世界のチョコレートブランドが集まるお祭りイベント、「サロン・デュ・ショコラ(Salon du Chocolat)」がニューヨークで開催されました。
「Salon du Chocolat」は、パリでスタートし、現在では世界の主要都市で開催されている、世界のプレミアムチョコレートブランドが集まるチョコレートの展示会です。ショコラティエやパティシエといった専門家から、チョコレートやスイーツ好きの人々までたくさんの人が集まります。さまざまなチョコレートを中心にスイーツ用の食材などを試すことができるトレードショーで、今年もいろいろと楽しませる工夫が凝らされていました。そんな会場の様子やブースで見かけた、おしゃれなチョコレートやパッケージなどの最新のトレンドをご紹介します。
印象に残るオンサイト体験
「Salon du Chocolat NYC」で最も注目を集めるコーナーが、いくつかのステージで行われるライブ形式のイベントです。著名なレストランやチョコレートブランドで活躍するショコラティエやパティシエ、チョコレートの専門家たちによるクッキングのデモンストレーションやレクチャーが行われます。
特にクッキングのデモンストレーションは、それぞれの専門家の得意分野やパーソナリティが反映される内容となっており、素材へのこだわりやクリエイティビティ、技術などが目の前で披露される魅力的な催しとなっています。毎回満席になるほどの人気で、スイーツのサンプルが振る舞われ、このイベントならではの特別な体験ができます。

イベントの中心は、各ブランドブースでのチョコレートの紹介ですが、それにとどまらず「そもそもチョコレートとは何か?」という原点に立ち返らせてくれる展示も興味深いものでした。
「From Bean to Bar」のコーナーでは、カカオ豆からチョコレートが完成するまでの工程を、一般の人にもわかりやすいように紹介されています。チョコレートの原料となる、実物のカカオの展示から始まり、カカオ豆の焙煎、殻むき、すりつぶし、砂糖やココアバターの混合、練り上げといった、チョコレートになっていくプロセスが説明されています。上質なチョコレートは、コンチェと呼ばれる専用の機械で丸一日以上かけて練り上げる必要があるなど、手間と時間をかけて作られていることを教えてくれます。
さらに、練り上げ途中の未完成の状態のチョコレートのテイスティング体験もできます。このコーナーでは、フリーズドライ加工されたものなど、普段あまり見かけることがないカカオパルプを使用した商品も販売されていました。
原料から製品になるまでの過程を、見て、聞いて、食べて、いろいろな体験を通して知ることができる、イベントならではの学びがあるコーナーです。
この他、チョコレートの歴史や世界のカカオの生産地などを紹介するコーナーもあり、チョコレートにまつわる学びの体験がいろいろ用意されていました。

イベント会場では、来場客を楽しませたり、くつろぐことができるようにさまざまな工夫が凝らされています。
巨大なチョコレートの彫刻を開催期間中の2日間で完成させる、ライブデモンストレーションも行われ、多くの人々の興味を引いていました。見上げるほど大きなチョコレートの塊は、職人の手により見る見るうちにギリシア神話に登場するミノタウロスの牛の顔になっていきました。まさに彫刻のアート作品のようで、制作中は多くの人が集まり、写真や動画を夢中で撮影している姿も見られました。完成品を展示するだけでなく、制作過程を目の前で見られる体験はインパクトがあり心に残ります。

会場では、美しい白いドレスをはじめ、チョコレートで作られたドレスの展示も行われ、人気の写真撮影スポットになっていました。窓際に飾られるデザイン画を忠実に再現したこのドレスは、思わず見入ってしまう美しさでした。レースなどの繊細な装飾も丁寧に作られており、職人のこだわりが感じられる仕上がりです。

会場内には「Perrier」のショースペースを兼ねた休憩エリアも設けられ、新フレーバーを含むスパークリングウォーターが提供されていました。「Perrier」のパッケージでおなじみのグリーンの色を基調に、植物やソファ、格子柄のカーペットまで、統一された緑色のデザインで、ポップな雰囲気の空間となり、人々が集まってくるリラックスできるスペースとなっていました。

また、家族連れの来訪者も多いファミリーフレンドリーなイベントで、キッズコーナーもあり、フェイスペインティングなど子どもが楽しめるアクティビティも豊富に用意されています。
チョコレートの販売が中心のイベントでありながら、チョコレートだけに限らず、ゆったりと居心地よくイベントを楽しめるよう、来訪者の立場に立った工夫がされているのが印象的です。
ブースデザインと演出
展示会イベントでは似たようなブースが並んでいますが、そんな中ちょっとした工夫を凝らすことで、ブランドらしさを表現し、存在感のある個性的なディスプレイを作り上げているチョコレートブランドもありました。
フランスのチョコレートブランド「Chocolaknin」は、フラワーカートのような花柄のワゴンをディスプレイに使用し、華やかな雰囲気を演出しています。

レバノンをはじめ中東のスイーツをアメリカで販売するチョコレートブランド「Omniya」のブースでは、種類豊富なチョコレートをボックスで並べ、好きな商品を自分で自由に選んで購入できるスタイルになっていました。最近流行しているキャンディストアを意識した感じの、色とりどりのビジュアルと選ぶ楽しさを体験できるディスプレイです。さまざまな味を少しずつ気軽に購入できるため、そのブランドのチョコレートを幅広く知ることができる、他のブランドには見られない紹介、販売コーナーとなっていました。

パナマのチョコレートブランド「Nomé Chocolate」は、上手に映像などのビジュアルを用いて、チョコレートができるまでのその背景にあるストーリーを見せるディスプレイとなっていました。どんな地域で作られているのかを示す産地のマップや、実際に使用されているカカオ豆の実物を展示することによって、原材料へのこだわりを示すとともに、どんな生産者によって作られているのかを紹介する映像もあり、商品が完成するまでのストーリーによって、そのブランドの魅力を伝える展示になっています。

アメリカの大手ワイン会社が手掛けるイタリアのスパークリングワイン「Banfi Rosa Regale」も注目のブースでした。ロゼのスパークリングワインを、氷を模したオブジェの中に流し込み、デキャンタする実演で、冷えたスパークリングワインを振る舞っていました。
その実演も面白いものでしたが、さらに驚かされたのは、そのスパークリングワインが注がれるカップです。カップは本物のチョコレートでできており、スパークリングワインをテイスティング後、そのカップ自体も食べることができます。飲んで食べることができる、とてもユニークなペアリング体験でした。
また、プラスチックや紙の使い捨てカップを使用しないというエコの視点からも好印象で、面白い体験で記憶に残る演出でした。

チョコレートデザイン
今回の展示会では、チョコレートの味や原材料へのこだわりのあるブランドだけでなく、チョコレートのデザイン、色合い、質感などビジュアル面に力を入れているブランドも目立っていました。
そんなブランドの一つが、「Tasty Slice」です。本物と見間違えてしまいそうなほど、本物そっくりに作り上げられている、リップスティックや香水セットのアート作品のようなチョコレートです。ブランドのバッグなど華やかなものをモデルに、色も華やかにチョコレートを作品化するのがとても得意なブランドで注目を集めていました。

そして、もう一つ際立っていたのが、ファッションの世界観を表現したチョコレートブランド「Quaint Chocolate」です。ミニチュアのドレスの形をしたチョコレートは、レースやスカートのドレープ、ネックレスまでとても繊細に表現されていて、チョコレートであることを忘れてしまうほどのアート作品のような出来栄えです。このブランドは、イベントなどの特別な機会における注文のみ受けているそうで、市販はされていないブランドです。イベントブースの演出も美しく、ブランドの世界観がとてもよく出ていました。

美しい色合いで注目を集めやすい人気のボンボンショコラを提供するブランドも増えていました。中でも目を引いたのが、メキシコからのチョコレートブランド「Óscar Rodolfo Chocolatier」の宝石のような美しいポップなボンボンショコラです。
こういったカラフルなボンボンショコラのブランドは、以前からも存在しますが、より鮮やかな色使いになり、さらに、表面がより艶やかになっているのを感じました。パッケージは、鮮やかな色合いのチョコレートが映えるブラックに高級感のあるゴールドのライン。また、もう一つは、カラフルなチョコレートがよりポップな印象になる、ホワイトとピンクのパッケージが使用されています。

アメリカでは珍しい、表面の質感がユニークなチョコレートもありました。サンフランシスコ発のチョコレートブランド、「Brigadeiro Sprinkles」のブラジル版ボンボンショコラのようなお菓子、ブリガデイロ(Brigadeiro)です。ポップで可愛いブラジルらしい花柄の皿に透明な蓋を使用したパッケージは、色合いや質感が楽しいブリガデイロがよく映えるようにデザインされています。

ポップなパッケージデザイン
今年特に目立っていたのが、最近SNSなどでもよく目にすることが多いポップなデザインのパッケージです。「ビーントゥバー」をはじめ、プレミアムチョコレートブランドは、地域性やクラフト感を強調したパッケージデザインが多いですが、パステルカラーなど美しい色合いを使用した可愛いポップなデザインも増えています。
ニューヨークを拠点に昨年2025年に創業した新チョコレートブランド「Oso Cacao」は、メキシコ産のカカオを使用するなどメキシコ産の材料にこだわったクラフトチョコレートブランドです。「マンゴー×チリ×ライム」「スイートポテト×アマランサス」など、メキシコらしい香辛料や穀物も取り入れた独特なフレーバーの商品展開をしています。昨年のイベントにやって来ていたニューヨーク発の香辛料ブランド「burlap & barrel」との、チリとロイヤルシナモンを使用したコラボ商品もありました。
パッケージは、メキシコらしさやクラフト感は強調せず、カカオを中心にカラフルな模様が散りばめられたポップなデザインになっています。

今年は、インドからのチョコレートブランドもいくつか新しく出展していました。自国の土地で育つカカオ豆を原材料とするこだわりのブランドが増えていますが、この「Bon Fictio」も、自国インドのカカオ豆を使用して作るシングルオリジンのクラフトチョコレートブランドです。フレーバーの種類が豊富に揃い、新ブランドらしくトレンド感のある明るく爽やかな色彩を用い、物語を感じさせるイラストが描かれた統一感のあるパッケージデザインとなっています。

日本からやって来ていた「Musée du Chocolat Théobroma」では、パステルカラーと可愛らしい動物のイラストが印象的なパッケージの板チョコレートが、ポップアート作品のように並べられていました。使用されているカカオ豆の国を表す動物のイラストが描かれた個性的なフレーバーのチョコレートが揃っています。中には柿の種が入った面白いフレーバーのチョコレートまであります。

スイスの老舗チョコレートブランド「Canonica」では、クラフト感のあるチョコレートに加え、春の季節商品としてイースターをテーマにしたチョコレートも並び、明るく楽しい雰囲気になっていました。中でも目を引いたものが、ウサギとひよこをモチーフにした立体感のあるパッケージの商品で、大きな耳が存在感を際立たせる、遊び心のあるポップで楽しいデザインとなっています。

チョコレート業界では、2024年から2025年夏頃にかけて、カカオ価格が史上最高値を更新するなど大きく高騰し、大きな問題となっていましたが、2026年に入ってからは最高値の約3分の1まで下がり、落ち着きつつあります。カカオ豆の価格の高騰期間中には、価格の値上げや、カカオ使用量の削減、サイズの縮小などが行われたため、全般的にチョコレートの需要の減少をもたらしました。
ただし特別感のあるプレミアムチョコレートは、その間も堅調で、カカオ価格の大幅な下落は今後さらに追い風となりそうです。小売価格は急激に下がる可能性は低いと考えられるため、商品開発やパッケージデザイン、マーケティングなど他の分野に注力できるようになり、さらに魅力的で面白いアイデアの商品が増えていくことが期待されます。
▼昨年の「サロン・デュ・ショコラ」の様子はこちらの記事からご覧ください。
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