日本でも人気の「レッドブル」や「モンスターエナジー」は、アメリカでもエナジードリンクの代表格です。特に「モンスターエナジー」は、豊富なフレーバーの種類や季節限定商品などが人気で、特徴的な鉤爪(かぎづめ)ロゴがずらりと並ぶ棚はひときわ目を引きます。
私自身、日本では「ここ一番!」という時の気合い入れに飲むこともありましたが、アメリカでは1缶あたりのサイズが大きく、飲みきれずに途中でギブアップしてしまうこともしばしば。人が満足する飲みきりサイズの設定も、国によって異なるのだなと感じます。
さて、日米の違いは量だけではありません。前回ご紹介したプロテインドリンクと同様に、ヴィーガン志向やメンタルケアといった新しいニーズに応える形で、エナジードリンクの世界も多様化が進んでいるようです。
Starbucks Iced Energy(スターバックス アイスドエナジー)
スタバが新たに手がけたエナジードリンク、それが「アイスドエナジー」です(画像1)。これまでも「エナジーコーヒー」として、コーヒーをベースにカフェインをしっかり効かせたRTD(ふたを開けてそのまま飲める)商品はありましたが、今回はその枠を超えた"コーヒーじゃないスタバ"への挑戦です。
フラペチーノの人気に押されるように、最近のスタバではホットよりもコールドドリンクの方へ力を入れています。そんな流れを反映してか、こちらの商品も"冷たさ"を前面に出したネーミングになっています。
スタバのエナジーコーヒーはRTD缶のみの取り扱いで、カフェ店舗のメニューにはありませんでしたが、「アイスドエナジー」は店頭で人気のメニューをもとに缶で再現した商品です。自然由来が強調されているカフェインは、一般的なエナジードリンクと同程度入っていて、しっかり目は覚めるけれど、やさしい味わいとカラフルなパッケージで、より親しみやすい印象になっています。健康志向の若い世代に向けた、"ちょうどいい元気"を提案する新しいスタバの姿がここにあります。

(画像1)
ZOA(ゾア)
俳優であり、プロレスラーでもあり、実業家でもあるドウェイン・ジョンソンが共同創設したエナジードリンクブランド、「ZOA」(画像2)。ビタミンや抗酸化成分が豊富と言われるアマゾンのスーパーフルーツ「カムカム」が使われているのが特徴です。
さらに、グリーンコーヒービーンやグリーンティー由来のカフェインも加わり、ドウェインらしい、パワフルでありながらヘルシーな印象のドリンクに仕上がっています。
パッケージデザインもユニークで、商品の特徴をさりげなく表現しているようです。特に「O」の部分には顔のようなモチーフがデザインされていて、どこかアマゾンのアートを思わせる雰囲気があります。自然とのつながりを感じさせつつ、ザ・ロック(ドウェインのリングネーム)のエネルギッシュなイメージにも通じています。

(画像2)
Bloom(ブルーム)
これまで男性的な"強さ"が前面に出がちだったエナジードリンク市場に、女性インフルエンサーであるマリ・ルウェリンが新たな価値を提案したのが「Bloom」です(画像3)。
エナジー要素はそのままに、腸内環境をサポートするプレバイオティクスを配合しています。ゼロシュガー&低カロリーで、健康や美容に気を使う女性に嬉しい機能性を備えています。
パール感のあるパッケージの優しい色合いや、フルーツ系フレーバーの軽やかな世界観も特徴的で、日常に無理なく取り入れられる「ウェルネス系エナジードリンク」として、女性に新しい選択肢を提案しています。

(画像3)
Alani Nu(アラニ・ヌー)
内側から整える「Bloom」に対して、「Alani Nu」はとにかくポップで元気!毎日をアクティブに過ごしたい10代後半~20代の女子たちに大人気のエナジードリンクです(画像4)。ある高校では、人気が高すぎて販売に購入制限を設けたというエピソードもあるほどです。
パッケージは見るだけで元気になりそうなくらいキュート&スタイリッシュで、フレーバー名も「コズミックスターダスト」や「ブリーズベリー」など、一筋縄ではいかないワクワクするラインナップです。さらに「Juicy」というサブラインでは、果実感あふれるジューシーなエナジードリンクとなっていて、"ちょっと大人なファンタ"感覚で楽しんでいるのかもしれませんね。

(画像4)
「Bloom」と「Alani Nu」は、たいてい同じ棚に置かれます(画像5)。
そして右端には「Red Bull PINK(レッドブル ピンク)」が、数あるレッドブルエディションシリーズの中から一つだけここに配置されていて、明らかにニーズやターゲットに合わせて売り場作りしているのが感じ取れます。
若い女性や、かわいくてポップなエナジードリンクを飲みたい気分の人への商品が、一つのカテゴリーとして確立されつつあるようです。

(画像5)
slate(スレート)
「slate」は、エナジードリンクでもプロテインドリンクでも缶コーヒーでもない、その間のニッチを突いて登場した新しいタイプのドリンクです(画像6)。
プロテインとカフェインが両方入っているので、筋トレ後の回復にも、朝の目覚めにもぴったりな一石二鳥タイプです。甘すぎず、ラテ系の味わいでとても飲みやすいです。
「プロテイン+カフェイン+おしゃれなパッケージ」。まるで、フィットネスジムとカフェ文化のハイブリッドです。
パッケージには、「軽く振って、ゆっくり開けてね」というちょっと不思議な指示があります。その理由もユニークで、「僕たちのドリンクは缶から飛び出したくて興奮しているんだ!だからちょっとだけ優しく振って、慎重に開けてね。あとは堂々とゴクゴク飲んでくれ!」と、まるで中身が生き物かのようなテンションで語られています。
強く振ると中身が噴き出してしまうのは、たんぱく質によって泡立ちがしやすいせいですが、そんな性質すらもポジティブに、元気あふれるイメージに変換してしまうセンスが、このブランドらしさです。

(画像6)
ZYN(ジン)
ターメリック、ウコンといえば、日本では「ウコン=肝臓ケア」のイメージが強いですが、アメリカではもっと神秘的でスピリチュアルな、自然派ウェルネス素材として注目されているようです。
「ZYN」は、そのターメリックを主役にした、ちょっとユニークなコンセプトのドリンクブランドです(画像7)。東洋の自然治癒の発想や、古代の知恵にインスパイアされたストーリー、そして日常のリズムにそっと寄り添うようなやさしい味わいが魅力です。
抹茶や紅茶キノコ(アメリカではコンブチャと呼ばれています)、チャイなど、オリエンタルな健康習慣への関心が高まる中、「ZYN」もまた、刺激よりも穏やかに整えたい気分の日にぴったりの選択肢となっています。

(画像7)
最後に
覚醒や気合い入れこそがエナジードリンクの本質と思われていた時代に比べると、今ここで広がっているエナジーの定義は、驚くほどしなやかで多彩です。カフェインで瞬時にスイッチを入れるスタイルだけでなく、心と体をいたわりながら少しずつ上向きになるように、自分らしいエナジーを求める人たちも増えている―そんな時代の空気を感じています。
頑張ることだけが元気でいることではないとしたら…これからのエナジードリンクのあり方と活用法を考えると、少しだけ肩の力を抜いてもいいのかもしれません。
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