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ドイツの廃棄商品専門スーパーは、なぜポジティブなムードであふれているのか

「できるだけ新鮮な果物や野菜を食べたい。だから当日の朝収穫された野菜や魚を食べられるレストランは特別だと思うし、パッケージ食品をスーパーで買い物をするときは、できるだけ製造年月日が新しいものを選びたい。」

これが都市で暮らす私たちの常識です。販売側は、できる限り顧客を喜ばせるために努力し、新しいもの、新鮮なものを追い求めることになります。もちろん、お客さんを喜ばせることは素晴らしいこと。でもその舞台裏でどのようなことが起こっているのでしょう。

Photo:「私たちは食べ物を救っています」と大きく書かれたウィンドウ

ドイツの廃棄食品事情

ドイツでは、毎年1800万トン、全流通量の1/3の食品が捨てられています(日本は2759万トン/環境庁)。この数字には、生産地や企業で出荷前に捨てられる数は含まれていないので、実際に無駄になっている食品はさらに増えると推定されます。

食品廃棄の理由は様々で、賞味期限切れ、形が悪いから、値崩れ防止、過剰生産、パッケージに傷がついたから、前日のパンなど・・・。もちろん、果物や野菜の皮、完全に古くなって腐敗してしまったものなど、食べられないものも含まれるので、1800万トンの全てがレスキューできる廃棄食品というわけではありませんが、1800万トンの中には、ダンボールに入ったままのパッケージ食品や少し茶色くなってしまっただけのバナナ、賞味期限が一日切れただけのヨーグルトなど、まだまだ食べられる食品も多く含まれていることが問題になっています。

そんな廃棄食品だけを扱うベルリンのスーパー、Sir Plusをご紹介します。

Photo:廃棄食品スーパーSir Plus

創業からの2年間で、1800トンの廃棄食品を販売

Sir Plusとは、Surplus(英語で“余剰”)を引っ掛けたダジャレ。彼らが扱うのは、「廃棄食品&廃棄生活用品」のみ。大手スーパーのメトロや、チェーンのビオ・スーパーマーケット、卸や生産者から廃棄食品を回収し、販売しています。

Photo:「野菜は自然からデザインされている」=不揃いな野菜も食べましょうというメッセージ)

2年前に創業したばかりの若いビジネスですが、現在ではベルリン市内に3店舗、取り扱い商品は400種類、1日の利用者数は1200人、従業員数70人の企業にまで成長しました。テンペルホーフ空港跡地にある倉庫には、25万点の廃棄食品をストックしています。創業からの2年間で、1800トンの廃棄食品を販売しました。

Sir plusは、生鮮食品や野菜、メーカーの過剰生産品なども扱っていますが、メインは「賞味期限切れ」商品。

Photo:2019年2月に賞味期限が切れたケチャップ

賞味期限とは?あなたは正しく理解していますか

EUの規定によれば、「適切に保存されていた場合、味、見た目、品質が基準以上であることをメーカーが保証する期限」。メーカーは安全をとって賞味期限を短めに設定するため、実際は賞味期限切れでもほとんどの食品が食べられるそうです。

販売する場合は、賞味期限がいつなのか消費者に伝える義務があるだけで販売自体は合法です。ただ、一般消費者は、「もう食べられない期限」である「消費期限」と「賞味期限」を混同していることが多いため、今まで一般のスーパーでは、賞味期限切れの商品は廃棄されてきました。フランスやチェコでは、期限切れの商品の廃棄を禁止する法律ができましたが、ドイツには今のところ規制はありません。

Sir Plus のキャッチフレーズは”Schone die Umwelt...und spare dabei Geld!”。日本語に訳すと「環境に良いことをしよう…そして節約しよう!」です。店内には賞味期限切れの商品がずらりと並びます。全て、廃棄される予定だったということが信じられないくらい、普通に魅力的なラインナップに見えます。

商品のプレートを見ると、元の価格、現価格、割引率、そして賞味期限が書かれています。3ヶ月前に賞味期限が切れたm&m、乾麺やお酒、ほんの少し元気がない野菜にハードチーズ。食材の種類はかなり豊富なので、Sir plusだけで買い物をしても毎日いろいろ食べられそうです。

ここに来るまで「賞味期限が切れた食品を買って食べる」ことは想像したことがなかったのですが、店内のお客さんが楽しそうに買い物をしているのを見ると、それもありなのかな、と感じるようになりました。

Photo:店の奥には、子供でもわかる学習コーナーがある

廃棄食品を買うこと=環境のために貢献すること

「廃棄食品を買うこと=環境のために貢献すること」というメッセージが店のいたるところに書かれていて、ポジティブなムードにあふれています。スタッフの雰囲気も良く、お客さんとのコミュニケーションも多い様子でした。スーパーマーケット自体が廃棄食品をポジティブに見せるための大きなパッケージになっています。

必要なものを通常よりもかなり安い値段で買うことができ、さらに環境に貢献したと感じられる。常連として、レジのスタッフと一言二言交わす。そんなポジティブな経験が、満足感を生み出しリピーターを作り出します。

「これもダメ、あれもダメというストレスだらけの環境保護ではなく、楽しく、そして気持ちよく関わってくれる人が増えていくと嬉しい。5年後には、廃棄食品を食べるという選択肢がもっと一般的なことになってほしい。直営店やフランチャイズを増やしていきたい」という創業者ラファエルの希望が実現するには、5年もかからないのではないか、と思いました。

Sir plus公式ホームページ:https://sirplus.de/

参考:https://www.zugutfuerdietonne.de/


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