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パジャマで睡眠体験もできる!ニューヨーク発、寝具メーカー「キャスパー」の体験型ショップ

「小売=リテール」と「娯楽=エンターテイメント」を融合させた体験型ショップ「リテールテイメント」として、マットレスのオンライン直販で成功している「キャスパー(Casper)」をご紹介します。

何年前だったでしょうか。私が初めてキャスパーを知ったのは、ニューヨークの地下鉄の車中広告でした。犬とオーナー、カップル、ファミリーなどのベッドの上のストーリーが、可愛らしくてユーモアあるイラストでプロモーションされており、目を引いたのです。すぐにはマットレスの広告とは分からないくらいアート性があって、それがかえって社名を印象付けました。

ただ、お試しもせずに通販でマットレスを購入するというのはかなり勇気がいること。新しいメーカーという不安もあり、ちょうどマットレスを買うタイミングだった私でしたが、キャスパーのマットレスを購買したいという気持ちには至りませんでした。

結局、私がマットレスを購入したのはマンハッタンの百貨店で、知識豊富な店員に相談しながらサンプルの上に寝て感触を確かめて、お勧めの老舗メーカーのものを選び、後日配達員が大きなマットレスを届けにやってきました。

ところがここ数年で、確実に時代が変わってきたようです。最近、友人夫妻がキャスパーのマットレスを買ったと言うので「どうだった?」と聞くと、「近くにショールームができて、実際の商品を体験できた」「箱に入って届く気楽さがよかった」と話してくれたのです。

Photo:届いたら袋から出してベッドに広げ、1時間ほどで通常の形になるというキャスパーのマットレス。

商品の良さだけでなくユーザーに寄り添ったサービスも、友人夫妻がキャスパーを選んだ理由のひとつだったそうです。

例えば、お試し期間として100日間が設けられている、10年間保証、フリーシッピング&リターン。また、製品から有害なオゾン層破壊化学物質や排出物がない、睡眠場所を必要としている人が使えるサービスがある、そして動物に製品の寄付を行っているという会社の姿勢などを挙げてくれました。

Photo:ブルックリンのダウンタウンにある「キャスパー・スリープ・ショップ」の外観。

「キャスパー・スリープ・ショップ」と呼ばれる、ブルックリンに新しくできたキャスパーのショールーム兼ショップに出かけました。商品展示の他に、店内にはキャンプ小屋のようなベッドルームが設置されており、そこで30分間商品を体験できます。

Photo:陳列棚には筒形のパッケージに入った枕が並んでいます。まさか枕用のパッケージとは!ひと目ではわからない面白さがあります。

Photo:快適な睡眠に特化する小物も充実しています。

Photo:可愛いキャンプ小屋のような体験ベッドルーム。

Photo:30分無料でマットレスの使用感を体験できる。

Photo:こちらも体験ベッドルーム。体験中はカーテンを閉めて、外からは中が見えない工夫が。

Photo:こちらも。壁面の色合いも「リラックス」や「眠りを誘う」色合いになっているそう。

Photo:それぞれの部屋のベッドの上には、製品メニューが置いてあります。

Photo:マンハッタンのSOHOにある「キャスパー・スリープ・ショップ」の様子。外階段が一軒家風で面白い。@casper

キャスパーの体験型ショップは、無料、有料の2種類があります。

30分の無料体験コース(要予約)は、ニューヨークではマンハッタンのソーホー、ウォールストリート、ブルックリンのダウンタウンの三か所のショップで体験できます。また、ソーホー店には「ザ・ドリーマリー・The Dreamery(夢想)」という有料体験コース(45分で25ドル)もあります。

有料体験は「ナップ(昼寝)・セッション」と呼ばれ、費用には、専用ロビーや洗面台の利用、貸しパジャマ、アメニティ、無料ドリンクなどが含まれます。パジャマにニューヨークのパジャマ・ブランド「SLEEPY JONES」を起用したり、ヘッドフォンを持参すると45分間のスペシャル・スリープ・オーディオ(スリープキャスト)が聴けたり、有料ならではの工夫があります。

Photo:ザ・ドリーマリーのサイトは、通常サイトとは別にあります。写真は「Casper Nook」と呼ばれる筒状のベッドコーナー。ヌック(Nook)には「隅」や「奥まった小さな場所」といった意味があります。 https://dreamerybycasper.com @casper

Photo:ザ・ドリーマリー専用のロビー。@casper

Photo:Nookは、ベッドが宙に浮いているような不思議なリラックス感があり、リピーターには日頃忙しくしているビジネスマンも多いそう。

Photo:45分というのも、疲れすぎずリラックスには丁度良い、計算された時間なのだそう。@Casper

実際に寝る体験を通じてマットレスが自分に合うかどうか確かめられるのは、買う側にとって、とてもありがたいことです。それだけでなく、会社のイメージを肌で感じられる場として、キャスパー・スリープ・ショップは成功していると実感しました。

コンピューター上で購買を判断するネットショッピングには限界があります。「リテールテイメント」は、新しいショップの形として広がっていくのではないでしょうか。

「ザ・ドリーマリー」は、有料にしたおかげで冷やかしの顧客もないそうです(25ドルは高すぎず安すぎずという印象)。製品のプロモーションとともに、睡眠やリラックスをテーマに他社とのタイアップやコラボレーションイベントにも使える場として、未来性を感じました。

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