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古着屋のイメージを覆す!ヘルシンキ「リラブ」の集客できる仕組みづくり

※こちらの記事は新型コロナウイルス流行前に取材したものです



ヘルシンキ中心部のデザイン地区Punavuori(プナヴオリ)は、お洒落なショップが立ち並ぶエリア。その一角に店舗を構えるのが、人気のセカンドハンド(中古)ショップ「relove (リラブ)」です。

Photo:明るい雰囲気の店内には、所狭しとハンガーカートが並ぶ

現在リラブはヘルシンキ市内に3店舗を展開し、お洒落なセカンドハンドショップとしてここ数年注目を集めています。洋服をはじめバッグや靴、ジュエリーなどの小物類までがセカンドハンド商品として販売されており、状態の良い商品が売られていることから、掘り出し物を探しに来る人が絶えません。

また、店舗によってはポップアップショップのコーナーもあり、小さいながらも良質なフィンランド発のブランドが期間限定で出店しています。

「捨てない&ストーリーを受け継ぐ」がコンセプト

たとえ自分は使わなくなった物であっても、他人にとっては価値のある可能性もあります。それらを捨てずに、思い出やそのモノのストーリーを新たな所有者へと受け継いでいく、愛情を持ってもう一度大切に使ってもらうというのが、この店のコンセプトです。

Photo:店内には沢山の植物やアート作品が飾られており、明るい雰囲気。ディスプレイもおしゃれで見やすく、また来たくなる店舗づくりを心がけている

フリーマーケットからアイデアを得て「店舗」にしたら大ヒット

リサイクルに熱心な社会背景も後押しし、フィンランドでは中古品の取引が盛んです。例えば、夏には公園などで誰もが出店できる屋外フリーマーケットが開催されるのはもちろん、普段から一年を通して中古品売買サイトを多くの人が利用しています。

しかし、商品が洋服となると「実際に試着をしてみたい」という声や、寒い国のため「夏場以外は屋外でのフリーマーケット開催は厳しい」という声があがります。リラブはそういった問題を解決すべく、フリーマーケットからアイデアを得て、年中誰でも出店が可能な「店舗」を作ったわけです。これがまさに大ヒット。

具体的には、店が用意したハンガーカートを出店者が1週間単位でレンタルし、そのハンガーカートに好きなだけ自分の洋服や小物をディスプレイし販売できるというものです。店が提供している販売プランは以下の3つ。

一つ目は、出店者本人が店に出向き、ハンガーカートに自分でディスプレイから値付けまでを行うプラン。セルフと言っても、ディスプレイの場所や配置などは店員と相談しながら店作りを一緒に行います。7日間のハンガーカート代に加え、総売上の10%を店側が受け取る仕組み。なお、出店中のハンガーカードの掃除や洋服の整理整頓は店側が対応してくれます。

二つ目は、商品を持ち込んだ後のディスプレイや値付けを全て店側が請け負ってくれるプラン。この場合、7日間から14日間までの出店期間から選べ、ハンガーカート代と売り上げの50%を店側は受け取る仕組みです。店は商品の状態や価値を見極めて値段を決めます。

三つ目のプランは、高価なジュエリーやブランドバッグなどの商品を鍵付きのショーケースに入れて、ディスプレイと販売を店側が担うプラン。28日間のショーケースレンタル代に加え、売り上げの35%を店側が受け取る仕組みです。

Photo:ショーケースにはジュエリーなどが並べられている。

Photo:出店者が商品を持ち込み、店員とディスプレイについて話し合いながら設置しているところ。

さらに新しいサービスとして、ヘルシンキの首都圏エリアでは、自宅や指定の住所で商品を回収し、ディスプレイから販売までを請け負ってくれる完全お任せサービスも登場しました。事情がありわざわざ店舗に出向くことができない人にとって、有難いと評判だそうです。

Photo:陳列されたコーナー

頻繁に通いたくなる仕組みづくり

出店者は自分のハンガーカートの売れ行きが気になり、出店期間中は毎日のように足を運びます。一方で、これから出店する人は他の出店者がどのような商品を並べているのかも含め、リサーチに来ます。客は週替わりで入れ替わるハンガーカートを頻繁に見にきては掘り出し物を探します。このように、実にうまく出展者と客の両者が頻繁に店舗へ通いたくなる仕組みを作っています。

また、出店者が「今週出店しています」とSNSのフォロワーや友人に呼びかけるなどの口コミ効果も大きいようです。店側のみならず個々の出店者がプロモーションすることにより、集客へとつながっているのですね。

カフェ&バーを併設し、より多くの客層を呼び込む

Photo:ショップ内にはおしゃれなカフェも併設されている

Photo:売り場のすぐ隣の、キャンドルや花が飾られたテーブルでも過ごすことができる

Photo:ショップはもちろんのこと、カフェ利用が目的で来る人も多い

Photo:カフェの人気の秘密は、多様なライフスタイルに合わせた豊富なメニュー

美味しいコーヒーだけでなく、ワインなどのアルコールも提供しているほか、オーガニック、グルテンフリー、ヴィーガン向けのケーキやサンドイッチなどが揃い、食にもこだわっています。

Photo:こちらはヴィーガンチョコレートムースケーキ。どれも甘さ控えめで美味しい

Photo:野菜のキッシュとスムージなど。ヘルシーなメニューが嬉しい

リラブは、時代やライフスタイルに合ったコンセプトのもと、店と出店者が共同で店づくりを行い、誰もが気軽に立ち寄れるカフェと一体型の店です。従来のセカンドハンドショップのイメージとは少し異なる取り組みは、日本のビジネスにおいてもヒントとなるかもしれません。

All Photos & Text: Yuko Rasanen

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