マレーシアの精進料理をビーガン食品にアレンジ。健康志向なアメリカ人の心を掴む
「パケトラ」読者のみなさま、こんにちは。ポートランド在住の東リカです。今回は、ポートランドで肉類を一切使わない干し肉風スナックを作る「パンズ・マッシュルーム・ジャーキー(Pan’s Mushroom Jerky)」をご紹介します。
マレーシアの精進料理がルーツ
「パンズ・マッシュルーム・ジャーキー」は、2008年にマイケル・パン(Michael Pan)氏が、オレゴン州ポートランドで創設した「パンコフーズ(Panco Foods)」が製造するビーガン・ジャーキーです。パンコフーズの社員数は現在10名程度で、オンライン及びアラスカやハワイを含む全米の小売店でこのジャーキーを販売しています。
パン氏がマッシュルーム・ジャーキーのアイデアを思いついたのは、マレーシアに暮らす親戚を訪れた時のこと。親戚の家で初めて食べた手作りの甘辛いスナックが、豚肉かと思いきや実は干し椎茸でできていたと知り、これを自分の暮らす北米、そして世界に広めたいと思ったそうです。
仏教やヒンドゥー教がベジタリアンの食文化を産んだと言われるマレーシアでは、まるで肉のような植物性のスナックは比較的よくありますが、仏教徒でベジタリアンだというパン氏の親戚は、その食感と味から椎茸を選び、このレシピを代々伝えてきたそうです。
健康志向のアメリカ人向けにアレンジ
ポートランドに帰ったパン氏は、ベジタリアンだというオリジナルレシピを元にビーガン向けのマッシュルームジャーキーを開発。素材に人工甘味料、合成保存料、着色料、香料などを一切使わないことはもちろん、有機食材を選ぶことにもこだわりました。
更に、グルテンフリー、大豆フリーのパレオ食でもあります。ビタミンDや食物繊維が豊富なことも、健康志向層へのアピールポイントです。フレイバーもマレーシアで味わったオリジナルに加え、アメリカ人の味覚を考慮し、バーベキュー風味やタイ料理風味などを生み出しました。
パッケージは、オンザゴーのスナッキング文化が定着している都会の若い層にアピールするため、2.2 oz (62G; 約2食分)のスタンドアップパウチ。冷蔵保存をしなくても良いので、車内や職場はもちろん、アウトドアのお供にも活用できます。
パッケージの正面には、中身が見える大きなキノコ型の窓があり、肉に見えるけどキノコが原料だという商品の特徴を分かりやすく伝えています。
まるで肉のような満足感
早速、マッシュルーム・ジャーキーの4つのフレイバーを試食してみました。
「オリジナル(Original)」は、マレーシアに暮らすパン氏の親戚のレシピに最も近いものです。甘辛くて旨味が強く、ちょっと砂糖醤油のような風味ですが、大豆や小麦が原料に含まれる醤油は使われていません。
「アップルウッド・バーベキュー(Applewood BBQ)」は、定番の肉のジャーキーのような、少しスモーキーでニンニクやビネガーが香るもの。それほどスパイシーではなく、子供でも楽しめる風味です。
「ソルト&ペッパー(Salt & Pepper)」は、あっさりとしながら、ピリッと胡椒が効いて、なかなか刺激的です。ビールにも合いそうです。
「ゼスティ・タイ(Zesty Thai)」は、ニンニク、玉ねぎ、レモンの皮、トマト、バジル、パクチー、カイエンヌペッパーなどタイ風味のスパイスが入っていて、この中で最も複雑で奥行きのある味わいです。かなりスパイシーで、異国のストリートフードを想起させられます。
どれも肉厚で柔らかく、程よいかみごたえの食感とオイリーさ、濃いめの味付けで満足感があります。肉や魚を食べないビーガンの人だけでなく、誰でも美味しいと感じられる商品のように思いました。
商品プロモーションとして、店頭やSNSを始めとするメディアの活用はもちろん、イベントでのサンプリングも重視しているそうですが、これはきっと「食べてもらえれば、美味しくて購入したくなる」という自信の現れだと思います。
植物性食品の可能性
現在のパンズ・マッシュルーム・ジャーキーの購入者層は、ベジタリアンやビーガン層はもちろん、お肉が好きだけれども、健康のために消費量を抑えたいと考えている人だそうです。アメリカでは、若い層を中心にますます健康志向・環境志向が広がり、お肉の消費量を減らす人が増えていく見込みです。
パンコフーズは今後、更にマッシュルーム・ジャーキーの販売網を広げると共に、新たな植物性食品も開発していきたいそうです。このベジタリアンやビーガン食の潮流に乗って、肉の代用品としてマレーシアで代々食べられてきたヘルシーで美味しいキノコのレシピが、アメリカ人の心を掴む日も近いのかもしれません。
Pan’s Mushroom Jerky:https://www.mushroomjerky.com/
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