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日本食が恋しくなったら黒いパッケージを探せ!フランスにおける日本のイメージとは?


フランス旅行中に、白米やお味噌汁、インスタントラーメンを無性に食べたくなった時、近くのスーパーに駆け込んで日本食材を探した経験はありませんか?日本食の人気が定着したフランスでは、ある程度の大きさのスーパーなら大抵、アジア食材コーナーが設けられています。今回は、そんなフランスのスーパーで売られている日本食材のパッケージの特徴を紹介したいと思います。

和食を自宅で楽しみたい派が急増中

かつて「和食ブーム」が訪れていた時代のフランスは、日本食といえば「寿司と焼き鳥」がメインでしたが、ここ15年ほどでパリをはじめとする大都市に日本人が経営する和食店や日本の食材店の数がぐんと増え、ラーメン、餃子、たこ焼き、お好み焼き、うどん、弁当、おにぎりなど、「寿司と焼き鳥」以外の日本食を味わったことのあるフランス人が格段に増えてきました。特に、日本の漫画やアニメに慣れ親しんで育ってきた若い世代の中には、そのおかげで色んな料理の名前を知っているという子たちも多いです。日本の食材や料理が少しずつフランス人の暮らしの中に浸透し、最近では、レストランで食べるだけでなく、自宅でも和食を楽しみたいという意識の変化が感じられ、それに比例してスーパーマーケットのアジア食材コーナーのスペースも年々大きくなっています。

日本のイメージカラーは・・・黒?!

写真:モノプリの陳列棚がこちら。一目見て、日本の食材を見つけることができる?

こちらはモノプリ内にある日本食材の陳列棚。アジアをはじめ、イタリアやメキシコなど、フランス以外の国の食材が国別に並ぶ世界の食材コーナーといった感じで、上の写真ではベトナム・中国系食品とイタリアの食品に挟まれるように日本食材が置かれています。この棚をパッと見て感じるのが「全体的に黒い」という印象。なぜか、フランスのスーパーで販売されている和食の食材のパッケージは、黒いものが本当に多いのです。

この黒いパッケージ現象は、あくまでもマスなフランス人に向けて、一般的なスーパーで販売されている日本食品に限って言えることで、例えば在仏のアジア人が通うようなアジア・日本食材店で販売しているものは、たとえヨーロッパで製造されているものでも、日本とさほど変わらないパッケージデザイン(おいしそうに出来上がった料理の写真のアップやカラフルな文字など)のものが多いのです。

「日本食=黒」というイメージカラーは一体どこから発生したものなのか・・・?海外で有名な日本の食材の2大巨頭とも言える醤油と海苔は、どちらも黒。上の写真に写っているキッコーマンのように、透明なガラスボトルから透けて見える黒い醤油はずらりと並んでいるだけでインパクトがありますね。また、フランス人が「Maki」と呼んで親しんでいる海苔巻き寿司も、黒い海苔のインパクトが強いですね。ほかにも、黒髪や忍者の黒装束なども日本と黒色を結びつける重要なアイコンかもしれません。

仏ブランド「TANOSHI」の強い影響力

写真:TANOSHIの公式サイトも白と黒でクールな印象でキメている。 https://www.tanoshi.fr

2008年に誕生したブランド「TANOSHI」は、それまであまり馴染みのなかった日本の食材をフランス全国のスーパーで大々的に販売し、フランスの一般家庭における日本食材の位置付けを大きく変えた存在。焼き海苔、味噌汁、寿司キット、カップ麺、中華麺、あられなど、このブランドがすべての商品に一貫して採用しているのが黒を基調としたパッケージ。フランスにおける日本食材のシェアが大きいブランドのため、陳列棚のスペースも広く占めることになり、おのずと黒いパッケージが目立つようになりました。このブランドの登場が「日本食=黒いパッケージ」というイメージを定着させた理由のひとつだったと思われます。

黒は食欲をそそる色とは言いがたく、フランスでも滅多に食品パッケージに使われることはありませんが、その珍しさをあえて利用することで、希少価値や上質感、特別感、高級感を上手に演出しています。ブラックは上品かつ、モードな印象もあるので、そういった雰囲気が「日本や和食を好むフランス人」ターゲットの心をくすぐり、彼らの求めている日本のイメージとぴったりはまったのかもしれません。

ちなみに、フランス各地に約100店舗構える一番有名なお寿司のチェーン店「SUSHI SHOP」も、お寿司を入れる容器からプラスチックの醤油皿、割り箸袋、紙ナプキンなど、パッケージはすべて黒を基調としたもの。寿司をシックに楽しみたいフランス人の心を鷲掴みにしています。公式サイトはこちらから

日本ブランドもフランスでは黒パッケージに!

写真:「ポテチ」の文字がクール!筆文字はやはりマスト。

フランスで定着した「日本食材=黒」のイメージは、日本のブランドにも影響を与えていて、こちらで販売している日本メーカーの食材パッケージも黒を基調としたものが多くなっています。 コイケヤのポテトチップスは、海苔&ワサビ味が黒、焼き鳥味をこげ茶を基調にしたパッケージ。フランスの一般的なポテトチップスの袋デザインとは一線を画すシンプルなデザインで、ぐんと目を引きます。

写真:平たい容器のイメージが強いインスタント焼きそばも、フランスではカップヌードルと同じサイズの容器。ちなみに、日清カップヌードルもスーパーで買える。

おなじみの日清の焼きそばもブラックを前面に押し出したパッケージデザイン。黒をベースに白で文字を載せるというのが、フランスにおける日本食品デザインのデフォルトのようになっているようです。

写真:Ajinomoto Franceのインスタグラムも、黒が多め。高級感溢れる雰囲気作りに成功している。

また、一番上の写真の中央にある味の素の冷凍の焼き鳥のパッケージも、やはり黒!冷凍シリーズは餃子もあるのですが、料理の写真が変わるだけでパッケージは焼き鳥とほぼ同じです。黒い箱は冷凍食品コーナーでも良い意味で違和感があり、かなり目立っています。 コイケヤも日清も味の素も、日本で販売されている商品パッケージとはガラリと異なる色使いとデザインで、フランス(およびヨーロッパ)に暮らす人たちに狙いを定めたイメージ戦略を練っているのが感じられますね。

21世紀になってもゲイシャ、フジヤマを推さざるを得ない問題

写真:「赤い円」や、筆書きのかすれたデザインは日本食パッケージで外せないポイント。

海外における日本のイメージ戦略は、漢字を使ったり、書道のような筆文字をあしらったりと、日本人が考える「今のリアルな日本」とどうしてもズレが出てしまいます。日本を訪れるフランス人観光客が年々増加しており、インターネットで日本の情報を得られる時代になっても、商品パッケージなどのデザインにおいては、随分前と比べてもさほど進化していないように感じます。味の素も日清も、日の丸をイメージした赤い円をロゴやパッケージにあしらっていますが、やはり国旗のインパクトは今も昔も強いですね。

また、焼きそばはシンプルに「Soba」とネーミングすることで、覚えやすくする工夫がなされていますが、これも日本人にとっては「日本そば」と「焼きそば」の違いがあやふやになったようで、ちょっと違和感を感じてしまいます。とはいえ、このような方法で、ターゲットにした国の文化や、外国人が日本に抱くイメージに寄り添った戦略を立てることは、日本の商品を外国で受け入れてもらうために必要なステップと言えるでしょう。

写真:フランスのメーカーは、以前と変わらぬ富士山&芸者で日本のイメージをアピール。

フランスのメーカーであるTANOSHIに至っては、パッケージ裏面に桜と富士山の写真と芸者さんのようなマスコットがあしらわれており、時代が変わっても、「ザ・日本」のイメージはなかなか変わらないものなのかと改めて感じます。この点については、逆も真なりで、日本におけるフランス関連の商品やイベントの宣伝となると、青・白・赤のトリコロールカラーやエッフェル塔、クロワッサン、ベレー帽をかぶったパリジェンヌといったアイコンが今も使われており、フランス人にしてみたらもはや「リアルなフランス」感はかなり薄いのかもしれません。

ちなみに、日の丸の赤をイメージカラーにする手もあると思いますが、フランスでは一般的に赤のパッケージといえば国旗の色から連想されたのか、中華系食材というイメージが定着しています。

新しいイメージカラーの探求を

写真:黒の多い売り場でパッと目をひく白とブルーのパッケージ。

黒いパッケージが多い中、白とブルーを基調にしたこちらの商品がスーパーの棚でひときわ目立っていました。長野県のひかり味噌が作るインスタント味噌汁のパッケージで、ここ数年続いている「日本=黒パッケージ」の流れとはちょっと違ったアプローチをしています。味噌汁の大きな写真や、味噌、豆腐、わかめが入っていること、1分で出来上がるなど、一目で商品の情報が分かりやすく、イメージ先行型ではなく、正しい情報で安心感を得てもらえるパッケージだと思います。

冒頭でも書きましたが、今回ご紹介したのはフランスのスーパーで販売されている日本食材です。ごく一般的なマスなフランス人に訴えかけるパッケージであって、百貨店や高級エピスリー、グルメのセレクトショップなどで日本の商品を展開する場合は、また違ったイメージ戦略が必要になると思います。フランスの食卓に日本の食材が少しずつでも定着していき、それと同時に日本のイメージも変化し、パッケージもありきたりな古いイメージにとらわれず、どんな面白いデザインへと進化していくのかこれからも楽しみです。

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