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サステイナブルな漁業とは?ポートランド発「フィッシュピープル・シーフード」の取り組み

「パケトラ」読者のみなさま、こんにちは。ポートランド在住の東リカです。今回は、ポートランドでサステイナブルな漁業を応援する水産食品メーカー「フィッシュピープル・シーフード(Fishpeople Seafood)」をご紹介します。

乱獲と輸出で衰退しそうな地元の漁業に変革を

Photo:フィッシュピープルのワイルド・アラスカン・サーモン・ジャーキー

フィッシュピープル・シーフード(以下フィッシュピープル)」は、2012年にダンカン・ベリー(Duncan Berry)氏とキップ・バラトフ(Kipp Baratoff)氏が、オレゴン州ポートランドで創設した水産物を扱う企業です。

共同創業者のベリー氏が子供の頃に漁船で繰り出したオレゴンコーストは、豊かな海の恩恵を受け、漁業の盛んな土地柄でした。けれども、ここ数十年の間に魚の乱獲や地球温暖化の影響で漁獲量は落ち込み、また捕獲した水産物の9割がアジア諸国へと輸出され、のちに商品となってアメリカに戻ってくるという状況で、大人になって戻って来た故郷の水産業は衰退の一途をたどっていました。

そんな地元の状況を改善し、「消費者の海との関係をもう一度想像する(“re-imagine consumers’ relationship to the sea.”)」ために立ち上げられた企業がフィッシュピープルです。

消費者に安心を。サステイナブル&トレーサブルな商品群

フィッシュピープルが扱う商品ラインは、天然サーモンのジャーキー、パウチ入りのRTEスープやチャウダー、魚のメインディッシュが簡単に作れるミールキットの大きく3種類です。これらの商品は全て、北米の契約漁師の手で、企業のサステナビリティ・ガイドラインに沿った「持続可能な漁業」により獲られた水産物を原料にしています。

「持続可能な漁業」とは、海洋の自然環境や水産資源を守って水産物を獲ることはもちろん、漁師や漁業コミュニティの健全な経済活動を尊重することも含まれています。

Photo:原料の水産物をトレース(追跡)できるコードが記載された商品パッケージ

漁師と企業の目に見える良好な関係が築かれているため、消費者は全ての商品に記載されたコードを使って主原料の水産物がどこで、誰が、どのように獲ったものかを辿ることができます。

また、これらの商品は、自然を尊重し、化学調味料、合成着色料、合成保存料、抗生物質、非遺伝子組換え素材は一切使用していません。水産物を含む食の安全性への関心が高まる中でも、トレーサビリティがあることで、消費者は安心してこれらの水産加工品を食べることができます。また、同時に海やアメリカの漁師コミュニティを守ることにも寄与できるというわけです。

手軽に魚を食べられるジャーキー

今回は、中でもこのブランドの「消費者に手軽に社会的貢献の機会を提供するという姿勢を最もよく示している」という「ワイルド・アラスカン・サーモン・ジャーキー(Wild Alaskan Salmon Jerky)」を試食してみます。日本では比較的多くの水産物を使ったおつまみを購入できますが、アメリカでは珍しい商品です。

選んだフレイバーは、ブランド窓口の方がおすすめしてくれた「スイート+スモーキー・オリジナル(Sweet + Smoky Original)」、「レモンゼスト+ハーブ(Lemon Zest + Herb)」、「レインボー・ペッパーコーン(Rainbow Peppercorn)」の3種類です。それぞれ60g入りで価格は$8です。

Photo:スイート+スモーキー・オリジナル・フレイバー

「スイート+スモーキー・オリジナル(Sweet + Smoky Original)」は、甘みの強いバーベキューソースのような、ビーフジャーキーの定番フレイバーを思わせます。

Photo:レモンゼスト+ハーブ・フレイバー

「レモンゼスト+ハーブ(Lemon Zest + Herb)」は、レモンの酸っぱさとハーブの香りの爽やかなフレイバー。

Photo:レインボー・ペッパーコーン・フレイバー

「レインボー・ペッパーコーン(Rainbow Peppercorn)」は、ピリッと胡椒が効いて、おつまみにもぴったりです。

どれも魚なので硬くはないですが、厚みもあり噛みごたえがあって、満足感が高いです。味が濃いので、魚がちょっと苦手、という人も無理なく食べられると思います。我が家の小学生の娘たちも喜んで食べていました。

それぞれ天然素材由来のオメガ3が900mg、タンパク質が24g含まれていて、栄養価の高さも嬉しいポイントです。また、パウチ入りなので、アウトドアや外でのスナックとしても使えそうです。

サステイナブルな漁業について考える

Photo:オフィシャルサイトのコード入力ページ( https://fishpeopleseafood.com/ より)

また、パッケージに記載されたコードを使って、サイトから原料の天然のアラスカ産サーモンをトレースしてみました。素材が同じらしく、3種類とも同じコードです。サイトで7桁のコードを入力すると、「ジャーキーパウチに入っているのは、アラスカのケナイ半島側のクック湾(Cook Inlet)で獲れた天然ケタサーモン」だと表示されました。

Photo:コードの商品の原材料がどこで獲れたものかを示すページ( https://fishpeopleseafood.com/ より)

また、そのサーモンがどのような手法で獲られどこで加工されているのか、なぜ海洋の自然環境や水産資源を守る必要があるのか、といった情報も写真やイラスト、「海のエコラベル」と呼ばれるMSC(Marine Stewardship Council・海洋管理協議会)認証ラベルとともに、分かりやすく表示されました。

また、フィッシュピープルは、環境・社会に配慮した事業活動を行っており、アカウンタビリティや透明性などの基準を満たした企業に対して与えられる「Bコーポレーション」の認証も受けています。

私たち日本人も、大好きな魚をこれ以上減らさないために、持続的な水産資源利用の推進は大きな課題だと思います。「フィッシュピープル」のような海と人との関係を改めて消費者に意識させるビジネスモデルやコミュニケーションが、参考になるかもしれません。

Fishpeople:https://fishpeopleseafood.com/

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