意外に難しいお土産探し
名所旧跡を観光したり名物料理を食べたりと、旅行は楽しいものです。しかし、意外に困るのがおみやげ探しではないでしょうか。できるだけその土地で作られたもので、価格やデザインなど諸々の条件を満たした商品を見つけるのは、日本でも海外でも難しいものです。特にドイツでは、日本のような手みやげ文化がほとんどないこともあり、ちょうどよい品を探すために旅先での貴重な時間を費やすという場合も見られます。おみやげに最適で、しかもセンスのよい品が集まった専門店があれば……そんなお店が、ベルリンの ”EAT BERLIN(イート・ベルリン)” です。
EAT BERLINは、ベルリンの小規模食品マニュファクチャー専門のセレクトショップとして2014年に誕生しました。メイド・イン・ベルリンのお菓子、ジャム、アルコール、コーヒーなどがそろうほか、同店オリジナルの食品と雑貨もあります。2011年にオーナーがベルリンでオリジナルドレッシングの製造を始めたのがきっかけで取材などを受け、お店のオープンに至りました。「メイド・イン・ベルリンの食品専門セレクトショップ」というコンセプトは、これまでに類がないもの。現在約60のマニュファクチャーの商品を取り扱っています。ストアマネージャーのボナートさんによると、客層は観光客が中心で、ベルリン旅行のたびに訪れるという「常連客」もいるそうです。
EAT BERLINは現在ベルリンに2店舗構えています。1店目は、東京でいえば青山のような立地のミッテ地区にある複合施設 ”Hackesche Höfe(ハーケッシェ・へーフェ)” 内。ショップやカフェ、映画館の入った複数の建物と中庭による施設で、観光名所となっています。
2店目は、東ベルリンに位置する、昨年(2018年)秋にオープンしたばかりの ”EAST SIDE MALL(イースト・サイド・モール)” というショッピングセンター内。周囲には、ベルリンの壁にアーティストたちがペイントした有名な「イーストサイドギャラリー」があるため、こちらも観光客が絶えません。
おみやげに最適なラインナップとは
2店舗とも商品ラインナップは同様です。セレクトする商品の基準は、おみやげとして最適かどうか。店頭には「ベルリンらしさがある」「賞味期限が比較的長い」「グッドデザイン」という要素を備えた品が並んでいます。その一例が、ベルリン名物「カリーヴルスト(カレー風味ソーセージ)」をそのまま密閉式のガラス容器に入れた商品。ベルリンのカリーヴルスト専門店による製造で、本場の味をそのまま楽しめ、食後は容器をお菓子や小物入れなどに使えます。
また、カリーヴルストにかけるソースやカレーパウダーも人気。どちらもオリジナル商品で、EAT BERLINのロゴマーク入りです。商品名に「ベルリン」の文字が入っている点も、おみやげを探す人にとってはうれしいところです。
アジア人観光客には、軽くてかさばらないエコバッグやTシャツが人気だそうです。エコバッグには、ドイツらしいイメージもあることでしょう。さらに現在ベルリンで流行中のナップザックもラインナップされています。
*パケトラ編集部より
ナップザックはリュックサックの一部ですが、それを意味する米英語の「バックパック」や日本語の「背嚢」は、いずれもドイツ語から派生した言葉だそうです。英英語にも「ラックサック」(rucksack)という語がありますが、米英語ではあまり使用しません。ドイツ語でリュックサックの発音は「ルックザック」(rucksack)で、「背中袋」の意味となります。日本語が「ルック」でなく「リュック」であるのは、ドイツ語で背中を意味する「リュッケン」に影響されたから。また、日本では「ザック」と呼ばれることもありますが、ドイツ語で「ザック」というと単に「袋」を指し、リュックサックを指すわけではありません。
デザインの重要性
おみやげの重要な要素として、パッケージデザインが挙げられると思います。洗練されたデザインの品は、渡す側も、もらう側も喜びが倍増するものではないでしょうか。例えばベルリンメイドのウォッカ “OUR BERLIN(アウアー・ベルリン)” のボトルは、シンプルでかつ高級感があります。ウォッカカクテルの “Berliner Winter(ベルリーナー・ヴィンター)” のラベルは、ベルリン在住イラストレーターとのコラボによるものです。
EAT BERLINのロゴは、ベルリン市の紋章に使われているクマと、ベルリンのランドマークであるテレビ塔がモチーフです。どちらもベルリンファンにはよく知られたモチーフですが、そうでない人には一見してベルリンだとはわからないかもしれません。地名などが大きく書かれたグッズは、ともすればいかにもおみやげ的な雰囲気になることがありますが、このロゴはそうしたことはありません。そのバランス感覚は、ご当地商品を作る際の参考になりそうです。
外国人にもわかりやすい店舗の工夫
店内のディスプレイ・プレゼンテーションは、商品内容が伝わりやすく、買いやすい工夫が施されています。商品名はドイツ語と英語の2カ国語表記。商品の脇には、やはり2カ国語で商品やマニュファクチャーの説明を書いたカードが添えられています。
プレゼントや郵送需要には、オリジナルの有料ボックスを用意。EAST SIDE MALL店のほうでは、商品を詰めた状態のギフトボックスをサンプルとしてディスプレイしています。イメージがしやすく、買いやすい工夫です。
外国人観光客も多い店だからこそ、こうしたわかりやすさが大切です。日本はインバウンドが好調ですが、日本語が理解できる外国人観光客はごく限られています。わかりやすいディスプレイで、コミュニケーションの難しさを補えると思います。
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