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エアコンがないフランス、40℃の夏をどう乗り切る?パリで見た暑さ対策とは

パケトラ読者の皆さま、こんにちは。パリ在住のライター、大内聖子です。
2026年は、パリにも「酷暑」がやってきました。最高気温が40℃を超えるほどの、厳しい暑さです。

特に6月17日~30日にかけて発生した熱波では、フランス全体の平均気温が観測史上最高を更新しました。国内40%以上の地域で、気温が少なくとも一度は40℃を超えたそうです。暴力的とも言える強い日差しに、日本よりもずっと遅い日没時間に加え、21時頃まで延々と照り続ける太陽に、フランスの人々もぐったりと疲れ果てています…。

ところが、フランスではほとんどの家庭にエアコンがありません。日本でもニュースになっていたかと思うのですが、本当にエアコンが設置されていないのです。では、どうやってこの暑さを乗り切っているのか。今回は、その暑さ対策について詳しくご紹介します!

エアコンが「当たり前ではない」国で暮らす

気温39℃のパリ

気温39℃のパリ

まず、フランスでエアコンが普及していない理由がいくつかあります。例えば…

・歴史的建造物が多く、物理的にエアコンの設置が難しい

パリでは1853年~1870年に建てられた歴史ある建物が今も多く残っていて、外観保護の観点から室外機の設置が制限されている。

・環境への配慮

電力を大量に消費することで、環境負荷を懸念する声がある。

・コスト面

たとえエアコンが設置可能な物件だったとしても、本体の購入費用や設置費用が日本に比べて非常に高額である。

・エアコンを使うことへの罪悪感

エアコンなしの生活が当たり前だったフランスでは、「年に数日だけの猛暑なら我慢する」「冷房設備は、まず病院や学校を優先的に導入すべき」と考える人が多い。

日当たりの良い部屋は灼熱地獄

日当たりの良い部屋は灼熱地獄

特に、エアコンを使うことへの"罪悪感"については、私がフランスで暮らしていてよく見聞きすることです。フランスの人々は長くエアコンのない生活を続けてきましたし、猛暑があったとしてもこれまでは年に数日程度でした。

ですが、「数日間の我慢」で済んでいたものが、2026年には数日間を優に超え、乗り切れないほど長く過酷なものになってしまったのです。

ということでフランスでは、エアコンに頼らない(頼れない)暮らしを独自で工夫しながら実践する必要があります。冷房が広く普及した日本ではあまりなじみのない方法ではあるものの、工夫次第で意外と何とかなるものです。それでは、実際に効果のあった方法をご紹介します。

雨戸やカーテンを閉めて、日差しを遮る

直射日光を避ける雨戸

直射日光を避ける雨戸

雨戸は閉め切るに限る

雨戸は閉め切るに限る

フランスの猛暑で何が辛いかといえば、やはり「直射日光」です。夏は日没時間も22時前後と遅く、太陽が照りつける時間がとても長いです。そのため、日中は窓を閉めきり、雨戸もカーテンもピタリと閉めて、強い日差しをできるだけ室内に入れないようにします。

湿気の多い日本からすると、「エアコンがないのに窓を閉め切って大丈夫?」と思うかもしれません。しかし私の自宅でも、朝のうちに雨戸を閉めておくことで、室温の上昇をある程度抑えることができました。これは湿気が少ない気候だからこそ成り立つ暑さ対策ですね。事実、フランスでは非常に多くの家庭で実践されています。

窓にアルミ製の遮熱シートが貼られている

雨戸のないアパートでは、窓にアルミ製の遮熱シートを貼っています。このような対策を行う場所が格段に増えました

実際にフランス政府も、猛暑の際は日中に窓や雨戸を閉め、気温が下がる夜間や早朝に窓を開けて換気するよう呼びかけています。

扇風機をフル活用する

パリのテラス席に設置された扇風機

パリのテラス席に設置された扇風機

エアコンがないのであれば、もう「扇風機」をフル活用するしかありません。一家に一台どころか、いまや複数台の扇風機を使う家庭も多いのではないでしょうか。私たちは就寝中も含めて、扇風機をほぼ一日中稼働させていました。

また、フランスでは街のパン屋、カフェ、レストラン、ブティックといった個人商店でも、エアコンを設置していない場所が多くあります。そのため扇風機を店内で何台も回しながら、従業員とお客様の暑さを和らげていた所がとても多かったと感じます。

ちなみに今回、私が最も嫌だったのは「公共交通機関」です。パリの地下鉄・電車・バスには、冷房や扇風機のない車両が多いのです。※一部に冷房完備の車両あり。
そんなところに人が集まれば当然、内部は高温になります。10分が我慢の限界といったところでしょうか…。さらに、熱波の影響で運休・減便になった路線も出るなど、通勤や通学時には非常に過酷な状況が広がっていました。

ポータブルエアコンを設置した文房具店

ポータブルエアコンを設置した文房具店

そこで近年、フランスで急速に増えているのが、写真の「ポータブルエアコン」です。室外機が不要なこのポータブルエアコンは、扇風機より冷風をしっかり感じられて、大がかりな工事も必要ありません。窓を開けてホースを外に出すという工程が必要なものの、家でも店舗でも簡単に取り付けることができます。

ポータブルエアコンを活用する美容室

ポータブルエアコンを活用する美容室

今年のパリでは、ポータブルエアコンの姿を今までで一番多く見かけました。簡易的ではありますが、これがあるのとないのとでは暮らしの質がまったく違います。

ちなみに、現在このポータブルタイプはほとんどの量販店で売り切れとなっていて、再入荷も未定という状況が続いています。猛暑が常態化する中で、フランス人の暑さ対策も少しずつ変化しているのだと実感しました。

とにかく身体を冷やす

街の広場に設置された水蒸気ミスト

街の広場に設置された水蒸気ミスト

「身体を直接冷やす」工夫も、もちろん欠かせません。フランスのテレビやネットニュースでは、とにかく身体を冷やそう、という呼びかけが何度も行われていました。私たちが実践した方法は以下の通りです。

  • 水で濡らしたタオルをいくつか用意して、冷蔵庫にストックしておく。
  • それを首や脇、太ももの内側に挟む。繰り返し使う。
  • 寝る前に冷水シャワーを浴びる。
  • 肌を水で軽くぬらして扇風機に当たり、冷感効果を高める。
  • 冷え枕を使う。

冷房が当たり前の日本で育った私としては、「いったい何をしてるんだろう…」「エアコンが恋しい…」と思うことも多々ありました。

しかし裏を返せば、かつてのフランスの夏は、それほど涼しかったということです。今回はその前提が急速に崩れ、猛暑が日常になりつつある現実を、真正面から突きつけられたように思いました。

涼しい場所へ避難する

「エアコン効いてます」と書かれたワインショップ

「エアコン効いてます」と書かれたワインショップ

また2026年の夏は、「暑い家にいるくらいなら、無理せず涼しい場所へ避難する」という考え方も広まっています。特に、生まれたばかりの赤ちゃんや高齢者がいる家庭では、その傾向が見られます。フランスのSNSでも、「冷房の効いたビジネスホテルへ避難した」という投稿を少なからず見かけました。

ホテル以外では、大型デパート・スーパーマーケットにも冷房が備わっています。それらの場所ではやはり、例年より多くの人々が涼を求めて集まっていました。

猛暑で変わった、セーヌ川の風景

パリのセーヌ川で開催されている「パリ・プラージュ」

パリのセーヌ川で開催されている「パリ・プラージュ」

ではパリ市など、行政が行っている暑さ対策にも目を向けてみましょう。今回はパリで毎年夏に開催されている、「パリ・プラージュ(Paris Plages)」に足を運んでみました。

パリ・プラージュとは、2002年に始まった夏のイベントです。セーヌ川沿いの市内4か所に、デッキチェアやパラソル、ヤシの木などが設置され、都会の真ん中にトロピカルな空間が現れます。もともとは、バカンスに行けない市民のために始まったイベントでしたが、現在では観光客も地元の人も楽しめる夏の風物詩となりました。無料で利用できるので、セーヌ川沿いを散策しながらひと休みするのにもぴったりです。

とはいえ実際に足を踏み入れてみると、あまりの暑さに歩いている人はわずかしかいませんでした…。フランスの夏は湿気が少ないとはいえ、日差しは強く、肌が焦げつくような感覚で、日本の暑さとはまったく質が異なります。

そんな中、多くの人が集まる場所がありました。

水蒸気ミストの下で涼む人々

水蒸気ミストの下で涼む人々

水蒸気ミストに当たる人々

水蒸気ミストは救世主

写真の水蒸気ミストは、パリ市が市内各所に設置しているものです。実は数年前からあって、夏になるとこのミストがまるで「救世主」のような存在になります。

セーヌ川沿いにもいくつか設置されており、この夏はたくさんの人がその下をくぐり抜けていました。もちろん、皆ビショ濡れになります。しかし乾燥した気候が功を奏し、すぐに乾くため、それほど気にはなりません。とにかく身体を冷やす…そんなシンプルな熱中症対策を、パリ市も街全体で実践しているのです。

セーヌ川に飛び込む人々

セーヌ川で泳ぐ人々

セーヌ川で泳ぐ!?

もう一つ、ひときわ賑わっていた場所がありました。セーヌ川沿いに設けられた3か所の「遊泳エリア」です。

2025年、約100年ぶりに一般遊泳が解禁されたセーヌ川。当初は「川で泳ぎたくない」「汚い」と、否定派のパリ市民が多数いたことを私は覚えています。しかし今回訪れてみると、なんと長蛇の列が...!入場無料の遊泳エリアに、たくさんのパリ市民が集まっていました。

セーヌ川で泳ぐために列をなす人々

セーヌ川で泳ぐために列をなす人々

やはり、そのくらい暑いのです。とにかく身体を冷やしたい。そして、パリから一番近い海までは約200km。市営プールもありますが、「自然の水辺で泳ぎたい」という思いは、多くの人に共通しているのでしょう。

記録的な猛暑の中、水に入って涼める選択肢が加わったことは、パリ市民にとっても大きな救いになったと思います。この遊泳エリアでは、パリ市が毎日水質検査を実施しています。浮き具(ブイ)を装着することが義務付けられており、泳げることと、身長120cm以上であることが利用条件です。

※2026年7月26日以降は、ポン=マリー(4区)とベルシー(12区)は水質問題のため一時的に遊泳禁止となっています。

エアコンのない国が迎えた転換期

暑い日差しの中でくつろぐ人々

暑い日差しの中でくつろぐ人々

2026年の夏、フランスは「エアコンがなくても大丈夫」という常識が通用しなくなるほどの記録的な猛暑に見舞われました。

気候が変われば、暮らし方も変わっていきます。こうしてフランスの夏は今、大きな転換期を迎えているのかもしれません。これから首都パリではどんな暑さ対策が新たな「当たり前」になるのか。引き続き、見守っていきたいと思います。

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