紅茶よりもハーブティーを好むドイツ人
ドイツで最も好まれる温かい飲み物といえば、コーヒーです。朝食・仕事中・食後にと、人々の生活にコーヒーは欠かせません。統計によれば2016年の一人当たりのコーヒーの消費量は約162リットル。これに対して、お茶類(紅茶・緑茶・中国茶・ハーブティー・フルーツティーなど)の年間消費量は約79.3リットルという結果が出ています。コーヒーの消費量のほうがお茶類よりも多いことがわかります。
とはいえ、ドイツ人がお茶類を全然飲まないわけではありません。意外に思われるかもしれませんが、ドイツでは紅茶・緑茶よりも、ハーブティーやフルーツティー(ドライフルーツにハーブなどをブレンドしたお茶。生のフルーツは入っていません)のほうが日常生活に浸透しています。スーパーやオーガニック専門スーパーに行くと、茶葉コーナーでハーブティーの占める割合が高いのがわかります。
統計もこれを裏付けており、2016年では一人当たり約53.3リットルのハーブティー・フルーツティーの消費がある一方で、紅茶・緑茶は合計で約26リットルでした。
歴史的にドイツで身近だったハーブティー
紅茶・緑茶よりもハーブティーのほうが消費量が多いのは、日本人から見ると意外な気もします。ですが、ドイツでは昔からハーブは身近な存在で、人々はその薬効を経験的に知っていました。かつて病院としての側面もあった修道院には、ハーブガーデンがあるものです。現代でも、医師は風邪の患者に対して安易に投薬はせず「ハーブティーを飲んで寝ているように」と指示します。
また、ハーブティーはカフェインを含まないため、いつでも誰でも飲める点も長所です。商品は茶葉とティーバッグの2タイプがありますが、販売されている商品の主流はティーバッグ。手軽なことと、複数人数が飲むときに、それぞれが好みの味を選べることが理由ではないかと思われます。
イメージ重視のネーミングで選ばれる商品へ
これまでハーブティーは、ハーブの名前そのものが商品名となっていることが普通でした。例えばペパーミントならば「ペパーミントティー」、カモミールなら「カモミールティー」という具合です。しかし近年では複数のハーブをブレンドし、イメージをふくらませるような名前をつけた商品が目立つようになりました。スーパーの棚を見るとこんな商品があります。
この写真の商品名は「陽気なあいさつ」「ありがとうティー」「ラッキーティー」「もうすぐママのティー」など。名前だけではどんなハーブが入っているのかはわかりません。いずれも複数のハーブをブレンドしたものです。
別のメーカーの商品も、「山とすがすがしさ」「ザントドルン(ドイツで採れる果実)と海」など、やはりハーブティーとはわからないネーミングです。
イラストを用い、環境に配慮したパッケージ
店頭の棚から3点を選んでみました。
写真は左下から時計回りに「リラックス」「ヤーノシュ・森のくまさんティー」「レモングラス&バンザイ」という名前です。「リラックス」は、その名の通りリラックスしたいときに飲むハーブティーで、レモンメリッサやブラックベリーの葉など8種類のハーブがブレンドされています。左上の「ヤーノシュ・森のくまさんティー」は、ドイツの人気絵本作家ヤーノシュのイラストを用いたシリーズの一品で、9種類のフルーツのブレンドティーです。イラストから子ども向けの商品であることがわかります。右の「レモングラス&バンザイ」はレモングラスを中心に緑茶やハーブを加えたさわやかな味です。
3つの商品の共通点は、イラストが使われていること。しかもハーブそのものの絵ではなく、気分や目的で選ぶような商品名をイラストで表現しています。消費者には従来のスタンダードなハーブティー以外に、こうした気分・TPO重視の商品も好まれていると言えそうです。商品名やイラストからは何のハーブが入っているかはわかりませんが、パッケージ側面に使用ハーブとブレンドの割合が明記されています。
いずれのハーブティーもオーガニックで、パッケージの箱や透明フィルムは生分解性できるもの。印刷インクは鉱物油不使用と、環境に配慮しています。お茶の淹れる際のお湯の温度や量はピクトグラム入りで、誰が見ても一目瞭然です。「リラックス」と「レモングラス&バンザイ」の箱の底部にはミシン目による開口部があり、一袋ずつ取り出せます。
ドイツの一般家庭には、数種類のハーブティーが用意されていることが多いです。つまり、そのときの気分や雰囲気で選ぶということ。ブレンドのハーブティーなら、中身のハーブをそのまま商品名に反映させるよりは、雰囲気を伝えるネーミングやイラストを用いたほうが消費者によりアプローチできるのかもしれません。
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