(Kilian Hennessy)が、2007年に立ち上げました。
キリアン・ヘネシーは、自身が幼少期に体験したコニャックの"樽"の香りを深く心に刻んでいたといいます。というのも、彼が生まれ育った城にはコニャックセラーがあったためです。

「エンジェルズ・シェア」
そんなキリアンのフレグランスの中で、ひときわ目を引くのが「レ・リカー(Les Riqueurs)」という高級ラインのボトルです。その見た目はまるでロックグラス!
写真の香り「エンジェルズ・シェア」には、液体にキャラメル色を添えるために抽出されたコニャックエッセンスが配合されています。キリアンにしか出せないであろう最高品質の深い香りに、ファンならずとも酔いしれてしまいそうですね。
ラ・ブルケット(L:A BRUKET)

さて最後は、スウェーデン発のフレグランス「ラ・ブルケット(L:A BRUKET)」をご紹介します。ラ・ブルケットの香りは、先に紹介したゴージャスな香水とは異なり、北欧らしい静かなムードが特徴的です。
調香はとてもスッキリしていて、海、森、ハーブといった自然を思わせる香りがメインです。強く主張しないので、香水が苦手な人でもつけやすいかもしれません。

もちろん、パッケージデザインもミニマルです。ラ・ブルケットの「ギザギザ」のボトルは、北欧のクラシックな陶器を模しているとのこと。原始的な形と、北欧モダニズムの融合が表現されています。ちなみにプラスチックのキャップは、バイオ分解が可能という設計になっています。いずれも生活に溶け込むデザインで、「上質なライフスタイルの延長」として楽しめそうですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 近年はシンプル&ミニマルなボトルデザインが増えてきましたが、こうして見ると、ストーリー性のあるボトルについ目が行ってしまいます。そして、今回ご紹介したブランドの多くは日本でも手に入ります。コスメカウンターを訪れた際に、この記事のことを思い出していただけたら嬉しいです!
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