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フランスの新旧パッケージ比較。よりシンプルに、より環境にやさしく変化したデザイン

私たちが見かける商品の多くは、ここフランスでも定期的にパッケージのリニューアルがなされています。しかしフランスにはコンビニがないため、手に取るアイテムのほとんどは、スーパーか薬局、もしくはインターネットで販売されています。ではここ数年でどんなアイテムがリニューアルされたのでしょうか。スーパー、薬局、オンラインストアの3つのカテゴリーから、ロングセラー商品の新旧パッケージデザインを比較してご紹介したいと思います。

スーパーマーケットのロングセラー商品、「ダネット(Danette)」

フランスのメーカー「ダノン(Danon)」

https://www.sortlist.fr/blog/packaging-design/
フランスのメーカー「ダノン(Danon)」のデザートブランド、「ダネット(Danette)」。左が旧パッケージ、右が新パッケージ。

2017年、フランスの食品メーカー「ダノン(Danon)」は、同社のデザートブランド「ダネット(Danette)」のパッケージを全面的にリニューアルしました。新しいデザインの方は非常にミニマルで、フレーバーごとに象徴的な色を1色使うのみとなっています。旧パッケージに比べると、すっきりとしていて洗練された印象を受けました。

新パッケージ

新パッケージ。デザート12個入りのファミリー向け商品です。

旧デザインになかった特徴として、「メイド・イン・フランス」の表記が新しく追加されています。しかしこれは「ダネット(Danette)」に限らず、近年多くの商品に採用されています。その理由は、地域経済を支えるため、優れた品質のため、そして環境負荷を軽減するため。フランスの消費者は、こうしてどんどん「国産」を重要視するようになっています。

※2018年のIfop(フランス世論研究所)の調査によると、製品やサービスを購入する際、フランス人の59%が「製造国を重視している」のだとか。

側面。

側面。フレーバーが分かりやすく表示されているほか、文字のフォントもシンプルになりました。

また、ミニマリズムはフランスでも上昇傾向にあるトレンドデザインであり、商品価値を伝えるだけでなく、若いターゲット層にアピールする狙いがあるそうです。実際、ミニマリズムなデザインは、コスメ(香水含む)やテイクアウト商品(コーヒーカップ等)にも大変多く採用されています。これによりフランスの購買者からも「より見やすくなった」「お洒落になった」という声が上がっていました。

プラスチック包装から紙包装に変わった青果

フランスでは2022年1月より、野菜・果物のプラスチック包装を禁止する法律が施行されました。対象は、ニンジン、キュウリ、ナス、オレンジ、リンゴなど約30種類の青果。実際には2022年より前に少しずつ終了していましたが、法律で全面的に禁止されたのはこれがはじめてです。ただ、ブルーベリーやプチトマトなどの小さくて柔らかいものは、プラスチックに代わる包装への移行期間が特別に設けられました。

紙パッケージに入ったプチトマト。

以前はプラスチックケースに入っていたプチトマト。「パリから65km圏内で収穫された」と表示されています。

紙のケースに入ったブルーベリー

ブルーベリーも紙のケースになりました。「ゼロプラスチック」と表示されています。

施行から2年経った今では、ブルーベリーやプチトマトも紙包装に変わっています。どれも親しみやすいデザインで、角のある四角形、というのが特徴です(重ね置きもOK)。フランスの方々も新しいデザインに肯定的で、「環境のためにいいこと」「困ったことは特にない」と、みな紙包装を歓迎していました。さらにフランスでは、2040年までにすべての使い捨てプラスチックが廃止される予定になっています。

マルシェ

フランスのマルシェ。計り売りのため、欲しい分を紙袋に入れていくスタイルです。

オンラインの商品もパッケージリニューアル

オンラインストア限定のアイテムもリニューアルされています。たとえば2021年には、フランスの食品メーカー「ハロー スヌーズ(hello snooze)」が、主力商品であるシリアルのパッケージ・リニューアルを発表しました。

ハロー スヌーズのシリアルパッケージ。

https://www.instagram.com/p/CRhAfGWCh-G/
フランスのオンラインショップ「ハロー スヌーズ(hello snooze)」のシリアルパッケージ。左が旧パッケージ、右が新パッケージ。

過去に「ハロー スヌーズ(hello snooze)」で販売されていたシリアルのパッケージは、ジップ付きの質素なものでした。しかし、2021年にはこれを完全にリニューアル。現在は、FSC(※)段ボールを使用したカラフルなパッケージに変わっています。

※持続可能な森林活用・保全を目的として誕生した「適切な森林管理」を認証する国際的な制度。

中身が見えるデザインに

https://www.instagram.com/p/CVKmSkjoXad/
中身が見えるデザインに。カラフルでフレーバーも一目瞭然です。

このケースは紙部分が100%リサイクル可能で、フィルム部分が堆肥化可能な素材でできています。企業のインスタグラムでもひときわ目立つデザインのため、同商品の売り上げが大幅に伸びたということです。

薬局における新旧パッケージデザイン

日本のドラッグストアのような立ち位置であるフランスの薬局。多くの人は、スキンケアや日焼け止めといったアイテムをこちらで購入しています。そんな薬局コスメのパッケージもたびたびリニューアルされていますが、近年では「べー・コム・ビオ(B com bio)」というコスメブランドの、デリケートゾーン用ソープが新しいものに変わりました。

花柄のデザインがあしらわれていた

https://www.pharmashopi.com/soin-intime-lavant-doux-bcombio-flacon-de-200-ml-xml-26799_24800_778-234519.html
旧パッケージ。以前は花柄のデザインがあしらわれていました。

シンプルなデザインに

新パッケージ。よりシンプルなデザインに変わりました。色使いが控えめになった分、商品名が分かりやすくなった印象です。

「べー・コム・ビオ(B com bio)」のデリケートゾーン用ソープは、全成分の99.2%が天然由来であり、全植物成分の100%が有機農法由来です。またこちらはエコサート(ECOCERT)認定エコロジー・オーガニック化粧品であるため、他の商品にはないナチュラルな使用感が特徴です。ただシンプルなデザインになった分、薬局のコーナーで見つけにくいなといった印象を持ちました。

フランスのパッケージリニューアルの特徴

フランスにおけるパッケージリニューアルは、大きく分けて2つの特徴があると感じました。ひとつは環境保護の観点から、プラスチックケースが紙包装に変わったこと。そしてもうひとつは、デザインが非常にスッキリしていて、ミニマリズムに変化したことです。どちらも時代に合わせたものだといいますが、フランスの消費者がよりシンプルさを求めていることが分かった内容でした。

 

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