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水曜日のネコ、悪魔のおにぎり。売れるパッケージからインサイトの大切さを見る

ドイツのハーブティーから学ぶ、消費者に選ばれるためのアイデア

こちらの記事を「プロの目線」で深掘りしたプレミアムレポートです!

はじめに

Image by rawpixel from Pixabay

マーケティングの世界でインサイト(購買行動を起こさせる潜在心理)という言葉が広まってから随分経ちました。商品開発やコミュニケーション戦略では盛んに用いられてきたことはよく知られていますが、パッケージに関してはどうでしょう。筆者だけかもしれませんが、あまり聞いたことがないように思います。

久保田由希ライターのドイツからの報告で紹介されているブレンドハーブティーのパッケージデザインはそのことに関連するだろうと思い、この記事を起点にパッケージにおけるインサイトについて少しお話しをさせていただこうと思います。

Photo:久保田ライターのレポート「ドイツのハーブティーから学ぶ、消費者に選ばれるためのアイデア」より

ハーブティーが人気のあるというドイツでは、ブレンドティーが多く売られるようになってきており、そのパッケージデザインには気分やTPO・目的で選べるような商品名とイラストで表現したものが目立つようになってきたとあります。好みのハーブを選んで買う単一素材商品とは違い、ブレンドしたハーブ素材を並べた商品名では味、香り、効能も想像し難く、手が出ないことから、こうしたデザインが受けたのだろうことは想像に難くありません。

お客様は売場に来る前にハーブティーというカテゴリーは決めていたとしても“こういう気分”に合うハーブティーとか、“あの目的、シーン”に合うハーブティーという具体的なニーズを持って商品棚の前に来ることはまずないと思います。売れている理由とすれば、商品パッケージを見て“こういう気分”になりたいでしょ、“こんなTPOシーン”を魅力的にしますよ、と潜在的にあった欲求に気づかせてくれたというところでしょう。この買う行動を起こさせる自分では気づいていなかった欲求や心理がインサイトです。

インサイトを意識した商品パッケージデザインを探す

日本の商品で、このインサイトを消費者から探り出し、商品やパッケージデザインに実践したものがあるでしょうか。デザインに限ってだけですが、ドイツの紹介例に近いかなと思わせてくれるのが、「よなよなエール」で有名になったヤッホーブルーイングのクラフトビールです。

Photo:ヤッホーブルーイングのクラフトビール

こちらの商品を見てください。「インドの青鬼」「水曜日のネコ」「僕ビール、君ビール」など、従来の大手ビール会社によくある素材や味特徴をネーミングとしたり、爽快感、シズル感をヴィジュアル化したりするのではなく、物語を感じさせるとか、飲むシーンと気分を思わせる商品名やデザインとなっています。

13年連続増収増益で現在も成長中というヤッホーブルーイングの成功はこうした商品デザインももちろんですが、消費者の潜在下にあった欲求、すなわち商品作りの物語情報や参加型の経験価値を上手く提供することで築かれたと語られています。こうした戦略を取るために、顧客がヤッホーのビールを愛飲するインサイトを探り、発見したというものです。インサイトの内容やまつわる話は下記参考のサイトに紹介されていますが、商品開発、ネーミング、パッケージデザインにもインサイトの考え方は生かされています。

「インドの青鬼」はその誕生ストーリーと味わい(強い苦味)を込めた物語的表現。「水曜日のネコ」は働く女性を意識して週の真ん中に心をゆるめるひと時を伝える表現。「僕ビール、君ビール」はビールが苦手な最近の若い人向けに、ビールのイメージが変わる味をカエルイラストで、そして仲間と飲むシーンをネーミングで表現。全てヒットさせてきました。

店頭で大手メーカーのビール商品群の中にあって、まずどれも目を引くデザインであることは成功要因のひとつです。そして消費者はネーミング、デザイン表現を見て「そう言うなら飲んでみるか」と自分に共感するところを見つけて購入されているのではないでしょうか。

ただこのデザイン手法には少し注意も必要です。ヤッホーでは長い時間をかけて共感情報のソーシャルネット等での発信や活動を続けて築き上げたファン顧客の地盤があるのが前提です。どこもかしこも表面的に同様のことをやれば成功するものとは限らないですので、よく市場ポジションを考えることが必要と思います。

Photo:ローソン「悪魔のおにぎり」

ある種似た表現の大ヒット商品がローソンの「悪魔のおにぎり」でしょうか。2018年10月の発売で、日販10個売れれば大ヒット商品と言われる中、この“やみつき注意”「悪魔のおにぎり」は1日48個という売行きを記録し、発売から13日間で265万個を突破したといいます。

こちらも通常ならメニュー名や有名素材を名称にして商品化するところですが、食べてみたい期待感という心理に訴えるネーミングとローソンタヌキの悪魔キャラクターを中心としたパッケージが棚で異質感を発しています。顕在化している味嗜好ニーズからだけでは生まれ得ない商品であり、保守的なカテゴリーだけど新たに経験したい期待感というインサイトに触れた成功商品ではないでしょうか。

Photo:セブンイレブン 冷凍食品「炒め油香る チャーハン」

同じご飯もので、セブンイレブンにもインサイトをつかんだヒット商品があります。冷凍食品の「炒め油香る チャーハン」(カップ入り)他です。同社既存の袋入り冷凍チャーハンの2倍の勢いで売れ、冷凍食品全体の売り上げ増を牽引したと記事になっています(日経クロストレンドより)。

この商品の開発者は「何を買っているか」よりも「何を思って買っているか」が大事と言います。店の現場で消費者が袋入り冷凍チャーハンをレンジアップしてその場で食べる行動に直面し、自宅でなくともさまざまなシーンで食べてもらえる商品がいけると確信しました。

この商品で狙ったインサイトはデザイン表現というよりもパッケージ形態で訴求されています。ドライ商品では当たり前のカップ容器ですが惣菜の冷凍ショーケースでは異彩を放ち、説明なくとも今すぐチンして食べてねと心に訴えかけてくる容器です。インサイトを捉えるこのカップ容器開発に辿り着くまでに苦労されたようです。米飯ものをパーソナルな小容量で充填する、冷凍からレンジアップまでの耐熱対応など難しい技術を乗り越えられています。

Photo:ライオン「ルックプラス バスタブクレンジング」

一方トイレタリー分野で見てみますとライオンの浴室用洗剤「ルックプラス バスタブクレンジング」の商品アテンションシールにインサイトに訴えかけるデザインが見られます。高価格(300円)でありながら発売後半年で1300万個を超えるヒット商品となっています。

ポイントはシールに書かれたコピー「こすらずに60秒待つだけ」。調査して見出したユーザーインサイトは、消費者が欲しいのは高性能な浴室用洗剤ではなく→毎日きれいなお風呂に入りたい→毎日の浴槽のこすり洗いが最も大変→そして《そこから解放されたい 》という心理であるという(日経クロストレンド記事より)。

以前にもルックの同系商品に「こすらずツルピカ」のコピーはつけたことがあったが、製品性能に使用後実感がなかったことから、消費者にはコピーの信用性がなくあきらめ感があったようです。今回響いたコピーの違いは「60秒待つだけ」だと言えるでしょう。数字マジックの効果ですが、60秒待つだけのリアルなシーンを思い起こしませんか。

通販におけるインサイト表現デザインのひとつの形

Image by athree23 from Pixabay

最後に近頃よく話題になるLOHACOの限定パッケージデザインを取り上げたいと思います。

2016年の「キリン生姜とハーブのぬくもり麦茶moogy」から花王「ビオレU泡で出てくるボディウォッシュLOHACO限定デザイン」、ハウス食品「ペパー香る!バターチキンカレー」、ミツカン「かおりの蔵 丸搾りゆず デザインボトル」といった限定デザイン商品が成功していると報告されています。

このうち多くは通常の一般小売店で売られていて既に認知のある商品であり、それを基盤に通販ならではの画面情報に乗せてインサイトに訴求する思い切ったパッケージデザインを売りにしています。各々すでに販売期間終了のため、リンク先の紹介記事を参照いただきぜひデザインを見てみてください。

ビオレU泡で出てくるボディウォッシュLOHACO限定デザイン」は透かし和紙で作ったレースのような温かみのあるグラフィックをパッケージにデザインにしたということです。「ペパー香る!バターチキンカレー」はかわいいペパーと水玉のイラストが並ぶ柄調デザイン。「かおりの蔵 丸搾りゆず デザインボトル」はポン酢と分からないように、黒を基調にしたモノトーンのデザインを採用されています。

これらに共通することは、販売訴求のためのコマーシャルデザインでは無理な、部屋やテーブルに置きたくなるようなデザイン、また従来の決められたイメージを超えて思い思いの用途シーンで使えるようなという気分の表現。それがインサイトと言えそうです。そしてLOHACOユーザーの30~40代の女性の心理に沿うデザインを開発しています。ミツカン商品ではユーザーのレビュー意見を分析したところ、デザインに価値を感じていたことが結果として出たということです。

さいごに

インサイト。自分では気づいていない潜在心理ですから、アンケートなどでユーザーに聞いても答えは出てきません。ユーザーの普段の生活に入り込んで無意識の行動を観察する中で見つけることがひとつの方法です。

上に挙げた商品例は際立ったものを中心に選びましたが、現在皆さんが担当されているその商品のデザインにも少しインサイトの考えを取り入れることは成功への道だと思いますが、いかがでしょうか。

 

[参考]

「インサイト」とは?マーケティング戦略に役立つ消費者の心理 / 株式会社WOWOWコミュニケー ションズ
https://www.wowcom.co.jp/blog/775/

ヤッホーブルーイング株式会
https://yohobrewing.com/

クラフトビールでヒット連発、その「愛される仕掛け」とは? 熱狂顧客を育んだヤッホーブルーイン グの快進撃/日経BizGate https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO3110138029052018000000

LOHACO moogy
https://lohaco.jp/event/moogy/

 

※以下に列記した「日経クロストレンド」のサイトは有料会員制ですが、記事前半は無料枠となっており、本文紹介商品の画像を見ることができます。

セブン「冷凍カップチャーハン」着想の原点 データの裏に宝あり/日経クロストレンド
https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/18/00159/00006/

花王ビオレが「LOHACO限定デザイン」で3倍も売れた理由/日経クロストレンド
https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/18/00162/00002/?n_cid=nbpnxr_mled_ranking

アスクル「LOHACO」が急成長 原動力はデータ分析とメーカー共創/日経クロストレンド
https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/18/00162/00003/?n_cid=nbpnxr_mled_feature

ミツカン、黒いゆずポンがヒット デザインで若い女性にアピール/日経クロストレンド
https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/18/00162/00004/?n_cid=nbpnxr_mled_feature

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