ドイツ生まれの密閉ガラス容器
イチゴ柄のロゴマークが愛らしい、ドイツの密閉ガラス容器メーカー、WECK(ウェック)。日本でも販売されているので、ご存じの方も多いのではないかと思います。大きさや形のバリエーションが豊富なので、小物入れなど雑貨アイテム的に使われていることもあるようです。私も自宅でシュガーポットとして愛用しています。
ウェックは、1900年にドイツで創立された、歴史のあるメーカーです。創立当初は家庭での瓶詰め加工の研究・開発を行っており、創立から90年後に安全な瓶詰めの方法を確立したのでした。ドイツでは、庭や市民農園によく果樹が植わっています。そうしたフルーツを収穫し、ジャムやコンポートを手作りして長期保存することは、ドイツの家庭で今なお一般的に行われています。そのようなシーンでウェックの密閉ガラス容器は活躍しています。
ドイツの食の基本は、パンにバターやジャムなどを塗ったもの。大量に穫れる旬の果物をジャムなどに加工して、通年食べられる状態にしておくことは、ドイツの生活環境にとてもよく合っているといえます。
ウェック容器を使って、家庭で食品を密閉して長期保存可能な状態にするためには、まずガラス容器と専用ゴムパッキンなどのパーツを鍋で煮て煮沸消毒します。煮沸した容器をよく乾燥させたら、そこに食品を入れて蓋を閉め、ゴムパッキンとステンレスクリップで固定した状態で、再び鍋に水を入れて容器ごと煮沸。これで数ヵ月〜半年程度の長期保存が可能になります。
ドイツではウェック容器があまりにも浸透したために、食品保存のために煮沸消毒することをeinwecken(アインヴェッケン)と言うようになりました。もちろんウェックから生まれた言葉です。
食品メーカーがWECK(ウェック)容器をパッケージとして活用
ウェックのガラス容器は、ゴムパッキン、ステンレスクリップなどと共に一般の店で販売されていますが、じつはその容器を食品パッケージとして使っている商品も見かけます。つまり、食品メーカーが自社のジャムやペーストを販売する場合に、普通の瓶ではなくウェックのガラス容器をパッケージとして活用しているのです。
粉や砂糖など、ケーキ用の材料がすべてウェック容器に入った、きれいな商品もあります。それぞれ色の異なる材料が層になって重なっているため、店頭プロモーションとしてのアイキャッチ効果も抜群。中身が見えるガラス容器をうまく活用したパッケージだからこそのアイディアでしょう。瓶にはレシピが付いていて、すぐにケーキを焼けます。
こうした商品はオーガニック専門スーパーや、街角で週に1〜2回開かれる市場などでよく目にします。ウェック容器でパッケージ化された商品は、ほかのものに比べて目立つように思います。また、空になった容器は家庭で再利用できるので、ちょっとお得感もあるかもしれません。もちろんガラス容器には、商品ラベルステッカーも貼れます。
販売店を通じて使用済み容器を回収
ベルリンのオーガニック専門スーパーで見つけたGUTDINGというメーカーのペーストは、顔のイラストが描かれたユニークなラベルステッカーにつられて、思わず手に取った商品です。フレーバーは全11種類あり、それぞれにキャラクターの顔と名前がつけられています。
写真のフレーバーは、sefaという名で、原料はカシューペースト、カレー、ナツメヤシの実です。そのほかのフレーバーも、すべてオーガニックでビーガン。砂糖不使用、グルテンフリーで、今のドイツのトレンドを反映しています。
GUTDINGのペーストは、すべてウェック容器を活用したパッケージです。容器に保証金は含まれていないので、中身が空になった後は家庭で空き容器を使ってもいいのですが、じつはこのメーカーは、一部のオーガニック専門スーパーと提携して、容器回収を行っています。
お客は使用済みガラス容器(パッケージ)を提携先に持っていけば、店が引き取るシステムです。近所に提携先がない場合は、宅配業者を通じて回収もしています。空き容器が24個たまれば、宅配の回収サービスを申し込むことが可能。
GUTDINGのホームページ上では、ご近所さんたちと共同で空きガラス容器を集めることを勧めています。さらに、ガラス容器を返却せずに、家庭で新たな形に再利用するアイディアもホームページ上で紹介しています。
GUTDINGとはドイツ語で「よいこと」という意味。空きガラス容器回収のためにこれだけのシステムを作っているのは、環境に対する意識の高いドイツらしい取り組みだといえると思います。
ウェックのガラス容器は、ドイツの食の環境に合っているだけでなく、商品のパッケージ容器としても活躍しています。ガラスは何度も再利用できる環境にやさしい素材。ドイツでは未だに、ジュースやビールの飲料容器にもガラス瓶の割合が高く、多くには保証金が含まれています。日本では、ガラスは重くて割れると敬遠されがちかもしれませんが、ドイツではまだまだ活躍しているパッケージ容器の一つです。
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