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ニューヨークで注目の見本市「SHOPPE OBJECT」から学ぶ、小さなブースを生かしたプロモーションのアイデア

ニューヨークでは、一年を通して、ファッション、インテリア、レストランウエアなど、様々なジャンルの見本市や展示会が開催されています。ライフスタイル / 生活雑貨 / ギフト製品のジャンルでは、長年、ギフトショー(現名はNY NOW)がその市場を独占してきました。

NY NOWは、年に二回、ニューヨークの中でも最も大きなイベント会場であるジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターで行われ、1日では到底見切れないバイヤー泣かせの大見本市なのですが、その独占市場を揺るがすかのように、新しい見本市「SHOPPE OBJECT ショップオブジェクト」が昨年からスタートして、かなり注目されています。

Photo:SHOPPE OBJECTの会場は、今回からLower East SideにあるPeir36になり、入り口に列ができるほどの人気ぶりです。

Photo:“We’re so glad you made it!( よくここまで来てくれました!)”というキュートなメッセージに、思わず笑みがこぼれる受付の風景。というのも、最寄り駅から徒歩だと12分くらいかかるのです。

SHOPPE OBJECTは、NY NOWに長年出展していたAesthetic Movement(エスセティック・ムーブメント)https://www.aestheticmovement.com が主催者となって、2018年8月、120社の規模からスタートしました。

2019年の2月に開催した冬の見本市には、230社に出展規模が倍増し、8月の夏の見本市は、460社規模での開催になりました。たった3回でこの規模になるというのは、様々なサクセスストーリーがハプニングするニューヨークにおいても、前代未聞の出来事です。

SHOPPE OBJECTの出展者の多くは、NY NOWの中でもデザイン性が高く、旬のテイストの製品を扱うメーカーを集めたグループ「ACCENT ON DESIGN」から移行してきました。日本のJETROも、NY NOWからこちらへJAPAN SHOWCASE(JETROが毎年取りまとめて出展している日本のブース。今回は20社が参加。)を移行しました。

(英語サイト:SHOPPE OBJECT 2019 SUMMER - SHOWCASE: JAPAN)
https://www.jetro.go.jp/en/events/shoppe_object2019/

Photo:白で統一された会場内の様子。主催者側のデザイナーが、各ブースの壁の色は白、ロゴは黒に統一、を指定したそうです。

Photo:入口付近のブースの風景

Photo:いくつかのメーカーをまとめて展示していたブース。壁には出展者名とロゴ、その右に扱っているメーカー名が並ぶ。

Photo:陶器のメーカーMUDのブース。テーマカラーを4色に抑え、ライトとカラーチップを天井から紐でたくさん吊るすディスプレイは洗練された印象で、遠くからでもとても目立っていました。

Aesthetic Movementの担当者に新しい見本市をはじめた理由を聞いたところ、ここ数年、NY NOWのマンネリ化が著しく、高い出展料を考えれば自分たちで新しい見本市をやってみる時期にきたのかもしれない、と思ったのが事の発端だったと話してくれました。

自分たちの出展経験を元に、出展者に対しては、出展料の見直し=低コスト、搬入出をシンプルにして出展のストレスを軽減しました。バイヤーに対しても、出展者の選考を厳しくして、出展者数を抑えることでバイヤーの無駄足を省き、それによって、どのブースも内容を充実させました。見て回るだけでも旬の情報が得られます。また、足の疲れを癒すコーナーをゆったり設けるなどの気配りもあり、それらすべてが、バイヤーがこの見本市に来て良かったと思う大きなポイントになっています。

私も3回とも見に行きましたが、「ハッピーなオーラを感じる洗練された見本市」というのがSHOPPE OBJECTの印象です。ハッピーオーラの根源は「出展者もハッピー、バイヤーもハッピー」であること。今回も、初回より4倍に規模は大きくなりましたが、ハッピーオーラはそのままで気持ち良く会場を歩くことができました。

Photo:入り口で渡される入館バッチやノベルティのボールペン、フロアマップなど。前もってネットでレジストしますが、バイヤーの証はこの小さなバッチのみ。バイヤーの詳細が見てすぐわからない分、対話が生まれるという発想だそうです。

Photo:会場の中央には誰もが休憩できるソファのコーナーが。クッションは、近くに出展しているメーカーの製品のサンプル。使い心地が試せるいいアイデアです。

Photo:ふたつのブースを正面から撮ってみました。

Photo:小さなショップのコーナーのような品揃えとディスプレイ。世界観がわかります。

SHOPPE OBJECTは、主催者、出展者、バイヤーそれぞれの立場で、今までの反省点をチェックリストに書き出して、ひとつずつ改善案を出していった、そんな印象があります。大きなイベントで、これはとても画期的なことだと思います。大型で全てをそこに集約する形式より、中型でテイストにまとまりがあり、バイヤーは見やすく、歩きやすい。出展者もコストが削減できる。主催者も管理がしやすい。SHOPPE OBJECTは、新しい感覚の見本市のモデルケースでもあるのだなと感じました。

SHOPPE OBJECT出展社のブースから学ぶ、プロモーションやディスプレイのアイデア

ショー全体のストーリーをご紹介してきましたが、次は、気になったブースをピックアップして、それぞれのディスプレイの魅力をご紹介したいと思います。

SHOPPE OBJECTの会場を歩きながら、小さいブースが多く、新しいメーカーにも出展のチャンスを与えるという試みが感じられました。

Photo:壁面はホワイト、ロゴをブラックで統一した会場風景。それによって、会場に統一感が生まれていました。

ブースが小さい分、見せられる製品の数にも制限が出てきます。限られたスペースでは、いかに印象的なディスプレイをするかがキーのようです。

Photo:革小物のメーカー「OAD」

壁面にカラーグラデーションを作りながら等間隔でお財布のみを並べていました。デザインの違いがわかりやすく、手に取りやすかったです。

https://www.oadnewyork.com

Photo:ナイロン製のバッグやポーチのメーカー「PETERS MOUNTAIN WORKS / WAWAZ」

透明のビニール製のポケットラックにカラフルなお財布を入れて、壁面いっぱいにディスプレイ。かなりインパクトがありました。

https://www.petersmountainworks.us

Photo:フェルト製品の「Graf Lantz」

パズルのようにコースターが収まる木製のオリジナル什器で、見た目もすっきりと。小さな製品を大きく見せるいいアイデアです。

https://graf-lantz.com

Photo:サスティナブルな物作りをモットーに、折り紙からヒントを得て廃棄物ゼロで製造したという、様々な用途のエコバッグのメーカー「aplat」

壁のトップにイメージ写真を掲げ、木製の棒をフックにして壁に製品を掛けるというディスプレイ。ナチュラルでシンプルな印象が製品のブランディングとマッチしているとともに、これは撤収も早そう!と思いました。

https://aplat.com

Photo:スリップウエアの陶器を製作する「MORGAN LEVINE Ceramics」

柄物のお皿をオーガニックな感覚で壁に貼り、テーブルの上にサイズ違いの作品を並べていました。特筆すべき什器は使っていませんが、ロゴの文字サイズと周りに配したお皿が、フレームのような効果を作り、目を引きました。

https://www.morganlevineceramics.com

Photo:大きなロゴが印象的だったデザインラボの「LATERAL OBJECTS」

オリジナルデザインのタオルやグラスを出展。ここまでロゴを大きく使っていたところはなく、製品よりもロゴの方が印象に残りました。名前のプロモーションには大成功だったと思います。

https://www.lateralobjects.com

Photo:イエローの紅茶缶がシグニチャーのブルックリンのティーメーカー「Bellocq Tea Atelier」

その色ですぐに認識されるほど、ブランディングに成功しているメーカーです。

https://www.bellocqtea.com

Photo:カリフォルニア・メイドのマスタードメーカー「WILDER CONDIMENTS」

オーナーがサーファーということもあり、海を意識したディスプレイ。マスタードの瓶を人形の様に、ミニチュアの椅子に座らせるアイデア(台はアイスボックス)が、とてもキュートなプロモーションだと思いました。

http://wildercondiments.com/

Photo:ラストは、ロサンゼルスから出展していた「BOY SMELLS」

写真のふたりがオーナーで、2018年にデビューしました。サスティナブルでオーガニックな香りのキャンドルと、着心地にこだわったユニセックスの下着が製品で、ロマンチック&セクシーな雰囲気のオールドファッションピンクがトレードマーク。ニュートレンドのブランディング、マーケティング、プロモーションに、注目が集まっていました。

https://boysmells.com

壁面は大きなキャンパス

SHOPPE OBJECTを見終えて、小さなブースは、決してマイナスな印象ではないなと感じました。使い方によっては、大きなブースよりインパクトのある見せ方ができるものだなと。たとえいろんなアイテムがあっても、思い切って種類を絞り、アイキャッチなディスプレイをする。壁面を大きなキャンパスと考えて有効に使えば、バイヤーは吸い寄せられるものだなと(私も吸い寄せられました)。

会期前、出展社の中には壁の色が選べないことを不満に思うところもあったようですが、ひとブースごとにバラバラな世界観を出すことを認可しなかったSHOPPE OBJECT。フタを開けてみると、全体的に調和感があり、見やすく、見本市が苦手な(とにかくたくさん歩くという過去のトラウマがある)私でさえまた来たいなと思うほど、過去出かけた見本市とは、内容も、心地よさも、Welcomeな雰囲気も、雲泥の差を感じました。

SHOPPE OBJECT
https://shoppeobject.com

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