アメリカといえば炭酸ドリンクのイメージがありますが、2016年の米市場調査会社ビバレッジ・マーケティング社による調査では、「水」が炭酸ドリンクを抜いて飲料カテゴリーの中で販売数一位となり、年々その数は右肩上がりとなりました。ニューヨーク市も「水を健康のために飲もう!」というプロモーション活動に積極的です。
アメリカでは、健康志向の高まりから「炭酸ではなく、水を飲む」という意識が幅広い層に普及してきましたが、「健康に良いからといって水を飲むことを促進し、それに伴って増えるペットボトル容器の増加については考えなくていいのか?」と、環境問題に関心の高い集団からは声が上がっています。
というのも、アメリカでは毎年30億本ものボトルウォーターが消費され、その80%がリサイクル処理されず埋立地に放り出されていると言われているからです。そこで徐々に普及してきているのが、再生紙を代表とする再生可能資源で作られたパッケージ。今回は、ニューヨークで見つけた3社の商品を紹介します。
業界の先駆者「Boxed Water(ボックスド・ウォーター)」
2009年、Founder Benjamin Gott氏が「もっとエコフレンドリーなボトルウォーターを作れないか」と思ったことがきっかけで開発されたのが「Boxed water(ボックスド・ウォーター)」です。2009年、本社のあるミシガン州での好調な販売をきっかけに、アメリカの主要都市で展開するようになりました。
パッケージは、サステイナブルな社会に貢献することを掲げたノルウェーの企業Elopak社の素材が採用されており、若者が多い地域のスーパーマーケットやカフェで販売されています。
ボックスド・ウォーターは、環境意識の高いミレニアル層にターゲットを定め、シンプルなパッケージデザイン、ソーシャルメデイアを駆使したプロモーション、コラボレーション企業とのポップアップ開催など、認知度を高める活動に積極的です。若いオフィスワーカーが多いエリアで、夏に他社イベントの景品として本製品が配布されていたのを私も覚えています。
消費者の心を掴むプロダクトデザイン、JUST WATER(ジャスト・ウォーター)
グレンズ・フォールズというニューヨーク州の北にある水の豊かな土地で生まれた「JUST WATER(ジャスト・ウォーター)」。ニューヨーク市内(マンハッタン、ブルックリンエリア)にて最も取り扱いが多いのは、このブランドではないかと思います。販売先の種類も豊富で、カフェやホテルといった商業施設での取り扱いもあれば、健康や環境問題に関心の高い消費者をターゲットにしているエリアのスーパーでも見かけることができます。
ジャスト・ウォーターのパッケージは、紙とブラジルのサトウキビを原料として、82%の資材が植物由来で作られています。また、ホームページではその詳細が一般消費者にもわかりやすく伝えられています。
ジャスト・ウォーターのこだわりは、資材だけではありません。JUST Goods Inc社のあるグレンズ・フォールズとパートナーシップを組み、雇用の創出や、使われなくなった教会をリノベーションして施設を作るなどのコミュニティーへの還元活動も行っています。
また、100%天然水を使用して環境への負荷が最小限に抑えられる方法でパッキングを行っているのも、他社との差別化ポイントと言えます。地元愛が強く、そして健康に関心の高い顧客が重視しているポイントを抑えているからこそ、人気があるのかもしれません。
持った時の感覚がペットボトルに似ているのもポイントではないでしょうか。持ち慣れたペットボトルと変わらないため、消費者も感覚を変えることなく自然に商品をスイッチすることができます。
様々なフレーバー展開も展開するFlow(フロー)
カナダで2015年に設立されたブランド「Flow water(フロー・ウォーター)」は、家族経営のブランド。そのプロモーションからも、「ファミリー」というキーワードがもつ温かさが感じられます。
フローは、水質とパッケージ資材へのこだわりをブランドの特徴としています。アメリカでのブランド展開に伴い、製品をカナダから輸入するのではなく、カナダで販売している商品と同じPH+/-8.1の水源をアメリカで探し、そこから天然水をひいてパッキングをしているそうです。
コンテナはテトラパック社の素材が使用されていました。キャップも自然由来の素材で作られ、100%リサイクル可能とのこと。
今後も、世界的な社会課題である「健康」と「環境」に対する取り組みと、「人が使いやすいと感じるデザイン」を各社がどのように実現しようとしているのか、その動向に注目したいと思います。
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