パケトラ読者の皆さま、こんにちは。パリ在住のライター、大内聖子です。
パリは「芸術の都」として君臨して久しいですが、絵画や建築だけでなく、日常の細部に至るまで視覚的センスに優れています。
例えばお菓子。センスの良いパッケージのお菓子は、自宅用はもちろん、ちょっとしたギフトにも最適だったりします。特にフランスには「映える」デザインが多いので、捨てずに取っておきたいものばかり。見た目が良いことでエコにもつながりますね。
ということで今回は、「絶対に捨てたくない」、フランスの素敵なお菓子のパッケージをご紹介したいと思います!
ホテル・リッツのお持ち帰りマドレーヌ
パリ1区にある高級ホテル・リッツ パリ(Rits Paris)(以後ホテル・リッツ)が「お持ち帰り」専用のパティスリー『ル・コントワール』を2021年6月にオープンさせました。
敷居の高さを感じさせるホテルに入ることなく、誰もが気軽に利用できるパティスリーができたというのはなかなかに嬉しいことです。
オーナーを務めるのは、ホテル・リッツのシェフパティシエであるフランソワ・ペレ氏。2019年には最も栄誉のある『世界最高のレストラン、パティシエ賞』でグランプリに輝いた、スター・パティシエの一人です。
ホテル・リッツの看板スイーツといえば、マドレーヌ。フランス人作家のマルセル・プルーストがホテル・リッツの常連であったことから、彼の著書『失われた時を求めて』に登場するマドレーヌがここで取り上げられるようになりました。
ル・コントワールの目玉商品もまた、マドレーヌです。ペレ氏のヒット作であるマドレーヌが1個(3.20ユーロ:約422円)から購入可能。クラシック、ブラックベリー、栗の蜂蜜、チョコレート、キャラメル、フランボワーズ、パッションフルーツの7種類があります。
数あるスイーツのなかでも、このマドレーヌだけに素敵なボックスが用意されているのです。
ボックスのデザインにはオーナーのペレ氏、そしてホテル・リッツの創業者セザール・リッツ氏が描かれています。常温で5〜6日は保存できるそうなので、7種のマドレーヌから好きなフレーバーを選んで、滞在の最終日に、ギフトとして買い込みたいですね。
捨てずに保管しておきたくなるデザインも、さすがホテル・リッツ。
ちなみに、ボックスは5個入りのセザール(19ユーロ:約2,508円)、8個入りのオーギュスト(29ユーロ:約3,828円)、12個入りのフランソワ(40ユーロ:約5,280円)の3種が揃っています。ホテル・リッツ×マドレーヌというだけで、最高のパリ土産になりそうです!
アニス・ド・フラヴィニーのキャンディ缶
アニス・ド・フラヴィニーは1591年以来、ブルゴーニュ地方のフラヴィニー村で始まったキャンディメーカーです。430年もの長いあいだ同じレシピであるというこのキャンディには、原料にアニス(セリ科の薬草)が使われています。着色料、甘味料、人工香料は一切使っておらず、アニスの種を1粒ずつ2週間かけてフレーバー付けしたシロップでコーティングしています。
楕円形の缶には、フラフヴィニー村の羊飼いの少年と少女のラブストーリーが描かれています。これは本当に映えますね。これだけ可愛い缶はなかなかないので、食べ終わった後はフリスクを入れ替えたり、小さいソーイングセットの入れ物としても活躍しそうです。
ラ・サブレジエンヌのラングドシャ
ラ・サブレジエンヌは、フランスのサブレの町から生まれた、サブレの中のサブレを味わえるブランドです。発酵バターをふんだんに使い、昔ながらの手順で作られているサブレは絶品との評判。
そんなラ・サブレジエンヌでもう一つのアイコン商品が、ラングドシャです。サクサクと軽い歯ざわりのラングドシャ、フランス語での意味は「猫の舌」。ということで、メタル缶のデザインには黒猫ちゃんが登場しています。
サイズも大きく、例えば退職の挨拶時などの贈り物にも良さそうですね。総じて、デザインの良いメタル缶というのは捨てられないことが多いように思います。中身も一つ一つ梱包されているわけではないので、エコフレンドリーでもあります。
CHAPON(シャポン)のチョコレートタブレット
元バッキングガム宮殿の専属アイス職人だったという、なんとも華やかな経歴を持つパティシエ、パトリス・シャポン。2003年には パリの『チョコレート大賞』を受賞するなど、確かな技術を持つ新進気鋭のショコラティエとして注目されています。
その素敵なパッケージも魅力的。カカオの産地にちなんだイラスト入りで、これほど鮮やかなチョコレートのパッケージもあまり見かけないものです。紙包装ではなく、ジップロックのように口が閉まるところも良いですね。クリップやポストイットなど、細かい文房具の収納としても使えそうです。
マリアージュフレールのデザイン力
最後に、フランスの老舗紅茶ブランド、マリアージュフレールからいくつかご紹介したいと思います。
マリアージュフレールのフレーバーティーは日本でも大人気。それだけに紅茶だけでなく、日本茶にも敬意を評したアイテムが多く並んでいます。数量限定で発売される「サクラ グリーンティー」は、オーガニック緑茶に日本の桜の香りを添えた銘柄。まさに「作品」と呼ぶにふさわしい、マリアージュフレールの力作となっています。
そんなパッケージは、「フランスから見た日本」といったイメージで、日本では採用されないようなカラフルなもの。桜なのに、こういうパッケージデザインというのも、衝撃的でした。コストはかかっているのでしょうが、それだけ特別なお茶だということです。演出は大事ですね。
さらに、マリアージュフレールではお持ち帰りのサービスも開始しました。一杯5ユーロ~(約660円)の値段で、美味しい紅茶がテイクアウトできるようになりました。
紙コップ、ストロー、蓋はすべてリサイクル素材で出来ています。サステイナブルの一環として始めたそうですが、このデザイン力には毎度感心してしまいます。単なる紙コップのはずが、マリアージュフレールのロゴが本当にかっこよくて、画像に収めたくなりました。
捨てるにはおしいこのカップ、私はこの後ペン立てとして使っています。
シンプルがあまりないフランスのパッケージ
いかがでしょうか。
ご紹介したとおり、フランスのパッケージにはシンプルなものがあまりなく、主張するデザインが多くありました。
フランスで暮らしていていつも思うことですが、こちらは「演出や見た目の吸引力」が素晴らしいです。そして、「映える」ことは意外と馬鹿にできません。捨てたくない、と思えることで、小さくても結果エコにつながります。
ゴミも増えず、誰かにプレゼントしても喜ばれるので、デザインの良いパッケージは一石二鳥とも三鳥ともなりそうです。
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