コンカフェとは?
ベトナムに「Cộng Cà Phê(コンカフェ)」という有名なチェーンサプライがあるのをご存知でしょうか。日本でコンカフェというと、昨今大流行している「コンセプト」カフェを思い浮かべる人も多いでしょう。
ベトナムのコンカフェ の「コン」は「共に」という意味で、ベトナム南北が統一される以前の古い時代をコンセプトにしているカフェです。ベトナムは社会主義共和国なので「共に」という言葉はとても大きな意味を持っているのです。2007年にスタートしたこのカフェチェーンは、このような思い切ったコンセプトを掲げながら全国で60店舗以上、海外でも韓国やマレーシアなど12店舗で展開を拡げているのが興味深いです。
原色使いが映える薄暗い店内
カフェ内は赤とグリーンで統一感があります。薄いモスグリーン色のレトロ感漂う店内に、同色のユニフォームを着たスタッフたち。ひときわ目を惹くのは鮮やかな赤色の伝統柄クッションです。本棚にはレーニンの書籍など共産主義に関する本が並んでいることも。
このクッションの柄はベトナム旧市街などで非常によく見られる国民的なもので、そのパターンの中にはバラの花や孔雀など、古き時代に愛されていたハノイの象徴的なモチーフが使用されています。
壊れた時計や羽根の折れた扇風機などアンティークを多く使用し、全体的に薄暗く古びた雰囲気が漂っており、さながら軍隊の隠れ家、束の間の癒しの場所に迷い込んだような趣があります。
ベトナムの名産品であるホーローを使用した食器も、店内のあちこちで見られます。こちらはマグカップをナプキン入れにしていて、可愛い雰囲気ですね。
トイレも特徴的で、現代的ではない、上下が空洞になった木戸を使用しています。トイレ内の棚は観音開きで木の板のロック。
最近のベトナムの若者たちはSNSが発達しているなどの事情から非常にファッションに敏感なイメージがありますが、このようなレトロで非日常感あふれる内装にほっとするのかもしれません。
壁にはプロパガンダアートや兵隊たちの写真がそこかしこに飾られているのも興味深いです。
バッファローとともに暮らす民族の写真も。
ベトナムではバッファローが非常に身近な動物で、食用にしたり、角をアクセサリーやスプーン、フォークに加工したりします。
他の国ではみられない珍しいドリンクばかり
メニューは安価で、ココナッツミルクとベトナムコーヒーを掛け合わせたココナッツコーヒーが看板メニュー。ベトナムはカフェ大国としても有名ですが、それを牽引しているのは独自の発展を遂げるコーヒー文化です。強い苦味と香ばしさが特徴的なロブスタ種というコーヒー豆が有名なのですが、そのままだと苦くて飲みにくいのです。
フルーツジュースもおしゃれな容器に入っていて、特別感があります。
コンカフェは他店よりもベトナム色の強い飲み物を豊富に取り揃えているように思います。価格は35K~65K(約200円~350円)でリーズナブルです。タピオカトッピングやマウンテンティゼリーは全ての飲み物に可能。紅茶にはさりげなく小豆が乗っていたり、しっかりベトナムらしいおしゃれ感が演出されています。
ココナッツコーヒーには、ベトナムの国旗にも使用されている五芒星があしらわれていて、ここにも社会主義国ならではの愛国心が垣間見えます。
フードのサイドメニューも充実しています。コンデンスミルクをつけて食べるクロワッサンや、唐辛子ペーストを添えたインスタント麺などもメニューにあります。クロワッサンはフランス統治時代の名残なのか、ハノイのカフェメニューとしてよく見られます。
ベトナム人が日常的に口にする向日葵のタネももちろん揃えています。ひまわりの種を皮ごと口に入れて、口で皮を器用に破り、足元に捨てる昔からの風習がコンカフェでよく見られます。外の席の地面がひまわりの種の皮だらけになっている光景はどこか懐かしさが感じられるでしょう。
お洒落すぎるグッズ展開。︎スタッフのユニフォームも購入可能!
店員が着用しているユニフォームは、ベトナム戦争時に北ベトナム軍が着ていた軍服をイメージしています。どこかストイックな匂いの感じられるアーミースタイルは外国人にも人気です。
各店舗の片隅ではグッズ展開も行なっています。
コンセプトカラーの緑と赤を多用してどこか軍隊調が漂い、ここでしか手に入らないものなので、お土産に買っていく観光客も後を絶ちません。
エコバッグはベトナムでも非常にポピュラーで色々なメーカーが出していますが、コンカフェの商品はコンセプトカラーがおしゃれです。ベトナム中部の観光都市ダナンのロゴが入っています。
こちらはベトナムの旗をモチーフにしたワンポイントが入っている軍隊を思わせるTシャツと野球帽。スタッフの制服にもなっています。
防弾チョッキのようなベストもあります。
これもミリタリーキャンプで使われていてもおかしくなさそうなマグカップと水筒です。日常生活にも馴染みそうなさりげないものです。
こちらはコーヒー豆やココナッツコーヒーです。お土産に喜ばれそうな、ローカル感あふれる包みになっています。
一人の女性がハノイで始めたコンカフェの物語
コンカフェはTrieu Viet Vuong Streetに2007年、オーナーのLinh Dungによりオープンしました。その店内の装飾家具などはすべて彼女の幼少期、国家から補助金や支給家具が出ていた時代の思い出を基に丁寧に作っていったと言います。小さい時に馴染みのあった台所や居間の片隅、町の工場、お仕立屋さん、修理屋さん、新聞販売店など・・・小さな記憶の断片を織り上げるようにして店内のイメージはできていきました。そしてそこに当たり前のように追加されたのは、これも当時日常的で身近だった軍隊の記憶です。
すべての︎ベトナム人に染み渡っている強い愛国心
ベトナムのハノイで暮らし、地元の人々と接していると、ベトナム国民としての誇り、愛国心を感じることが多くあります。決して自国を卑下することなく、どんな時も良い面を口にする姿勢は年配の人々だけではなく、若者からも感じられます。
国を愛し、家族を愛し、団結して未来を豊かなものにしようという国を掲げてのモットーは人々の潜在意識にまで浸透しているように感じます。
そこには祝日には各家庭が家の外にベトナムの国旗を掲げることが義務付けられているなど制度的な面や、社会主義国としての情報統制が現在もある程度行われており、子供達に対して真摯に行われている愛国心、誇りを育てる教育制度にも由来しています。
戦争というキーワードは殺戮などの残虐性を想いえがきやすく、多くの国では悲惨なイメージが付いてまわりますね。ただベトナム人にとっては、そのようなネガティブなイメージとともに、愛国心を元にアメリカ兵と戦い、ついに勝つことができたという民族団結により平和を勝ち得た記憶というポジティブな面があるのです。
家族を守り平和を導いたという意味では、戦争は民族を団結させた大きな機会といえるでしょう。
そのような背景を持ってベトナムで育ち、日々コミュニティの中で生活をしているなかで、コンカフェのようなコンセプトを大きく掲げたサービスが人々に愛を持って受け入れられ支持されているのは納得しやすいかもしれません。
カフェでひしめき合っているベトナムという激戦区で、超人気店になっているのもうなずけるでしょう。
ここではベトナムの個性的なドリンクやフードを一度に楽しみながら、同時にベトナムという国家に生まれ住んでいる国民の歴史や生活習慣、一層ずつ積み上げて来た文化の重みを感じることができます。来越の際にはぜひ訪れてみたらいかがでしょうか。
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