ブルックリンの老舗ショップ「サハディーズ」の新店舗オープンから見る、趣向を変えても愛される店づくり
ハロウィーン、感謝祭と、秋のイベントが囁かれる初秋のニューヨークから、今回はブルックリンの老舗、中近東系の食材店「SAHADI’S (サハディーズ)」が、晩夏にオープンしたばかりの新店舗をご紹介します。
サハディーズの2号店がオープンしたのは、ブルックリンのサンセットパークにある巨大複合施設「INDUSTRY CITY(インダストリーシティ)」。元倉庫の古いレンガビルを再開発して、クリエイターや製造業に低家賃で提供することで起業をサポートする傍ら、フードホールやイベントスペース、ショップを充実させて、市民や旅行者が楽しめるスポットとしても注目されています。1年前にはジャパンヴィレッジ(日系スーパーと和食系のフードコート)もオープンしました。
私がサハディーズの2号店オープンを知ったのは、NY1(ニューヨーク・ワン)という朝のローカルニュースチャンネルでした。「老舗のサハディーズが話題のインダストリーシティ内に2店舗目をオープン!」とレポーターがオープン直前の店内を映しながら、新店舗の仕掛け人であり、サハディーズ3代目のクリスティン・サハディ氏をインタビューしていました。
「インダストリーシティの側に古くから工場を持つサハディーズにとって、ここは2号店に相応しい条件が揃っていました。店の顔である人気デリやデザートをその場で食べられるテーブルのコーナーや、試食や調理のデモンストレーションができるイベントスペース、レバノンビールやワインを楽しめるバーがあります。
ここは単なる輸入食品店の枠を超えて、アラブ料理や食材を体験〜提供する複合ショップなのです。私はレバノン人ではあるけれど、ブルックリン生まれのニューヨーカーでもあるんです。現代のブルックリンスタイルで、レバノンの豊かな食事やおもてなしのアイデアを紹介したい。本店は歴史的建造物が並ぶ一角にあって改装は無理だったので、いつか新店舗でそれを実現させたいと、構想を練っていました」と、サハディ氏は言います。
サハディーズは、レバノン移民のエブラヒム・サハディーズ氏が1898年にマンハッタンで創業して、1948年にアラブ系のコミュニティが多いサウスブルックリン地区に移転し現在に至っています。
ドアを開けると、何十種類ものオリーブやドライフルーツの瓶が並び、レバノンの名産品であるコーヒー豆は10種類以上、チーズ、パスタ、調味料、お菓子など、珍しい食料品が店いっぱいに並ぶ他、中近東料理のデリのコーナーや、ケータリングも人気。いつ行っても混んでいます!
サハディーズは、一世紀以上の間、創業以来ファミリービジネスを貫いてきました。大手にはない温もりと老舗ながらの味わいを感じる本店に対し、新店は、その本質はそのままに大きなスペースを生かして、本店では表現できなかった「見せ場」をあちこちに作りました。
店舗を増やすことを主な目的にせず、時流に合った店構えを「試す」二店舗目のオープンには、「迅速に」「大きく」「増やす」に躍起になる現代のビジネス戦略に、一石を投じる「ゆとり」が感じられ、満を記してのオープンに期待が高まります。
サハディーズ Instagram:https://www.instagram.com/sahadis/
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