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フィンランドの食品ロス対策。キーワードは「いかにヘルシーに廃棄食材を救えるか」

Kestävä(ケスタヴァ)とは?

フィンランド生活のなかで、毎日のように「Kestävä(ケスタヴァ)」という言葉を見聞きします。フィンランド語でKestäväとは「サステイナブル」を指し、持続可能な、自然環境に配慮するという意味です。

毎日大量に廃棄される賞味期限切れの食品を提携先の大手スーパーマーケットのSグループから仕入れ、美味しいものに変身させて提供するという食品ロスへの取り組みを実践している、ヘルシンキのベジタリアンレストラン「LOOP(ループ)」をご紹介します。

Photo:Loopが入る建物は元精神科病院。周辺にはお墓が建ち並ぶ

人気のベジタリアンメニューは・・・

ループのメニューは全てベジタリアン。当日届いた廃棄食材でメニューを決めて調理されるため、当日にならないとその日のメニューが分からないというサプライズ感があります。通常、フィンランドの殆どのレストランでは、1週間分のランチメニューをウェブサイトやSNSへ事前に掲載するところが多いなか、ここは少し他とは異なるアプローチです。

ランチメニューは、メイン・サラダ・パン・デザート・果物・コーヒーまたは紅茶がついて、9.5ユーロほどです。メインなしの場合は7.5ユーロと良心的な価格帯。10ユーロ未満でランチが食べられるのは、ヘルシンキでは破格の値です。

Photo:廃棄食材に再び命が吹き込まれ、綺麗に盛り付けされて提供される

取材した日のメニューは、ビーツと豆腐のグリルでした。サラダ、グリル野菜、キャベツのマッシュルーム添え、旬のカンタレッリ(アンズ茸)スープ、バナナとチョコレートのケーキが並びます。

Photo:デザートもヘルシーに、様々な果物が並ぶ

野菜は端まで使い切る!

Photo:廃棄食材から美味しい一皿に

塩分控えめでとてもシンプルな味付けです。野菜をしっかり摂れて、廃棄される食材で作られているとは思えないほど美味しくヘルシー。それでいて、少しでも食品を救うことができているという満足感のあるランチです。北国フィンランドの生活は、冬の間は特に新鮮な野菜や果物が手に入りづらく、野菜不足に陥りがちなため、こういったメニューは有難いのです。

「ここでは素材の味を生かしたシンプルな調理にこだわっています。野菜は切り方や調理方法を工夫して、端まで使い切ります」とシェフは言います。このようなコンセプトに賛同してレストランをサポートする人も多く、いつもランチの時間は若い世代を中心に混雑しています。

Photo:ランチタイムは、若い世代を中心に周辺のオフィスからも訪れる

ループで使用されている家具や食器類は全て、形もデザインも異なるリサイクル品が使われています。

Photo:リサイクルのカトラリー

「Saa ottaa(どうぞ取ってください)」

Photo:店内の様子。壁には絵画が飾られている

Photo:若い女性に人気の数量限定無料ランチボックス

さらに、ループの入り口ではヴィーガンランチボックスが無料で配布されています。物価の高いフィンランドで、案外よく見かける「Saa ottaa(どうぞ取ってください)」の文字。本、洋服、家具など、街中でこの表記を見かけることが多いのは、リサイクルに熱心な社会背景があるからでしょう。

元精神科病院を改装

Photo:Loopの入り口

Photo:綺麗に手入れされた花壇が並ぶ中庭。目の前には海が望める

Photo:緑に囲まれた静かな環境。多くの地元の人がジョギングなどをする憩いの場所でもある

ループが入っている建物は、現在はヘルシンキ市が所有していますが、2004年までは精神科病院として使われていました。2階のメンタルミュージアムには病院の歴史が学べる展示があり、とても興味深い内容です。

それによると、戦時中には心身ともに傷ついた人々がここで治療を受けていたとのこと。音楽家のジャン・シベリウス氏の兄、クリスチャン・シベリウス氏も、この病院の精神科医でNo.3の医師として勤務されていたそうです。

スポーツと健康管理に勤しむフィンランド人

北の果て極地での生活は、暗く寒い冬が半年以上続き、決して容易な環境ではありません。そのためフィンランド人は、日頃から食生活には気をつけ、熱心に運動に励み、健康的な生活を心掛けています。食品ロスへの取り組みのキーワードは、いかにヘルシーに体に良いものを取り入れながら継続できるか。

必要最小限。ちょっと不便だけど、自然の中での暮らしを愛おしみ、誇りに感じている人々。ループのような取り組みを実践するレストランは、今後もフィンランドで増え続けていくことでしょう。

Text & Photos : Yuko Räsänen

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