特別感のあるコンセプト型高級グローサリーストア
アメリカでは、ヘルシー志向の高まりを背景に、新鮮で高品質なオーガニックの食材や調理済み食品、ドリンク、その他個性的なプレミアム商品を取り扱う高級食材店が人気を集めています。中でも注目されているのが、特別感のある空間と体験を提供する個性的なグローサリーストアです。
サラダが25ドル、ジュースが15ドルといった驚きの価格帯の商品が並ぶ店が多いにもかかわらず、流行に敏感な若者たちでいつも賑わっています。そんなニューヨークで注目を集めるコンセプト型のグローサリーストアをご紹介します。
おしゃれでヘルシーなライフスタイル
オーガニックやウェルネスをテーマにした商品を中心に、感度が高いおしゃれな人たちが集まるお店が、2023年にSoHoにオープンした「Happier Grocery」です。このお店の特徴は、ただ買い物をする場所ではなく、そこで過ごすこと自体が楽しい体験になることで、オンラインでショッピングを済ませることができる便利な世の中に、あえて店に足を運び、そこで時間を過ごしたくなる空間づくりに力を入れています。
「Happier Grocery」の店内は、花や緑が飾られ、白を基調にした明るく広々としたスタイリッシュな空間が広がっています。有名人御用達のLAの「Erewhon」や、かつてSoHoにあった「DEAN & DELUCA」など人気高級食材店の影響が感じられるデザインです。

このお店には、美味しさはもちろん、見た目の美しさやヘルシーさにもこだわった商品が並んでいます。日常より少し上質なものを気軽に楽しめるのが魅力のお店で、そういったコンセプトに共感する人たちが自然と集まり、洗練されたお客さんが多いお店となっています。店内は2フロアからなり、1階は、惣菜やベーカリー、サラダなどテイクアウト用の調理済み食品を中心とし、食事ができるスペースも用意されています。

地下のフロアでは、食料品に加え、日用品や美容などさまざまな分野の個性的なブランドの商品が並べられています。新商品を試せる体験コーナーもあり、訪れるたびに新しい発見があります。店内のデザインは、木のぬくもりが感じられるナチュラルな雰囲気と、ステンレス製のシルバーの棚が並ぶ、少しクールな印象を組み合わせたスタイルで、居心地の良さと洗練された雰囲気を併せ持ったデザインとなっています。

お店のブランドの象徴的な存在になっているのが、鮮やかな緑色を基調としたオリジナルのパッケージです。白、緑、透明にシルバーの蓋を組み合わせた統一感のあるパッケージデザインは、ナチュラルでフレッシュ、そしてクリーンなイメージを引き立てるものとなっています。この統一感のあるパッケージは、店内の商品陳列を美しく見せるだけでなく、購入後も自宅で統一感のある空間を演出し、その世界観を楽しめます。家の中をセンスよく保ちたいというニーズをさりげなく満たすことで、自然とリピート購入にもつながっていきそうです。

オリジナルのショッピングバッグは他のお店にはないデザインで、通常、ショッピングバッグは、購入したものが見えないように隠れる仕様になっていますが、このお店のバッグは、あえて透明で中身を見せるつくりになっています。お店のオリジナル商品のグリーンのパッケージが綺麗に見えて、持ち歩くことで自然とブランドのPRになっています。

ラグジュアリー体験を楽しむ
ニューヨークのトライベッカに2025年11月にオープンした話題のグルメマーケット「Meadow Lane」は、他のスーパーマーケットではなかなか体験できない、ラグジュアリーな雰囲気が特徴のお店です。日常のちょっとした買い物の時間が、特別で優雅なものになるように空間がデザインされています。
店内は花や緑が飾られた静かで優雅な空間で、まるでスパに来たような居心地の良さがあります。買い物かごには木製のバスケットが使用され、店内のナチュラルな空間デザインによくなじみ、細部まで世界観が作り込まれていることが伝わってきます。木製の買い物かごは、プラスチックのかごとは違う上質感を感じさせるとともに、環境への配慮も感じさせます。

店内は木のぬくもりを感じるナチュラルな雰囲気の空間で、通路も広く、ゆったりと商品を見て回れるようになっています。アートが飾られているだけでなく、並んでいる商品そのものもアートのようにデザイン性が高く、パッケージの美しさにこだわった商品が多く揃っています。通常のお店ではなかなか実現できない、徹底した美しい空間を実現しているお店です。このお店は、効率よく買い物をする場所というよりも、いろいろと手に取って見たくなる、お店の商品についてもっと知りたくなるような心地よい買い物体験を作り出しています。

パッケージデザインにこだわって商品が厳選されており、オリジナル商品にも工夫を凝らしたデザインになっています。テイクアウトしやすい点も魅力で、中でもお店の有名商品になっている、グルテンフリーのチキンナゲットのパッケージは、犬をモチーフにした印象的なデザインで、記憶に残ります。ベーカリーの箱もピンク色で、SNS映えを意識したデザインになっています。

開業前からTikTokを使ってマーケティングされていた点も注目されています。店がオープンするまでの準備の様子や、メニュー開発など、店づくりの過程を公開することで、開店前から多くのファンを獲得し、話題のお店になっていました。惣菜にも力を入れ、店舗の外にテーブル席を設け、購入した商品をその場で楽しむこともできます。話題のチキンナゲットは、開店前からファンたちが待ち望んでいた商品のひとつで、お店の前ではそんな話題の商品を楽しむ人たちの姿をよく見かけます。
異なるブランドの商品が並びながらも、全体に統一感があるのもこのお店の特徴です。品質やパッケージデザインにこだわって厳選された商品が美しく並べられており、見て回るだけでも楽しめます。高価格帯のスーパーとして話題を呼び、どんな店だろうと訪れる人も多く、その人気はますます高まっています。
新鮮な食材を届けるファーム・トゥ・テーブル
トライベッカに2022年にオープンした「Rigor Hill Market」は、信頼できる生産者が育てたニューヨーク産の野菜などの新鮮な食材に加え、それらを使った調理済み食品を販売する「農場から食卓へ(Farm to Table)」をコンセプトにしたショップ兼カフェです。

自社農園で収穫された新鮮な野菜は、高級レストランでも使用されるほど質の高いものです。そうした新鮮で美味しい食材を、地元の人々が日常的に購入できる地産地消のお店になっています。

彩り豊かなサラダや、リンゴがたっぷり詰まったアップルパイなど、新鮮さが伝わってくる魅力的な商品がたくさんあります。まるで郊外の農園を訪れたかのような体験を、都会の中で日常的に楽しめる店として、価値の高い店になっています。
野菜やサラダなど新鮮な食品の販売に加え、ベーカリーやカフェとして、テイクアウト用のサンドイッチやロティサリーチキンなどもあり、ランチの時間帯には、周辺で働く人々で賑わう人気店となっています。

ゼロウェイストのサステナブルなお店
2022年にオープンしたブルックリンのゼロパッケージのお店、「Mason Jar」は、ニューヨークでサステナブルなライフスタイルを大切にする人々から支持を集めているお店です。このお店では、日々の消費のあり方について改めて考えさせられるような体験ができます。

このお店の買い物は、まず容器を持ってくることから始まります。お店の名前「Mason Jar」にあるように、再利用できるMason Jarのような容器を持ってきます。店内には量りがあり、持ってきた容器の重さをまず量ります。その後商品を入れ、もう一度量ることで、入れた分だけ購入する仕組みです。必要なものを必要な分だけ購入する、無駄のない買い物スタイルです。

店内には、穀物やナッツ、スパイス、オリーブオイル、洗剤やシャンプー、ハンドソープなどの日用品まで、生活に必要な良質な商品が幅広く揃っています。ただし、どれもパッケージはありません。パッケージがないので、これまでのようにパッケージのデザインやキャッチコピーに影響されることなく、商品そのものを基準に選んで買い物をすることになります。

普段の買い物では、パッケージのデザインや文字などの見た目の情報で商品を選んだり、必要な量ではなく決められた量で購入していたかもしれません。でもこのお店では、買い物の基準が変わります。パッケージに惹かれて買うことはなくなり、本当に必要なものは何か、どのくらいの量が必要かが基準となります。本当の意味でのサステナブルなライフスタイルを、体験を通して教えてくれるお店です。最近のSNS発の流行店と比べると、やや年齢層は高めですが、エコ志向のコアな常連客が集まるお店となっています。

高級グローサリーストアが人気となっている背景には、ヘルシー志向の高まりがありますが、ここ数年、スタイリッシュさやラグジュアリー感、ファーム・トゥ・テーブル、エコなどの付加価値のあるコンセプトを掲げ、それぞれのコアなターゲット層に響くよう差別化された店が登場し、多様化しています。
グローサリーストアという形態ではありますが、多くの店で主力商品となっているのは、周辺の住人やオフィスワーカーといった常連客に向けた、便利な調理済み食品です。これらは利益率が高く、外食業に近いビジネスモデルと言えます。さらに調理済み食品が中心のため回転率も高くなっています。そこに、その店ならではの個性的な品揃えを加えることで、独自の魅力を出しています。
共通しているのは、個性的なコンセプトをもとに、店舗デザインやオリジナル商品、パッケージなどに工夫を凝らし、特別感のあるショッピング体験を提供していることです。これにより、コアなコミュニティを形成し、口コミやSNSでシェアされることで、トレンドとしてより広い層へ広がっていくマーケティングモデルになっています。今後もこうした個性的なコンセプトと体験を提供する専門店は、食料品の分野でも増えていくと思われます。
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