ナッツ・プロテインバーの包装を紙製に!アメリカの次世代パッケージ
アメリカではナッツバー、プロテインバー、エナジーバー、グラノーラバーなどの棒状の栄養補助食品が大人気です。バータイプのスナックは、すぐに食べられる手軽さや持ち運びの利便性に加え、トレーニング時の栄養補給や、タンパク質の摂取量を増やしたい層にも需要が拡大しています。スーパーに行くと、種類の多さに圧倒されるほど、アメリカでは大きな市場です。
しかし、ナッツ類を含む製品も多く、酸化や湿気は製品にとって大敵です。また、輸送や陳列、携帯時における耐久性の問題からもプラスチックの包装が主流となっており、リサイクルができていない状況です。
そこで最近アメリカでは、「KIND(カインド)」をはじめとしたメーカーが包装会社と連携し、紙製のパッケージへの移行を試みています。今回は「KIND」と「MadeGood(メイドグッド)」の取り組みをご紹介します。
日本でも大人気の「KIND」
「KIND」(日本ではBE-KIND「ビーカインド」で販売)は、2年前に5,000個限定で紙製包装のオンライン販売を実施しました。その試験結果を反映し、2023年に直販で試験販売を行い、今回は2025年5月から10月までの期間限定で、ニューヨーク、カリフォルニア、テキサス、ネバダ州など、アメリカ国内の一部地域にあるホールフーズ店舗にて実店舗向けのパイロットテストを開始しています。流通や消費行動が大規模になる今回のテストで、小売業と消費者からデータを収集することを目的としています。
この取り組みを技術面で支えるのは、アトランタに本社を置く歴史のある包装メーカー「Printpack社」です。同社と「KIND」が開発した紙製の新包装には、酸素や湿気から中身を守るため、FDA(アメリカ食品医薬品局)承認のバリアコーティングが施されています。このコーティングにはポリマー分散液により少量のプラスチックが含まれますが、再パルプ化の基準をクリアし、環境保護団体「GreenBlue」が運営する「How2Recycle」認定も受けています。
「How2Recycle」とは?
2008年にアメリカで設立されたリサイクル促進プログラムで、国内にわかりやすく統一されたリサイクル表示のラベルを提供し、消費者がリサイクル方法を正しく理解・実践できるよう支援しています。現在では525のメーカー、200以上の包装製造業者が参加しています(2023年時点)。参加企業の商品を「How2Recycle」が検証後、適切なリサイクル方法を選定し、企業にラベルを提供する仕組みです。
従来のプラスチック包装での"中身が見える"パッケージに代わり、バーのイメージをパッケージにそのまま印刷しています。また、紙製の包装は従来のプラスチックのものより重みが出てしっとりした手触りになるため、手に持った感触が心地よく、高級カフェやベーカリーの焼き菓子を思わせるとして消費者から好評を得ています。パッケージには『NEW RECYCLABLE PAPER WRAPPER』と明記され、リサイクル可能であることが一目でわかるデザインになっています。
ただ、この新しい紙包装にはコストが掛かることも事実です。「KIND」は米誌Fast Companyのインタビューで「サステナビリティの実現は競争優位性ではなく"共有"が鍵」と述べ、この開発中の紙製の包装で特許は取得せず、他社と技術共有することによりコスト削減と持続可能性の両立を目指す姿勢を示しています。
このパイロット試験では、賞味期限や輸送の耐久性、デザインなど視覚的な訴求力、リサイクルの容易性、消費者体験まで多角的に検証し、同社は2030年までに毎年販売する何億本ものすべての「KINDバー」を、リサイクル可能な包装へ移行することを目標に掲げています。
オーガニックのグラノーラバー「MadeGood」
健康志向の高い層に人気のオーガニックグラノーラバー「MadeGood」は、オーストラリアが拠点の多国籍企業「Amcor社」と連携し、アースデーに合わせて4月限定で紙製包装バージョンを販売しました。
この包装にはFSC認証を受けた繊維を使用した紙製のラミネート素材、「Amcor社」の「AmFiber」が使用されています(FSC認証は生物多様性を保全し、適切な管理を受けている森林からの生産品に認証される国際的な制度)。
「AmFiber」はリサイクルプロセスに必要な再パルプ化基準を満たしているとウェストミシガン大学から認証を受けており、「MadeGood」はこの包装に変えることで包装をリサイクル可能にするだけでなく、従来のものに比べてバージンプラスチック使用量を77%削減できたとしています。
カナダのメーカーである「MadeGood」のパッケージには『I AM PAPER!』『RECYCLE ME』と、英語とフランス語の2カ国語で表記されています。「Amcor社」のウェブサイトによると、両社が共同で実施した家庭内調査では、紙製の包装を使用した「MadeGood」の製品に対して79%の消費者が通常の包装よりも「やや優れている」、または「非常に優れている」と評価。また、79%の消費者が、リサイクル可能な包装を採用していない他社製品よりも、この製品を選ぶと回答したとあります。
まとめ
アメリカではリサイクルを簡単にできるよう、カーブサイドリサイクル(自宅前にリサイクルのゴミ箱を出すと、ゴミ収集車が回収してくれるシステム)が導入されています。しかし、これまでのバータイプのスナックの包装はこの仕組みに対応しておらず、リサイクルの大きな障壁となっていました。「KINDバー」の従来のプラスチック包装も技術的にはリサイクル可能なようですが、持ち込みなどで消費者側に手間がかかれば、リサイクル参加率は大きく低迷してしまいます。
今回の取り組みにより、消費者が容易にリサイクルに参加できる仕組みが構築され、業界全体の個包装のリサイクル化へと波及していくことが期待されます。
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