利便性より美しさを重視?!なフランスの食品パッケージ
フランスに暮らして日々感じることは、街灯やゴミ箱、地下鉄のベンチ、バルコニーの鉄柵、階段の手すりなど、街で目にする何気ないものが、なんだか洒落ていて洗練されているな・・・ということ。食品パッケージもそのうちのひとつで、高級なショコラティエやパティスリー、エピスリーはもちろんのこと、普通のスーパーで見かけるクッキーの箱やジャムの瓶、卵のケースすら、その形状や色、フォントとイラストの組み合わせが素敵に映ります。大胆な配色やレイアウトで、パッと目をひくパッケージが多いフランスは、日本に比べて、見た目のインパクトや美しさをより重視しているように感じます。
逆を言えば、消費者にとって使いやすい工夫が施されているものはさほど多くなく、箱入りラップフィルムがスパッと切れなかったり、お菓子の箱が開けづらかったり、一旦開けると閉められなかったり、ソースが入った小袋の切り口が簡単に見つけられなかったり、ベットボトルが柔らかすぎて、持つと中の水が溢れたり・・・と、使いづらい食品パッケージをスラスラと列挙できてしまう状況です。あくまでも個人的な印象ですが、フランスの食品パッケージは美しさ重視で、利便性の向上に努める日本とは対照的なところがあると感じています。とはいえ、そういった不便な部分にさほどストレスを感じない大らかさがフランス人の良いところかもしれません。
さて、前置きが長くなりましたが、そんなフランスの食品パッケージの中でも、私が思わず「これは便利!」と唸った商品BEST3を紹介したいと思います。
\第3位/ フレッシュチーズ「La Faisselle」の二重食品容器
「ラ・フェッセル」は、砂糖やはちみつ、フルーツソースをかけてデザートとして楽しむ、牛乳とクリームが原料のフロマージュブランと言われるフレッシュチーズです。フランスでは一般的なチーズの一種で、カッテージチーズに似ていますが、口当たりがより柔らかで軽やかなのが特徴です。メインとデザートの間にチーズを食べる習慣がありますが、あまりお腹に余裕がないという人には、フェッセルのようなデザートとして食べられるフレッシュチーズが丁度良いかもしれません。
この食品容器の特徴は、二重構造になっているカップ。外カップの中に一回り小さい透明なカップがあり、ザルのようにいくつかの穴が空いています。お皿の上にひっくり返してチーズを取り出し、お好みで砂糖やソースをかけるのが正しい食べ方。チーズを作る際に固形物と分離されて出る液体、乳清(ホエイ)を食べる直前まできっちり水切りする役割を果たすこの内容器のおかげで、ベタッとしていないおいしいチーズを味わうことができるのです。
ちなみに、「Faisselle」とは、液状の乳清を切るための穴の空いた容器の名前なのですが、それが転じて今ではこのタイプのフレッシュチーズそのものの呼び名になりました。
Rians(リアン)はフランス中央部に位置するシェール県にある同名の地域で、1952年から乳製品製造業を家族で営むブランド。現在も、代々受け継いできた昔ながらのレシピをもとにチーズやデザートを作っています。他のブランドも似たような二重構造の食品容器を採用していますが、Riansのロゴ入りカップが最も有名でラ・フェッセルの代名詞的存在であると言えるでしょう。
→ Riansのラ・フェッセル紹介ページ
\第2位/ ロックフォールチーズの引き出し式パッケージ
はからずも同じチーズの食品容器になってしまいましたが、こちらはパンと共に食べる青カビ系のロックフォールです。フランス人にとってチーズは毎日の食卓に欠かせない一品だけあって、誰もが必ずおいしいチーズ屋さんの情報を持っていて、マルシェや専門店でチーズを求める人がほとんどですが、手軽に買えるスーパーのチーズコーナーもかなり充実しています。
チーズ屋さんで買う場合は、欲しい分量だけ切り分けてもらい、内側にフィルムが貼られた保存に適した二重構造の紙で包んでもらうのが一般的ですが、ロックフォールのように匂いが強く、テクスチャーがホロっとしたタイプのチーズだとそのような包装を不便に感じることも。包み紙を開けてチーズをお皿に移す時点で形が崩れるし、手で触ると匂いがついてしまいます。1回で食べきれない場合は、また包み紙に戻すか、お皿の上にラップをかけるかなどして冷蔵しますが、どうしても不便な感じが否めません。
今回第2位に選んだ、Sociétéの容器は一切手を汚さずに綺麗な形のまま最後までロックフォールを楽しめる優れもの!取っ手部分を引っ張り出して好きな分量をナイフで切り、食べ終えたら押して箱の中に戻せるスマートな引き出し式になっています。箱の中にすっぽりと密閉されているので、青カビ特有の匂いも閉じ込められてあまり気にならないと言う利点も。
このブランド以外だと、チーズの形がぴったりはまるプラスチック製容器にフィルムの蓋がついていて、そのフィルムを完全に剥がさなければ、また容器に貼りなおせるというタイプがあります。引き出し式はちょっとお値段が高くなりますが、便利さを考えると思わず選んでしまいます。
→ Sociétéのロックフォール1863紹介ページ
\第1位/ 瓶詰めピクルスの取り出し道具
独断と偏見で決めた勝手なランキングではありますが・・・私が最もすごい〜!と唸った便利なフランス食品パッケージ第1位は、「Tir-croque」こと瓶詰めピクルスの中に装備されている取り出し道具です。なんとも説明しづらいものなのですが、初めて見たときはすごい発明だなと思っちゃいました。
「Cornichon(コルニション)」と呼ばれるフランスのピクルスは、マリネ液やスパイス、ハーブとともにガラス瓶に詰められて売られているのが一般的。ハンバーガーに入っているような大ぶりの薄切りピクルスとは異なり、とても小ぶりなので、指でつまんで丸ごと食べたり、ハムや肉料理、チーズとともにカリカリとかじって楽しめる、料理のアクセント的な位置付けです。
一般的な瓶詰め容器だと、表面の硬いピクルスを上手にフォークで刺したり、それが難しい人は指でつまんだりして取り出すしかないのですが、ピクルスの量が減ってくるとどうしてもマリネ液の中にフォークや指先を突っ込まないと取り出すことができないと言う問題が出てきます。手が汚れるだけでなく、清潔に保つべきのマリネ液も汚れる可能性があり、ちょっとしたことですがこの取り出し方にストレスを感じている人も少なくありませんでした。そんな悩みを解消してくれたのが、今回第1位に選んだこの道具です。
ピクルスやマスタード、マヨネーズなどで有名なメーカーAMORA(アモラ)が90年代後半に発明したもので、プルトップのような持ち手が付いた長い棒の先には、瓶底サイズの円形のお皿が付いています。そのお皿に穴が開いているので、引っ張り出すとマリネ液が切れてピクルスだけが持ち上がります。取っ手棒の途中に出っ張りが2箇所付いており、ピクルスの残量によって好きな高さに引っ掛けて置く工夫もなされています。きっと、この商品が発売された時は、ピクルス界に革命が起きたのではないでしょうか・・・。それぐらい便利だなぁと思います。
ちなみに、今回記事を書くまでこのオブジェの名前を知らず、ネットで調べてみたところかなり多くの人が「ピクルスの瓶に入ってる“アレ”」と呼んでいて、私だけじゃなかったのかと安心しました(笑)。発明者であるAMORAのサイトで「Tir-croque」と呼んでおり、直訳すると「引っ張る-かじる」という感じの名前です。引っ張り出してカリッとかじってね!というそのままのネーミングが最高です。
→ Mailleのピクルス紹介ページ
→ 取り出し容器がフィーチャーされたピクルスのテレビCM(2000年)
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