今回は、2020年3月1日よりニューヨーク州から使い捨てのビニール製ショッピングバッグが消えた話をご紹介します。
「愛嬌のある存在」
これまでニューヨーク州の住民は、毎年約230億枚の使い捨てビニール袋を使用していました。230億枚!この数字にはびっくりです。
廃止の理由は今更ですが、昨今のゴミ問題、環境汚染の深刻な増長。とうとう州議会は、デリやスーパーマーケット、その他ショップで頻繁に配られる使い捨てのビニール袋を、州全体で禁止に踏み切ったというわけです。
多くの人は、環境問題の解決の第一歩としてこの結果を推奨しましたが、反面、この新法律が日常生活にどのように影響するかを心配する声もありました。
ニューヨークタイムズ紙は「ニューヨーカーの中には、この使い捨てビニール袋を家庭でゴミ袋にしてお金を節約したり、工夫を凝らして再利用したりしている人が多かった」「ニューヨークライフのトレードマーク的な愛嬌のある存在だった」と、皮肉とセンチメンタルな内容で記事にしたほど、惜しまれながらの終了でした。
ユニークな再利用のアイデアも街のあちこちで見られ、愛嬌のある存在でもありました。上の写真にある自転車のハンドルカバーは、私もよく見かけました。
#BYOBagNY (自分のバッグを持参しよう)
この新しい法律の施行前には「#BYOBagNY(Bring Your Own Bag New York=自分のバッグを持参しよう)」というハッシュタグを使ってSNSでキャンペーンをしたり、マーケットでエコバッグを配ったり、ローカルテレビで紹介したり、店舗では早くから施行日などの告知表示が行われました。
長年使い慣れてきたビニール製に代わり、買い物時にはエコバッグを持参するよう、幅広い年齢層に向けて呼びかけられたのです。
3月1日、ニューヨークから使い捨てビニール袋が消えた
法律が施行された日より、店頭から使い捨てビニール袋は本当に消えました。もし使っているのが見つかると、最初の違反で250ドル、繰り返すと500ドルの罰金というペナルティが効いたようです。ただしレストランやデリのテイクアウトやデリバリーには、暫くの間は使用が可能だそうです。この緩やかな変化も、パニックにならない利点なのかもしれません。
BAN(禁止)の初日に、私はブティックで洋服を買いました。会計の際、店員から「バッグは必要ですか?」と聞かれ「いりません」と答えると、軽くたたんでそのまま渡され、それを自分のバッグの中に入れました。薄紙に包むことはリクエストできるようです。
スーパーマーケットでも会計の際に「バッグはいる?」と聞かれます。エコバッグを持っていない場合は5セントで紙袋に入れてくれますが、今ではエコバッグ持参の人のほうが多いです。
私が会員になっているコープでは、もともと持参したエコバッグか、店頭販売用の食品が入っていたユーズド段ボール箱に購入品を入れて持ち帰っていたので、コアな会員にとってはこの新法律は他人事のようです。
しかし、使い捨てビニール袋廃止のムーブメントを機に、今度は透明のビニール袋(ばら売り用に売り場にロールで設置してある袋)の利用を減らそうと、布製の紐付き袋の販売が始まり、それに野菜やお米などを入れて買い物カゴへ、という新しいムーブメントが生まれています。
今後は地球に優しい素材で作られた、冷蔵庫用やスナック用の保存袋が増えていくでしょう。今もありますが、まだ少し高価なので、低価格なものが出てきたら大ヒット間違いなしです。
使い捨てビニール袋のルールを設けた州は?
最後に、各州が使い捨てビニール袋にどのようなルールを設けているのか記しておきます。
■カリフォルニア州:2014年8月に使い捨てビニール袋を禁止。法律を制定した最初の州。
■オレゴン州:2020年2月に禁止を実施。
■ ハワイ州:すべての郡が使い捨てビニール袋を禁止。
■ コネチカット州:2020年8月に使い捨てビニール袋に10セントを請求開始。
■ ニュージャージー州:いくつかの町は使い捨てのビニール袋を制限。州全体の禁止はまだ議会を通過していない。
2014年8月に初めて法律を制定したカリフォルニア州から始まり、現在はニューヨーク州、カリフォルニア州、オレゴン州、ハワイ州、コネチカット州、デラウェア州、メイン州、バーモント州、計8つの州が、使い捨てのビニール袋を禁止しています。アメリカは、全部で50州あるので、まだまだ新しい法律と言えます。
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