ニューヨークのホリデー・ポップアップショップに見る、パッケージ、プロモーション、マーケティング
ニューヨークは、感謝祭(11月第4木曜日)の翌日から、本格的なホリデーシーズンがスタートしました。気温はグッと下がりますが、クリスマスデコレーションで街は華やかになり、ニューヨーカーも旅行者も、テンションがグッと上がります。
ホリデーシーズンは別名ギフトシーズンと呼ばれ、この時期はあちこちでポップアップショップがオープンします。中でも、タイムズスクエアの東側に位置するブライアント・パークのホリデー・ポップアップショップは、 この公園の冬の風物詩でもあるスケートリンクを囲むように、フード、アパレル、アートワーク、ジュエリー、ヘルス&ビューティ、キッズ&ゲーム、ホーム、ホリデーギフトのベンダーが並びます。スケートも楽しめて、食事もできて、すぐ近くにはブロードウェイミュージカルのメッカのタイムズスクエアがあるという好立地も幸いして、毎年大盛況です。
老舗のブライアントパークカフェ(高級レストラン)やル・パンコティディアン(カフェ)が園内にあり、四季折々のイベントも成功を収めているブライアント・パーク。一年を通して注目度の高いこの公園でのホリデー・ポップアップショップを、今回はショッピングではなく、ニューヨークらしさ、ディスプレイ、プロモーション、商品アイデアといった視点で、リサーチに出かけました。
ブルックリンのクラフトチョコレートメーカー「ラッカ」は、ミニマムなブース作りが印象的。
ブルックリンを代表するチョコレートメーカー「ラッカ(Raaka)」も出店していました。メイド イン ブルックリンのクラフトチョコレートのトップの座に長く君臨していたマストブラザースチョコレートに代わり、今、最も旬なポジションにあるのが、2010年に創業したラッカ。普段はブルックリンのレッドフックにある工場まで行かないと全種類のチョコレートが揃わないこともあり、集客力のあるラッカは、このホリデー・ポップアップショップにとって主力ブランドです。
商品数は9種類の板チョコ。他店がブースいっぱいに製品を並べる中、ラッカのブースは、製品の陳列面積を最小限に抑え、ミニマムな印象。ブースのディスプレイのテーマは、自社のパッケージ(ラッピング紙)で、正面の壁面にパッケージと同じグラフィックアートを描き、ブース全体で、製品イメージをプロモーションしています。
ポップアップショップの特別プロモーションアイテムは、ギフトセットです。一枚6ドルのチョコを3枚買うと、布製の袋が付いて15ドルとお得。3枚の板チョコ用の特別ギフトボックスもあり、こちらはチョコ代込みで20ドル。フタの表にはブルックリンのラッカのファクトリーの写真、裏側には板チョコができるまでのプロセスのイラストが描かれています。
8枚買うと(計48ドル)、プラス2ドル(計50ドル)で、金色のラッカのロゴが型押しされたギフトボックスが選べます(ラッカのフォトブック付き)。
グッドデザインが評判のブライアント・パークのスーベニアショップは、ノベルティーグッズのヒントがいっぱい
都会のオアシスとして、旅行者にもニューヨーカーにも愛されているブライアント・パークは、四季を通して様々なイベントが企画され、冬のアイススケートリンクは特にファンが多く、いつも長蛇の列ができます。
そんな公園をモチーフにしたスーベニアは、ニューヨーク滞在の思い出グッズとして人気があり、普段はウェッブ・サイトでしか買えませんが、ホリデー期間中は、ポップアップショップに出店しています。この「普段はサイトでしか買えない」という戦略が功を奏して、他のブースに劣らない人気ブースぶり。メイドインニューヨークのメーカーとのコラボ企画グッズも多く、他の公共施設のスーベニアにはない、旬のデザイナーやメーカーを取り入れる姿勢=マーケティングが評判です。
この公園のアイコンであるガーデンチェアがモチーフのコルク・コースター、公園内の施設のイラストが入ったバンダナ、ラッカに特別注文したオリジナル板チョコ。ホリデーシーズン限定品の手描きのスケートリンクのクリスマスオーナメント(30ドル)は、飛ぶように売れるヒット商品で、この公園の人気ぶりが伺えます。
ニューヨークのおみやげトップ10の常連「ストランドブックストア」のギフトショップ
ロゴ入りのトートバッグが旅行者に大人気の「ストランドブックストア(Strand Book Store)」も出店していました。本業の本でなくニューヨークみやげにおすすめの雑貨がメインで、ギフトショップとしての出店です。
ポップアップショップは、ショップまで行かなくても人気のお店が一箇所に集まる利便さが人気。ストランドブックストアのブース面積は他店の4倍以上あり、ニューヨークの顔としての存在感をアピールしていました。
クラシックなラベルと、意外性のある製品が魅力の「ドクター・シルクマンズ」はメイド イン クイーンズ
ブルックリン人気が定着した今、ブロンクスやクイーンズを拠点とするメーカーがじわじわと増えています。「ドクター・シルクマンズ (Dr. Silkmans) 」は、クイーンズのメーカーで、ボディオイルやシェイビングキット、ソープなどのビューティプロダクツを製造販売しています。クラシックなイメージのラベルがアイキャッチで、思わず私もブースに引き寄せられました。
ブースは、ビンテージのウッドボックスを使うなど、クラシックなラベルのイメージを取り入れたディスプレイ。ギフト戦略は、1個10ドルのソープが3個買うと25ドル、1個18ドルのボディ・ローションは3つまとめて買うと50ドルなど、まとめて買うとお買い得になることを、販売員は積極的にセールストークに盛り込んでいました。この「まとめ買い」は他のブースも実践しているところが多く、ポップアップショップに来る旨味になっています。
ロゴの「HOT(辛い)」が並ぶ可愛さがアイキャッチな「マイクズ・ホット・ハニー」のブース
2010年にブルックリンに誕生したハチミツメーカー「マイクズ・ホット・ハニー(Mike’s Hot Honey)」。ブースの展示は、製品をブースいっぱいに並べ、ディスプレイ小物はネオンサインとプライス表示のみ。パッケージが良いと、こういうシンプルなディスプレイでもセンスのいい空間ができる、お手本のようなブースです。
狭いブースながら店員を二人置いて「ピザやフライドチキン、カクテルやアイスクリームにも合う」というトークとともに、小さなクラッカーにホットハニーを一滴。サンプル・テイスティングを積極的にアプローチしていました。
ホリデー・ポップアップショップは、メイドインニューヨークのメーカーが想像以上に多く、集客力を見込める人気メーカーの起用が、ポップアップショップのスパイスになっていたこと。限られたサイズのブースでは、ディスプレイは多種多様な品揃えより、種類を限定したほうが、混雑もまぬがれて、ブースも印象に残る、という印象を受けました。
アメリカのギフトシーズン(11月〜12月)は、一年の半分以上の売上が見込まれるといいます。ホリデー・ポップアップショップは、来訪者のニーズにあったブースを出せば、相当の売上につながり、プロモーションにも、マーケティングにも利用できる絶好のチャンス。冬のニューヨークは北海道の寒さなので、2ヶ月の出店はそれなりの覚悟がいりそうですが、出る価値は十分あると思いました。
ブライアント・パーク
BRYANT PARK
336 Flatbush Ave, Brooklyn, NY 11238
Winter Village at Bryant Park pop up shop
10月27日−1月2日
月—金11am-8pm
土日10am-8pm
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