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ドラッグストアはクリエイティブな発想の宝庫

デパートコスメと呼ばれる高級化粧品やグローバル企業のケア用品は、アメリカのブランドのものも多く、日本でもよく知られていると思います。でも日本にまだ届いていないローカルのドラッグストアで親しまれている低価格なプチプラコスメやケア用品も意外と多いのです。

今回は、そんなドラッグストアの商品に焦点を当てて、特にパッケージやコンセプト、ネーミングなどがユニークな商品をご紹介します。ディスプレイ棚も魅力的で、見ているだけでも楽しいですよ。

歯磨きペースト:hismile(ハイスマイル)

「はみがきチューブ」と呼ばれるほど、はみがきペーストといえばチューブなのが一般的ですが、このハイスマイルという商品はプッシュ式です(画像1)。

カラフルで、初見ではとてもはみがきペーストのパッケージには見えません。

歯磨きチューブ

画像1

ドーナッツ味やわたあめ味など、かえって虫歯になりそうなフレーバーで効果のほどが気になりますが、実はサイエンスなアプローチで作られていて、特にホワイトニング効果はなかなかなものだとか。

ふっくらグラマラスな唇に!:Lip injection

リップにインジェクション、つまり注射や注入するような連想をさせることから、ボリュームアップに効き目がありそうなリップグロスであることが伝わってくるネーミングです。

それにしても、このディスプレイはインパクト大(画像2)。アメリカ人のハリウッドのセレブリティのようなふっくらした唇への憧れの強さを感じさせます。

くちびるをモチーフにした什器を使用

画像2

質感表現がリアル:Cryo rubber

口に商品をくわえる表現はセクシーにも見えますが、表現のバランス次第では清潔感がなくなるので、日本ではあまり見かけないような気がします。実際私も『リップインジェクション』のディスプレイを最初に見たときはギョッとしました。

でもこの辺の衛生観念というか、感覚が微妙に違うのか、他にもこんなデザインのものがあるのです(画像3)。

こちらは凍結療法という治療法からインスパイアされたフェイスマスクです。だから口に温度計をくわえているわけですね。

フェイスパックのデザインには顔が描かれている

画像3

まず氷で皮膚を冷やしてから、添付のジェルクリームを塗って、薄いゴムのマスクをつけてしばらく待つという使い方らしいです。冷やすという特徴とフェイスマスクに使われているゴム素材という二つのユニークな特徴が、このイメージカットでうまく表現されています。

感性を刺激する香り:男性用デオドラント商品

日本では、デオドラント商品はロールオン式のボトルやスプレー缶が一般的だと思いますが、どうやらここではスティック状の塗るタイプが人気なようです。香りのバリエーションも豊富で、ドラッグストアやスーパーのデオドラント商品売り場は1コーナーをすべて占めるほどです。女性向けと男性向け、どちらも同じくらい多く取り扱われています。

女性用の香りはラベンダーやジャスミンなど、具体的な花や植物の香りが多いですが、男性用の種類は独特なイメージ寄りの香りがしている気がします。たとえば、男性用グルーミング商品ブランドの『オールドスパイス(Old Spice)』(画像4)は、「深海」や「火山」、「荒野」など、特定の香りをすぐには思い浮かべにくいラインナップです。

シンプルながら迫力のあるデオドラント商品のパッケージ

画像4

『ドクタースカッチ(Dr. Squatch)』(画像5)も男性用グルーミング商品ブランドです。「松ヤニ」の香りを起用するとは、ちょっと思いつきませんでした。「バーボン樽」の匂いも、言われてみればなかなか魅力的な香りですが、デオドラント用品のメインとして選ぶにはかなりユニークな発想だと思います。『白樺の風』は日本でも人気がでそうなコンセプトではないでしょうか。

クラフト色のパッケージはおちついた雰囲気

画像5

『マンドゥ(MANDO)』には「Mt. Fuji」があります(画像6)。

なんと我らが日本の誇り、富士山の香り!ちょっとだけ嗅いでみましたけど、深緑の凛とした香り。どういった方が開発なさったのかわかりませんが、アメリカ人がイメージで調合した香りだとしたら、アメリカ人の富士山に対する客観的なイメージを、嗅覚で知れたようで面白い経験となりました。

富士山の香りのデオドラント

画像6

ユニバーサルデザインな凹みがブランドの目印に:EOSシリーズ

EOSシリーズは、ニューヨーク発のスキンケアブランドです。特に華やかで可愛い色のリップバームが有名で、キューブ状のパッケージが特徴的です。手頃な価格設定もあり、日本へのお土産としても重宝されるのでお持ちの方も多いのでは無いでしょうか。

ヘアケアやボディケア商品のラインナップも豊富で、ボディローションが人気です(画像7)。プラスチックボトルはマットなテクスチャーで、側面の凹みがブランドの目印となっています。

へこみのついたボトル

画像7

ムダ毛処理用のシェイビングクリームもありますね(画像8)。こちらもプラスチックボトルで、特徴的な凹みがあります。

シェービングフォームにもへこみがあります

画像8

この凹みは裏がわ(画像9)には上部についていて、手に持つとフィット感があって握りやすいデザインになっています。この凹み、デザイン的な面白みもありますが、ユニバーサルデザインとしても機能しているわけです。

裏側にもへこみがあります

画像9

ディスペンサー売りの液体ソープ

以前、環境対応のパッケージについてアルミ化が進んでいると書いたことがありましたが、最近さらに進化しているようです。特にボディソープやハンドソープでは、頑丈で何度もリユースできるようにとアルミ製の製品が増えました。液体ソープのパッケージというよりも、むしろ「中身入りアルミディスペンサー」として販売されているかのようです(画像10、11)。

アルミ容器にはいっているハンドソープ

画像10

アルミ容器に入っているハンドソープ

画像11

日本では、詰め替え用はスタンディングパウチが一般的で、ボトルのそばに置いてあったり、低価格が売りのドラッグストアではむしろボトル販売なしでパウチのみが売られていたりしますよね。逆にイリノイのスーパーやドラッグストアでは、詰め替え用パウチをあまり見かけません。例えば、『Saltair(サルテイア)』の製品(画像12)には、そもそも詰め替えパウチの商品が存在せず、アルミのボトルのみが販売されています。

つまり、ボトルの中身を使い切った後は、他社の商品でも自由に詰め替えて使ってほしいというスタンスの環境対応パッケージなのです。これは他のアルミ製ボトルを使った飲用水商品にも見られる傾向で、「自由に再利用してください」という方針です。

アルミ容器に入っている

画像12

日本の詰め替え商品には、「同じ商品を詰め替えてください」という注意書きが添えられています。これはリピート購買を促す目的でもありますが、異なる製品を混ぜて品質が劣化しないようにするためのものです。

つまり日本ではリユース後も含めたパッケージの安全性が重視されている一方で、アメリカでは環境への配慮を第一に考え、リユースの仕方は消費者に任せている傾向があるのではないでしょうか。

同じパッケージを使うという環境対応

コロナ禍以降、ハンディタイプのアルコール消毒スプレーが一気に普及し、エチケットとして常備する人も増えました。ここイリノイでもマスクをする習慣は減ったものの、消毒スプレーは定着しているようです。

この『touchland(タッチランド)』のシリーズ(画像13)は、様々な種類の香りがついたハンドスプレーで、カードサイズの薄型スプレーボトルは見た目もスマートでおしゃれです。

カラフルな売り場

画像13

いろんなバリエーションがあるカラフルな商品に見えますが、実はボトルは全て同じものなのです。

これは一見手抜きのように思えるかもしれませんが、商品間のパッケージの使い回しができるので、在庫調整で生まれてしまう大量廃棄や、商品ごとに切り替える印刷負荷もなくなり、環境負担の軽減が期待できます。シンプルな白のプラスチックなら、リサイクルもしやすいでしょう。

同じボトルを使うことで商品の違いが分かりにくくなってしまう分、プラボトルよりは環境負荷が低い外装フィルムで額縁のようなデザインを施して、違いをはっきりさせたデザインにされています。

最後に

今回ご紹介したようなドラッグストアに並ぶ商品は、新技術に基づいた開発や環境配慮を特徴としてメジャーブランドとの差別化を目指しているようです。ただ、いずれのアプローチにしても、その技術や環境について殊更訴えかけるよりも、クリエイティビティに満ちた情緒的なネーミングやおしゃれで華やかなデザインが多いのは、商品自体の魅力を際立たせるという次のステージに向かっているように思いました。

 

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