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進化の勢いが止まらない!フランスのアドヴェント・カレンダー最新トレンド その2

前回は、ここ10年ほどの大人向けアドヴェント・カレンダーの変遷と、ワインのブラインドテイスティングを楽しめる新しい形のカレンダーについて書きましたが、パート2では、老舗ショコラティエと大型コスメチェーン店の一風変わった商品を紹介したいと思います。

毎年変わらぬ形で常連ファンを獲得!À LA MÈRE DE FAMILLEのアパルトマン風カレンダー

こちらは、1761年創業、パリ最古のショコラティエ「ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユ」のアドヴェント・カレンダー(45€)。チョコレートはもちろん、パート・ド・フリュイ、キャラメルといったコンフィズリーが24個入っています。

ジャン・ジュリアンが描く小人や動物、チョコレートの妖精?など、どれもちょっととぼけた表情やポーズが面白い。24日間、毎朝眺めていても飽きなさそう。

パリのアパルトマンをイメージしたこのカレンダーは、毎年、ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユが、世界観を分かち合えると感じるイラストレーターに依頼をする2013年から続く定番コラボ商品。これまでに、サンペやナタリー・レテ、クリス・ウェアといった著名アーティストたちがイラストを描いてきました。10年目を迎える今年は、ロンドンを拠点に世界で活動するフランス人イラストレーター、ジャン・ジュリアンが担当。ユーモアと風刺の効いた彼らしい世界観で、毎朝目にするたびに自然と笑みがこぼれそうです。今までのデザインはこちら(https://www.lameredefamille.com/notre-10e-calendrier-de-lavent-x-jean-jullien/)でチェックできます。

丸い屋根が目印のファンにはおなじみの形。「ずっと変わらない強み」もあるのだと気付かされる。

アドヴェント・カレンダー市場で最も多く出回っていると思われるチョコレート商品は、客の注目を引くために目新しさを求めるパッケージにしがちですが、ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユは、あえて10年間変えることなく同じシルエットを貫き通すという芯の強さが、老舗の信念とも共鳴しているかのよう。小窓の開閉時にストレスを感じさせないどっしりとしたフォルム、手触りの良い光沢のある紙質など、視覚と触感からもパリ最古のショコラティエとしての安定感と上質さを感じ取ることができる凄みがあります。毎年異なるイラストで飾り、ちょっとした新鮮味と軽やかさがちょうど良い具合にプラスされています。

屋根の中はこんな感じ。サンタさんの小窓に何か隠れているのかと想像していたが違った。その代わり一番下の24日は細長い大きめのプレゼントが入っている模様。

中身が飛び出さない工夫がされている小窓。キャラメルのようなベタつくもの以外は、チョコレートですら個包装なし、がエコ意識の高いフランスらしい。

À LA MÈRE DE FAMILLE
公式サイト:https://www.lameredefamille.com
カレンダーのページ:https://www.lameredefamille.com/product/calendrier-de-lavent-2022-x-jean-jullien/

新たなトレンドとなるか!?これまでのコンセプトをくつがえす衝撃的なSEPHORAの新商品。

ゴールドに赤や黄色など、パーティー感の強い華やかな色使いで気分も上がる!

最後に紹介するのは、フランスのコスメ業界を代表する大型チェーン店「セフォラ」の「Calendrier de l’Après」。つまり、クリスマス後のカレンダー!アドヴェント・カレンダーにしては小ぶりだなと思って確認すると、日付が26〜31日までしかないではないですか。今まで見たことがなかったので、驚いて2度見してしまったほどです。

切り取り線を引っ張ってオープン。チェックリスト風の文字のセレクトにもハッピーオーラがあって芸の細かさにグッとくる。

開けた瞬間笑顔にならない人はいないはず、というポップで鮮やかなパッケージ。

上ブタを開けると、クラッカー風のパッケージが6本!三角形や円筒のクラッカーも欧米ではクリスマスシーズンを象徴する形ですね。とにかくカラフルで元気が出ます。それぞれの開封もノーストレスでポイントが高い。

中はセフォラのトレードマークでもある白黒ストライプ。あえて斜めにあしらって、ツリー飾りにある紅白の斜めストライプのキャンディをイメージさせていると思われる。

たった6日間のアフター・カレンダーは、今までのアドヴェント・カレンダーのイメージや概念にとらわれることなく、自由にデザインを楽しめるという利点がありそうです。価格も控えめで、年末のお友達や同僚へのちょっとしたプレゼントにもぴったりかもしれません。一風変わったコンセプトを面白がる、感度の高い人たちが飛びつきそうな商品ではないでしょうか。

しかも1日に2個ずつのプレゼント!これは本当に、年末頑張れる・・・って気持ちになれる。内箱には、英語とフランス語で毎日異なるポジティブメッセージが印刷されている。

確かに、クリスマスが過ぎたあとに突然襲ってくる寂しさに打ち勝つには、こんなアフター・カレンダーが必要な気がします。これさえあれば26日から大晦日まで毎朝ちょっとハッピーな気持ちで目覚めることができそうです(フランスでは、25日と1日のみ祝日でそれ以外は通常通り仕事する人が多いため)。同時に、メーカーの立場としては、クリスマス商戦の期間を長引かせる戦略にもなり、さすが!と思わずうなってしまいました。アドヴェント・カレンダーから派生したこの斬新なコンセプト…ひょっとしたら来年には色々なブランドから似たようなものが発売されるかもしれません。

SEPHORA
公式サイト:https://www.sephora.fr
カレンダーのページ:https://www.sephora.fr/p/calendrier-de-l-apres---wishing-you-P10043330.html

ビューティー系カレンダーは中身ネタバレが当たり前

フランス人女性から熱い支持を集めるOH MY CREAM!665€の商品が165€で買えるといううたい文句が魅力的。 引用元:https://www.ohmycream.com/products/calendrier-avent-22?variant=39895380459582

もはやアドヴェント・カレンダーとは呼べないのでは?と思える現象がもうひとつ。特にコスメやスキンケア系のカレンダーだと、販売時に中身の詳細を写真や動画と共にどーんと載せているブランドがほとんどです。高級な商品を扱うビューティー系セレクトショップで、「正規価格665€のところ、カレンダーだと165€」といった価格面でのおトク感を前面に押し出してPRしているところも少なくありません。化粧箱も美しく、小物入れとしても使えるデザインが多いので、そういった点にも惹かれる人がいるようです。

今回紹介したセフォラのアフターカレンダーも外箱にばっちり全商品が写真付きで紹介されている。ドキドキ感はないけれど、損した気分になるよりはマシと思う人が多数ということか?

今まで高くて手が出せなかったアイテムをこの機会に色々と試せる!といった魅力を感じさせてくれますし、ある程度の金額を出して買うならがっかりしたくない、というワクワク感より安心感を優先させる大人ならではの心理の表れでしょう。ちなみに、レゴのようなおもちゃメーカーの子供向けカレンダーも、外箱に人形を配置した写真があしらわれていますが、全ては載せておらず、ある程度シークレットな演出はいまだにキープしています。

パリ生まれのアロマキャンドル&香水ブランドDIPTYQUE。年々、カレンダーの高級化もとどまるところを知らない。
引用元:https://www.diptyqueparis.com/

アドヴェント・カレンダーがクリスマス商戦に欠かせない商品となり、これほど多種多様の分野が参入してくると、高級志向のカレンダーも増えてきています。写真のディプティックはなんと 350€。よりプレステージな400€の黒い箱バージョンもあり、1年頑張った自分へのご褒美としてこうしたカレンダーを買う層がある程度いるのかもしれません。

 

昔ながらの手作りのカレンダーや素朴でリーズナブルな庶民派カレンダーは、これからもきっと残り続けると思いますが、同時に、進化を続け新たなるアイデアやコンセプトも誕生していくでしょう。来年はどんなアドヴェント・カレンダーが私たちを楽しませ、癒してくれるのか、期待が高まります。

 

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