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ここは自販機ワンダーランド?無人で売られる意外なモノ

日本に住んでいた頃は自販機が街中の至る所にあり、さほど特別な存在だとは思いませんでした。しかし、イリノイに引っ越してからというもの、ほとんど自販機を見かけることがなくなりました。とはいえ、それで特に困ることもないのです。こちらでの生活は車移動中心で、歩いている途中で突然喉が渇いてちょっと買って喉を潤したいといった状況はあまりないからです。

自販機が少ない理由の一つは、治安の違いにあるのかもしれません。普段、自販機を見かけるのは、駅や空港、映画館、ショッピングモールといった、人の目が行き届いている場所だけだからです。ここはひと気のない路地裏にも自販機がある日本との大きな違いですね。

さて、そのあまり見かけない自販機ですが、自販機自体に希少性があるからか、売っている物は意外とバラエティ豊かです。

ポップコーンスタンドとなった自販機

シカゴの誇るグルメといえば、ピザやホットドッグが有名ですが、ポップコーンもその一角を担っています。日本でも人気のシカゴ発祥老舗ポップコーンブランド、『Garrette(ギャレット)』は75年の歴史を誇りますが、同じくシカゴ設立45年の『Nuts on Clark(ナッツオンクラーク)』も定番の存在です。

シカゴの空港や駅には、このブランドの出来立てポップコーンが楽しめる専用自販機(画像1)が設置されています。

出来立てポップコーンが楽しめる専用自販機

画像1

味は2種類。中央の取り出し口から紙袋を取り出し、好きな味を選べる仕組みです(画像2)

味は選べる2種類

画像2

「こんな場所でポップコーン?」と思うかもしれませんが、シカゴの人々のポップコーンへの愛は深く、中には「全ての駅に設置すべきだ!」と言う人もいるほどです。

カップケーキでは世界初

カリフォルニアのビバリーヒルズで誕生し、世界初のカップケーキ専門店と言われる『Sprinkles(スプリンクルズ)』は、世界初のカップケーキ自販機も展開しています(画像3)。

カップケーキの自動販売機

画像3

この自販機の特徴は、なんと毎日焼きたてを提供していること。

ブランドのビジュアルイメージを反映した専用自販機のデザインは、とても可愛らしく、通りすがりにも目を引くものとなっています。こちらも駅や空港などに設置されているのですが、移動中にこんなお菓子が目に止まれば、訪問先へのちょっとしたお土産にもいいかなと思い付いたりするでしょう。

カップケーキ自体のデザインもユニークでおしゃれですよね(画像4)。

パッケージとの連動性が生きています。

パッケージもポップ

画像4

空の旅に退屈しそうなお子さんに

セキュリティが厳しい空港という施設は、治安が最高に良い状況とも言えるわけで、様々な自動販売機が設置されており、シカゴ空港内にはおもちゃの自動販売機もあります(画像5)。

おもちゃの自動販売機

画像5

タッチパネルを使っておもちゃのカテゴリを選び、購入するスタイルです(画像6)。

タッチパネル

画像6

見ての通り、ここで販売されているおもちゃは単なるぬいぐるみやミニチュアなんかではなく、かなり本格的なもの(画像7)。パーツが多い組み立て式のおもちゃや、組み合わせに工夫できるものなど、子どもたちも長時間飽きずに遊べるようなものです。

本格的な組み立て式おもちゃ

画像7

これから長い空の旅に出かけるという時、親にとっては子どもたちが退屈でぐずり出さないかは気がかりなもの。飛行機に乗る前に、ちょっとしたエンターテインメントを手に入れることができるのは嬉しい存在なのではないでしょうか。

コスメトラック?トラベル用ミニコスメ

移動販売車を模したデザイン(画像8)で、私もつい思わず立ち止まってしまいました。

移動販売車風の自動販売機

画像8

こちらもタッチパネル(画像9)を使って商品を選び、欲しいものを購入します。この自販機も空港内に設置されており、旅行に便利なミニサイズの化粧品が豊富に揃っています。

タッチパネルで化粧品を選ぶ

画像9

荷物を軽くするために化粧品を減らしてきた人や、そのためにおしゃれを我慢していた人も、荷物を預け入れて入国審査を終えた後のこのタイミングなら、身軽になったからとついつい気軽に買ってしまいそう。この場にあったいい戦略だと思います。

サブスク全盛期に生き残るレンタルDVD自販機

NetflixやSpotifyなどのサブスクリプションサービスが普及し、タワーレコードの実店舗もなくなってしまったアメリカ。しかし、レンタルDVDは自動販売機の形となって今も健在です。

このレンタルDVD自販機(画像10)、かなり年季の入った外観ではあるものの、最新作がしっかりと入荷されており、ドラッグストアやスーパーの入り口でよく見かけます。映画やゲームをパネルで選び、レンタル料金を支払うとディスクが出てくる仕組みで、返却も同じ自販機で行います。さらに、購入も可能で、ネットで予約することもできます。

レンタルDVDの自動販売機

画像10

サブスクサービスに加入するほど頻繁に映画を観るわけではないが、時々最新作をチェックしたい、という人々にとってはこのレンタルDVD自販機は便利な存在ではないでしょうか。

テイスティングも無人で

こちらはイリノイではなく、オハイオ州クリーブランドの高級スーパーです。

このスーパーの2階は、ワインを中心としたお酒コーナーになっており、その一角にワインのテイスティング用自販機とテーブルが設置されています(画像11)。

お客さんは1階のお惣菜コーナーでおつまみを買い、2階で自由にワインをテイスティングして、気に入ったらボトルを購入するシステムです。私が訪れたときも、仕事帰りの大人たちが友人と、あるいは一人で思い思いにワインを楽しんでいました。

ワインのテイスティング

画像11

テイスティングの方法はシンプルです。クレジットカードを挿入し、ぶら下がったワイングラスを取り、好きなだけのサイズのボタンを押してワインを注ぐと、その分の料金が引き落とされて、カードが戻ってくるという仕組みです(画像12)。

ワイングラスが棚に置いてある様子

画像12

フロアはかなり広いですが、対応するスタッフはおらず、ほぼ無人状態。それでも高級スーパーということもあってか、マナーが良いお客さんたちが皆スマートに楽しんでいました。こういう雰囲気が保てるなら、人件費を抑えながらお酒の自由な楽しみ方を提供できる良いアイデアだと思います。

お買い物のついでに運試し

フィラデルフィア州ピッツバーグのドラッグストアで見かけた自動販売機(画像13)です。売っているのはスクラッチくじ。アメリカ全土でどうなのかはわかりませんが、私の知る限り、アメリカの人たちはくじが大好きなようです。

スクラッチくじの自動販売機

画像13

ドラッグストアや駅のキオスク、空港などの公共スペースでは、こうした自動販売機が設置されています。コーヒーなどを買うついでなんかに、気軽にスクラッチくじを数枚買う人をよく見かけます。

使い方は簡単です。お金を投入し、1枚数ドルのくじを好きなだけ選んで購入します。人気があるのは、やはり高額当選が狙えるくじでしょう。この自販機のパネルには、賞金として2.5ミリオンと書いてありますから、かなり夢がありますね。

私はシステムをよく知らないので買ったことはありませんが、立ち止まってくじを選ぶ人々を見ていると、射倖心が煽られるのもわかります。普段から大きな夢を見るのが、アメリカの文化の一部なのかもしれませんね。

シカゴ発祥、エコな自販機

最後に、イリノイの誇るエコな自販機『Farmar’s Fridge(ファーマーズフリッジ)』をご紹介させてください(画像14)。こちらはジャーに入ったサラダを販売する自販機で、シカゴから始まったビジネスです。自販機のロゴデザインもユニークで、右側の上部にある看板には、フォークのマークがあしらわれていますが、よく見ると「Farmar’s Fridge」の頭文字FFが隠されています。

サラダの自動販売機

画像14

毎朝、セントラルキッチンで作られた新鮮なサラダが各地の自販機に補充され、売れ残ったものはその場で回収してフードバンクに寄贈される仕組みです。これは、街で働く人たちがファーストフードやシリアルバーでランチを済ませるのではなく、健康的に栄養を摂れるようにと考えられたものです。

ビーガンや健康志向の人々が増えていることもあり、この自販機は大成功を収め、現在では全米に広がりつつあります。社会貢献にも力を入れており、1食分購入すると、1食分が寄付されるキャンペーンなども行われています。

さらに、パッケージに使われたジャーは、自販機の回収ボックスに入れてリサイクルするよう設計されており、環境への配慮もなされています。ついサステナブルな設計に目が行きがちですが、肝心なサラダの内容もシェフが考案したバラエティ豊かなメニューで、美味しさも折り紙付きです。

シカゴ発のサラダ自販機は、ビジネスパーソンにおしゃれで健康的な食事を提供しつつ、社会貢献と環境保護にも取り組む、まさにシカゴらしい現代のビジネスモデルの象徴となっています。

最後に

アメリカの自販機は、人目につく場所や状況でしか機械を設置しにくいという制約はあるものの、その分、特定のシチュエーションでのニーズに合わせて商品展開して、逆に強みにしているのが面白いです。ケーキやおもちゃなど自販機にはおよそ向かないと思うような商品も状況と組み合わせれば意外と実用的で、考え方次第では非常に効率的なビジネスと言えるでしょう。

 

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