フランスに学ぶ「脱・エコ疲れ」——最先端はオーガニックコスメのDIY!楽しむことがエコの真髄
自然派志向の追い風を受けて、フランスでも大きなムーブメントになっているビオ製品(オーガニック製品)。直接口にするものや肌につけるものにはできるだけナチュラルなものを好むフランス人は、5人にひとりがビオコスメを使用していると言われています。
パリではライフスタイルのオーガニック志向が引き続き高まっていて、ビオ専門の食品店が大流行です。同じくコスメやスキンケアも大変な人気。オーガニックの既製品はもちろん数多く立ち並んでいるのですが、最先端はついにそんなビオコスメを手作りしてしまうことだそう。
オーガニック、ビオ、エコ、手作り…といったキーワードはどこか西欧寄りのトレンドで、まだまだ敷居が高いイメージをお持ちの方も多いかと思います。実はそんなイメージを払拭し、「ビオ=家で楽しむもの」という正しい概念を教えてくれるショップがパリに存在しました。
今回はパリっ子のみならず筆者もはまってしまった、話題の手作りビオショップ「AROMA-ZONE(アロマ・ゾーン)」をご紹介します!
「AROMA-ZONE(アロマ・ゾーン)」はどんなお店?
リーズナブルな価格と豊富な品揃え、初心者にも親切なきめ細やかなサービスでオーガニック派のパリジェンヌの高い支持を得ているのが、パリ6区・オデオン駅からすぐのアロマゾーン。
2000年5月よりフランスで初めてエッセンシャルオイルをWEBで販売し、支持を集めてきました。エッセンシャルオイルはフランス国内はもちろん、マダガスカル、メキシコ、スペイン、インドと世界中の各地から提供されています。
その後フラッグシップストアが2014年2月に誕生し、手作りビオショップのニューフェイスとなったのです。現在ではフランスに全6店舗あり、毎日行列ができるほどの賑わいです。
コスメやスキンケア、洗剤にいたるまで全て手作りできてしまうので、当然ながら豊富な種類の材料が置かれています。店内で特に混雑しているのがアロマ精油のコーナー。アロマゾーンのアドバイザーは常に質問攻めにあっているのにもかかわらず、親切に相談に乗っている姿が印象的でした。
肌に触れるものは全て自分でカスタマイズ
店内に並ぶエッセンシャルオイル、洗剤、ボディーソープ、シャンプー、スキンケア、コスメなどの商品は、実に1700以上。自分で作った作品を入れる容器の種類も豊富です。
アロマゾーンの店内はいつも混雑している、との前情報は耳にしていましたが、レジまでの行列はなんと30mほど。男性のお客様も全体の4割程度でしょうか、いかにパリっ子がビオ製品に関心が高いかを見せつけられました。
どのようにしてコスメを手作りできるのか?オーガニックを材料としたアイテムを実際に二つ作ってみたので、ご紹介します!
ベーシックなオールインワンゲル
実は手作りコスメでは、作るための特別な知識や技術を必要としません。今日から誰でもチャレンジできるのです。 材料を集め「混ぜるだけ」と、いたって原始的な方法です。
まず、こちらのアロエベラゲルは、天然のゲル化剤(キサンタンガム)を添加。防腐剤も天然のものを使用しています。アロエ自体の収穫はすべて手作業で行われ、そしてアロエの葉は収穫後数時間以内に処理されているそう。
またこのアロエベラゲルは、フランスのトゥールーズを本部とする世界最大規模のオーガニック(有機)認証機関であるエコサートから認定を受けています。
エコサートのオーガニックコスメの認証基準は大変厳しく、オーガニック原料は、 土づくりから管理される厳しい基準をクリアしたオーガニック認証原料でなくてはならないほか、 製造工程や容器においても、リサイクルや地球環境への配慮等、細部に至るまで厳しくチェックされ、 認定後も一年に一度の年次検査もおこなわれています。
名実ともにアロマゾーンの看板商品と言えます。
昆布エキスが配合された「Algo'boost Jeunesse(アルゴブースト・ジュネス)」は、コラーゲンの合成を促進するアンチエイジング活性剤として用いられています。
万が一口に入ったとしても有害ではないのですが、防腐剤が入ってない化粧品は菌が繁殖する、というリスクがあります。手作り系のコスメはその点が心配です。このように天然であれ、害のない防腐剤であれば入っているほうが安全と考えます。
使用期限は半年との記載がありました。ベースとなるアロエベラゲルの容量は250mlです。平均的に50mlのサイズのゲルが、朝晩の使用で約一か月半もつことを考えると、5ヶ月間は繰り返し使用できます。
総額は23.55ユーロ(約2586円)なので、5ヶ月分で割るとひと月の金額はたったの4.71ユーロ(517円)。消耗品とも言えるスキンケアアイテムが高額では長続きしないので、このようにリーズナブルな点がメリットでもあります。
容器はガラス製を選びました。アロマゾーンではガラス容器の種類が豊富で、筆者が選んだものも100%リサイクル可能です。ガラスは、空気による酸化や成分が吸着されるおそれがないため、 製剤の安定性が保ちやすいという特徴があります。
いささか手作り感は否めない見た目ですが、ヴィジュアルの良さよりも自分で選んで作り上げたという達成感が嬉しく、大切に使用したくなります。使用感も申し分なく、洗顔後はこれ一つで済んでしまう手軽さで、満足度の高い仕上がりとなりました。
ネイルもDIYできるという事実
「スキンケアは手作りで」という概念は一部で既に広まっていますが、アロマゾーンはさらに徹底したコスメ作りを提案しています。なんと、ネイルも自家製で作れてしまうのです。
ネイルを作れてしまうことには大変驚きましたが、よく考えると既製品のネイルは謎に包まれています。どこで生産されて、どんな工程を経て商品化しているのか。軽い気持ちで買った既製品がゼロウェイスト活動の妨げになっていないか。
フランス在住が長くなるにつれて、エコフレンドリー意識が高まった筆者は、ネイルも自家製で作ってみることにしました。
アロマゾーンのもう一つの看板商品がこのネイルベース液です。天然由来の85%のビオソースをベースにしたこの製品は、染料を追加するだけで手作りのネイルを簡単に作成できます。
「10 Free」と呼ばれ、従来のネイル液で使用されている物議を醸すような有害成分10個(トルエン、フタレート、ホルムアルデヒド、ニッケル等)が調合されていません。さらにフランス国内生産でまかなっています。
この商品の長所は、単体で使うとベースコートにもトップコートにも使用可能なところです。3イン1の役割を果たしていて、一つのネイルを作成するのに平均して2ユーロ(約260円)未満と最小コストに抑えられます。
紫のパウダーは染料で、黒スグリの実のアントシアニン色素からなります。水とエタノール(植物性アルコール)の混合物で抽出し、クエン酸を添加して変性澱粉体となっているそうです。
まず、ネイルを自分で作れる、というワクワク感が一番の長所でした。オールインワンゲル同様、クオリティは既製品のものと変わらず全く不満はありませんでした。出どころがはっきりとしているので、環境問題の妨げになっているのではないか?と罪悪感を感じることもなく安心して作れました。
美容トレンドの究極の形ともいえる、手作りビオコスメのメリット・デメリット
一般的に市販されているスキンケアや皮膚科医推薦の薬用化粧品は、実際に肌でテストされて、一定の品質管理基準をクリアしているので、もちろん手作りビオコスメが全ての部分において優っているとは言えません。
手作りビオコスメは、肌の調子が安定している方が使用する分には問題なく、環境保護目的や経済的な面でメリットがいくつもあります。以下、手作りコスメのメリット・デメリットを上げてみました。
<メリット>
①どこでどのように作られたか、何が入っているか全て自分で管理できる。
②自分の肌に合ったものを好きな材料で作ることができる。
③生産中止の目に合う心配がない。
④長く使い続けるのなら間違いなくお金が節約できる。
⑤作る過程が楽しめる。
<デメリット>
①思ったようなものができず失敗することもある。
②保管の仕方も大切。容器の消毒、殺菌などが必要になる。そのためアイテムの貸し借りは極力避けたほうが良い。
③自己責任はつきもの。
メリット⑤の「作る過程が楽しめる」ことが最大の魅力ではないかと考えます。そもそも楽しくなければ、ビオコスメもエコフレンドリーも浸透せず、長続きしないでしょう。さらに生産者側やジャーナリストたちの一方的なエコ理念の押しつけが続けば、「エコ疲れ」を起こしてしまうかもしれません。
まずは画像で見るより、記事を読むより、自分と相性が合いそうな何かしらのエコフレンドリー活動を見出すことが先決だと感じました。相性が合えばおのずと「楽しい」と感じるはずなので、楽しければ繰り返し実行されます。実際に筆者も「次は何を作ろうかな?」と考えてしまっているほどです。
そしてこの継続性こそが一番のエコフレンドリーに繋がるのではないかと思います。「AROMA-ZONE(アロマ・ゾーン)」は製品だけでなく「ビオ=家で楽しむもの」という意識を提供したことで受け入れられたのでしょう。
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