アイデアは日本から!?ニューヨークで一番美味しい手作りパイ・ショップ「フォー&トウェンティ・ブラックバード」
ブルックリンで大人気の手作りパイ専門店「フォー&トウェンティ・ブラックバード」。2010年にオープンしたこの店を立ち上げたのはサウスダコタ(アメリカ南西部)出身の姉妹エミリーとメリッサ。当時のブルックリン・ブームの追い風もあって、オープン当初からニューヨークタイムズ紙などに取り上げられ、翌年には、タウムアウト誌の「アルチザン(職人)・オブ・ザ・イヤー」という賞を獲得するという好スタートを切りました。
おばあちゃん直伝のパイを、地元のフレッシュな素材を使ってブルックリン流にアレンジ
母親が経営するサウスダコタのレストランで、長年パイ作りをしていた祖母からパイ作りを学び、そのレシピを受け継いだことが、ふたりがパイ専門店開くきっかけになったそう。パイ作りの技術と、旬のローカル産フルーツやオーガニック素材にこだわった、ホームメイド感たっぷりのパイは、アメリカン・パイらしいおおらかな作り。上質のバターやミルクをたっぷり使ったパイ生地はサクサク、フルーツやカスタードクリームをふんだんにつかったフィリングは、フレッシュでリッチな味わい。
アメリカ人にとってはノスタルジックな響きがある「アメリカン・パイ」を作るフォー&トウェンティ・ブラックバードは、大都会で暮らすニューヨーカーの琴線に触れ「NYでナンバーワン」のパイと支持されています。
新しい試みはパッケージにこだわったミニサイズのパイとワンカットサイズのパイ
2年ほど前かにスタートしたミニサイズのパイは、マンハッタンのソーホーにある老舗バー・レストランに依頼されたのがきっかけで開発されたフォー&トウェンティ・ブラックバードの新商品です。ホールサイズをカットしなくても済むミニパイのアイデアに、パッケージングのアイデアを加え、ウエディングの引き出物や、パーティのケータリングデザートに発展させました。バレンタインデー用に開発した6種類のチョコレートパイの詰め合わせBOXは想像以上の売れ行きとなりました。
その次に試みたのは、ワンカットサイズのパイ。「やっぱりここのパイはホールサイズ!」という声に応えて、ワンカットサイズのパッケージを開発。ブルックリンのショップを訪れなくてもフォー&トウェンティ・ブラックバードのパイが食べられる、という新たなビジネスチャンスを作る結果にもなって、ホールフーズなどへの卸しや、ポップアップイベント用の商品として成功を収めています。
新商品やパッケージングのアイデアは日本から
フォー&トウェンティ・ブラックバードは毎年5月に大阪の阪急百貨店のニューヨークフェアにも出店しています。今年で3回目。過去1日で800個のパイを売ったと聞くと、毎年声がかかるのも納得です。
この日本へのビジネストリップには、エミリーとメリッサ、そしてパイ職人のトップであるリカの三人で臨んでいます。パイを提供するだけでなく、日本の食文化や販促、新しいパイのアイデアを自分たちの目や、舌で味わえる良い機会だとエイミーが話してくれました。「ミニパイも、ワンカットサイズも、一個箱のパッケージのアイデアは日本に行って思いついたのよ」。
日本の老舗とのコラボレーション・パイもヒット商品に
3年ほど前に、私はひょんなことから「いま抹茶でパイを作りたいと思っているの」とエミリーに相談されました。それならマンハッタンにも支店がある京都の老舗「一保堂茶舗」が、茶葉の卸しをしているから、と、紹介者としてわたしも一保堂茶舗さんに同行してフォー&トウェンティ・ブラックバードのキッチンに出かけました。
お抹茶にはランクがあり、調理に使うのなら中〜上でないと鮮やかな色が出せないという説明を、サンプルを見て、テイスティングしながら吟味するフォー&トウェンティ・ブラックバードのスタッフたち。かくして出来上がった色鮮やかな「抹茶カスタードパイ」は、ニューヨークの抹茶ブームにも乗って、瞬く間にヒット商品に。
翌年には一保堂茶舗のほうじ茶を使った「ほうじ茶カスタードパイ」も新商品に加わって、ニューヨークらしいコンテンポラリーなパイ・ブームを起こしました。
色鮮やかな抹茶カスタードパイは濃厚なクリームパイ。グリーンがキーカラーのセントパトリックデーやクリスマスのパイとしても大好評。ほうじ茶カスタードパイはあっさりとした甘さが好評です。
店舗ビジネスにも新しいアイデアを取り入れて
スタート時、自宅のキッチンではじめたパイ作りも、今では50名弱の従業員数に。ブルックリンのゴワナス地区にある本店の他に、ニューヨーク郊外の支店、ブルックリンライブラリー(図書館内の売店)、そして昨年はブルックリンにもう1店舗、ナチュラルモダンな内装の、カウンターだけのパイ・ショップをオープンさせました。
ここではコーヒーや紅茶の他に、ワインやビールもオーダーができ、夜は9時まで営業。「散歩がてら、お茶の代わりにビールとパイ、や、食後にワインと一緒にパイを」というコンセプトは、他に類を見ない新しいアイデア。もちろんホールパイも買えるし、朝は9時からオープンしているので朝パイ(朝ごはんとしてコーヒーとパイ)も食べられます。
今後のビジョンは?という私の質問に、エイミーは「一保堂茶舗とのコラボのような、地元から離れた、新しいパイの開発にも意欲的に取り組みたい。従業員を増やして事業を大きくしていくか、今の規模のまま卸しやパーティ用のパッケージ商品をもっと充実させるべきか。10年目を前に、今は可能性のあるものに積極的にチャレンジする時期だと思っている」と話してくれました。
ブルックリンは、最近のブルックリン・ブームのずっと以前から、起業の町としての歴史があります。最近は「知名度が上がったら会社を売る」ことを前提に起業するオーナーが多くなりましたが、フォー&トウェンティ・ブラックバードは、どんどん成長していってほしいと思う傍で、今のオーガニックな社風を大事にしながら、感度のいいブルックリンの手作りパイ・ショップとして老舗になっていってほしいというのが私の願いです。
Four & Twenty Black Bird Pie
http://www.birdsblack.com/
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