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包装はブランドと消費者を結ぶタッチポイントへ

「包む」から「つながる」へ。包装は情報メディアに

TOKYO PACK 2026ではサーキュラーエコノミーや環境対応が大きなテーマとなりましたが、その中で見逃せないのがスマートパッケージの進化です。スマートパッケージといえばQRコード付きの包装が思い浮かびますが、今回は「情報を保持し、消費者やサプライチェーンと接続する包装」が現実味を帯びてきました。包装は単なる保護・輸送手段ではなく、ブランドと消費者を結ぶタッチポイントに進化しています。

NFCタグが切り開く新たな顧客接点

スマートパッケージ分野で特に注目したいのが、NFCタグ内蔵ラベルです。スマートフォンをかざすだけで商品情報やブランドストーリー、プロモーション情報へアクセスできます。QRコードとの最大の違いは操作性にあります。QRコードが自ら「読み取る」行為を必要とするのに対し、NFCは単純に「かざすだけ」です。

特に酒類、化粧品、高級食品の領域では、商品の付加価値向上とブランド体験の強化を実現する技術として期待でき、真贋判定や会員サービスとの連携に進む発展性があります。NFCタグは今やAmazonでも販売されているほど身近なものになっています。一般的にはSuicaをイメージしていただければわかりやすいと思います。

ラベルやパッケージの包装技術で課題解決と価値創造を実現

欧州ではデジタル製品パスポート(DPP:Digital Product Passport)への関心が高まっています。DPPとは製品の履歴書をデジタル化したもので、製品がどこで作られ、何の材料でできているか、修理できるのか、リサイクルできるのか、環境にどのくらい負荷を与えるのかといった情報を集約したものです。スマートパッケージは製品や包装に固有IDを付与し、原材料情報、製造履歴、リサイクル情報、環境負荷情報を紐付けます。

今後、パッケージは製品情報を伝えるメディアとしての役割を強めていくことになりそうです。TOKYO PACKでも、デジタル印刷や可変情報管理技術の展示が目立ちました。

デジタル印刷がスマートパッケージを支える

スマートパッケージを実装するうえで欠かせないのがデジタル印刷技術です。SCREENは軟包装向けデジタル印刷ソリューションを展示し、多品種小ロット対応や可変データ印刷の可能性を訴求しました。個別シリアル番号や個別QRコードを包装ごとに付与できるため、偽造防止、トレーサビリティ、キャンペーン展開、顧客データ連携などの用途が広がります。包装印刷は「大量複製技術」から、「一つひとつに意味を持たせる技術」へと変化しつつあります。

ラベルは表示材から機能部品へ

スマートパッケージは電子技術だけではありません。今年の東京パックは同時にラベルフォーラムジャパン2026も併設され、まさにパッケージにおけるラベルの役割が注目されています。

OSPシーリングの「トメピタ™」は、表示ラベルの一部を切り離して再封シールとして利用できる機能を提供しています。デジタル化によって、ラベルの表示機能としての役割低下を、多機能化によって価値創造しています。開封後の利便性向上、内容物保護、フードロス削減に貢献します。スマートパッケージの本質は電子化だけではなく、「より多くの価値を包装に持たせること」にあります。

AI時代の包装情報活用

今回の展示ではAIとの連携も見逃せません。AI技術は今日のパッケージ業界で最も期待されている技術です。SCREENは生成AIを活用したAI-OCR技術を紹介し、包装情報のデータ化や業務効率化を提案しています。日本の最も大きな課題である人材不足を補うことが期待されます。

酒類メーカーDIAGEOのconnective packageはNFC対応スマートフォンをボトルにかざすことで、デジタルコンテンツをアンロックできます。

認証と偽造防止技術により、ユーザーは製品の真正性、原産地、製造年、味の特徴を確認でき、不正行為や偽造防止に役立ちます。認証ができると、限定カクテルレシピや、おすすめの飲み方、プロモーション情報、ブランド最新情報など、パーソナライズされた情報、体験が提供されます。これらの情報は、ボトルが未開封か、開封されているかによって変化し、それぞれにターゲットマーケティングを行います。

今回の展示から見えてきたのは、「包装はモノから情報プラットフォームへ進化している」という事実です。これまで包装業界は、軽量化、バリア性、環境対応を中心に進化してきました。今後はこれに加え、NFC、デジタルID、可変印刷、AI連携、トレーサビリティといった情報技術が競争力を左右します。TOKYO PACK 2026は、スマートパッケージが実験段階を終え、実用化と事業化のフェーズに入りつつあることを示す展示会でした。今後の包装業界は、「いかに包むか」だけでなく、「いかにつながるか」が重要なテーマになります。

化粧品のL'Oréalはコネクテッドパッケージを活用し、顧客情報取得、パーソナライズ提案、ブランドエンゲージメントを強化しています。サードパーティCookie規制が進む中、パッケージがファーストパーティデータの取得チャネルになるという考え方が広がっています。
L'Oréalのコネクティブパッケージ(スマートパッケージ)は、化粧品容器にデジタル技術を融合させ、消費者のパーソナライズされた体験向上やサステナビリティ(持続可能性)の推進を実現する「ビューティーテック(Beauty Tech)」の中核を担う取り組みです。
L'Oréalはすでに10億個以上のパッケージにQRコードを導入するなど、大規模なデジタルコネクテッド化を進めています。

パーソナライズされた体験と肌診断:L'Oréal Groupeは、パッケージに組み込まれたQRコード、NFC、RFIDタグ、あるいはAR(拡張現実)技術をスマートフォンのカメラで読み取ることで、瞬時にその人の肌状態や髪質に合った正しい使い方、成分情報、カスタマイズされた美容アドバイスへと誘導します。

スマート・ドーシング(適量排出)と美容デバイス連携:先進的な事例では、AI搭載の肌診断ツール(La Roche-Posayの「SPOTSCAN」や「K-SCAN」など)とパッケージや美容デバイスが連携し、その日のユーザーの肌や髪の状態に合わせて最適な成分量を排出・配合するスマートシステムが開発されています。

サステナビリティの可視化(循環型社会への貢献):L'Oréalは詰め替え(リフィル)運動である「#JoinTheRefillMovement」を大々的に展開しています。コネクティブパッケージは単なるマーケティング目的だけでなく、ユーザーが簡単に正しいリフィル(詰め替え)方法や分別リサイクル手順、そのパッケージを選択したことによる環境負荷を削減するメリット(プラスチック削減率など)を追跡・確認するためのインターフェースとしても機能します。

トレーサビリティと信頼性:高価格帯のラグジュアリーブランドを中心に、製品の「偽造防止(模倣品対策)」や、原材料から製造までの透明な製造履歴(トレーサビリティ)を消費者が直接確認できるようにする認証技術としても導入されています。

なぜ今DPPなのか

EUは循環型経済への移行を進めています。最大の問題は、製品が何でできているか分からない、リサイクルしにくい、環境負荷が見えないという点でした。DPPはこれらを可視化するための制度です。欧州委員会はDPPの効果として、バリューチェーンの透明化、リサイクル促進、消費者への情報提供、規制遵守の強化を挙げています。

日本ではまだDPPの法的義務はありませんが、EU向けに製品を輸出する企業を中心に準備が本格化しています。経済産業省は、企業や業界をまたいで製品データを共有する基盤として「Ouranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)」を推進しています。これは日本版の産業データ連携基盤で、将来的なDPP対応も強く意識しています。

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