パケトラ読者のみなさま、こんにちは。ポルトガル在住の東リカです。
ここポルトガルには、地元素材をふんだんに使った手作り石鹸の長い歴史があります。今回は、以前「ポルトガルのかわいい石鹸パッケージ」記事でも取り上げた老舗石鹸ブランド「Ach. Brito(アク・ブリト)」の、パッケージの賞も受賞している新ラインをご紹介します!
老舗ブランドの課題と戦略

Photo: Ach. Brito
「アク・ブリト」は、アキレス・デ・ブリト(Achilles de Brito)氏が1918年にポルトガル初の香水&石鹸工場「Claus&Schweder」から独立し、兄弟と共に創業した100年以上の歴史を持つ石鹸ブランドです。スーパーなどでも販売している「アク・ブリト」の石鹸は、ポルトガル人にとって、身近な商品です。
ただ一方で、ブランドとして庶民の生活に入り込んでいるものの、歴史が長い分、「クラシック=古い」というイメージを持たれがちで、若い層から選ばれにくいという課題がありました。そこでブランドは現在、この古いイメージを刷新し、若者やグローバル市場へもアピールできるような新ラインのローンチに着手しています。とはいえ、もちろんこれまで培ってきたブランド遺産を捨てるわけではありません。新ライン名には「1918」と創業年を採用し、「原点を現代的に再構築する」というアプローチを取りました。

Photo: Ach. Brito
ブランドの原点である「香り」を核にして完成した「Ach. Brito 1918」には、ブランドらしさを保ちながらも新鮮な、香り付き石鹸(sabonetes perfumados)はもちろん、ユニセックスの香水、ハンドクリーム、アロマキャンドルがラインナップ。スーパーや薬局に並ぶ定番の石鹸よりは高級ですが、グループの最高級ライン「クラウス・ポルト」に比べれば求めやすいミドルレンジのコレクションです。早速、その新ビジュアルを見ていきましょう!
Ach. Brito 1918のビジュアルアイデンティティ

Photo: Ach. Brito
老舗ブランドが新たなビジュアルアイデンティティを生み出すために立ち返ったのは、これまでの歴史の中で培われたデザインのアーカイブ。「アク・ブリト」は、創業当初からブランドの本質を形作る要素として、ビジュアルに力を入れてきました。常に優秀なイラストレーターやデザイナーにパッケージやポスターのデザインを依頼し、手描きのラベルから、社内でのリトグラフ制作や印刷体制の構築、そして膨大で独自性の高いグラフィックアーカイブの形成が行われてきたのです。
それらのパターンや形状、レタリングを含む、1世紀にわたるグラフィックアーカイブが、新コレクション開発の核となりました。「過去への真の敬意とは、同じものを繰り返すことではなく、その価値を未来へとつなぐ形で発展させることにある」という思想に基づき、1918ラインは、過去のビジュアルをそのまま複製するのではなく、現代の視点で再編集し、進化させることを目指しました。

Photo: Ach. Brito
アーカイブに蓄積された色彩、図案、シンボルなどは、現代的でミニマルなデザイン言語で再解釈され、本質だけをすくい上げた新たなパターンへと編集されていったのです。
例えば、新しいロゴには、かつてポルトの旧工場の外壁に掲げられていた歴史的な"Ach. Brito"の文字を再び中心に据えたデザインを採用しました。過去とリンクしていながらも、変化を感じさせる新鮮な印象です。また、「アク・ブリト」の歴史を通して重要な役割を果たしてきた赤色がブランドの「感情を表す」キーカラーとして採用され、ライン全体、さらにはブランド全体をつないでいます。
Ach. Brito1918のパッケージ

石鹸の花瓶と花を用いた「SENTIR O TEMPO」インスタレーション
「Ach. Brito 1918」のローンチは、リスボンデザインウィークの一環として、ダウンタウンの、通常は一般公開されていない16世紀の礼拝堂で行われました。
デザイナーのサム・バロン(Sam Baron)氏とジョアナ・テイシェイラ(Joana Teixeira)氏が共同で制作した「時間」をテーマにしたインスタレーション「SENTIR O TEMPO / It's All About Time」と共に発表された商品パッケージは美しく、すでにポルトガル最大のクリエイティブアワード「CCP2026」で2部門受賞していることにも納得です。
具体的には、パッケージ部門で金賞、リブランディング部門で銀賞を受賞。「歴史を未来へ翻訳するデザインが実現した」と評価されたようです。(https://www.oneclub.org/awards/ccp/-award/65468/packaging-ach-brito/)

例えば、100mlの香水は、どれも透明ガラス×黒キャップのミニマルなデザインのボトルに入っています。直線的なボトルと対照的な、有機的な形の黒いキャップは重みもあり、高級感や柔らかさもあります。そして、そのボトルが入っている箱は、ブランドのキーカラーである赤。内側にそれぞれの香りと呼応するパターンが印刷されています。このパターンは、膨大なグラフィックアーカイブから着想を得たものです。

Photo: Ach. Brito
この香りごとに制作されたパターンは、10mlのトラベルサイズの香水、ハンドクリーム、石鹸にもそれぞれ共通して使われています。

Photo: Ach. Brito
特に印象的なのが、ハンドクリームのサステナブルなPCR(使用済み再生アルミニウム)を使用したチューブパッケージです。ロゴが赤い小さな旗のように見えるように、ラベルをチューブの縁から少し飛び出すように貼り付けています。

また、キャンドルの箱はアール・デコから着想を得た、幾何学パターンになっています。

セレクトショップ「A Vida Portuguesa」店内
タイアップしたセレクトショップの店頭でも1918コレクションがディスプレイされていました。赤色とロゴですぐに「アク・ブリト」の商品だと分かると同時に、垢抜けたおしゃれな印象を与えています。
ポルトガル、また大航海時代の航路をインスピレーションにした香りも素敵なので、機会があればぜひ手に取ってみてくださいね。
▼参考
「アク・ブリト」HP
https://achbrito.com/en/collections/1918
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