エコ先進国のフランスには「断捨離」という概念が存在しない?フランス人のエコバッグ事情
フランスでスーパーに行くと、すれ違う全ての人が自分専用のマイショッピングバッグを持って歩いています。これは日本で言うエコバッグですが、日本のものよりはるかに大きく、発売している企業ごとに斬新なキャッチコピーをプリントしているものもあります。更にとても丈夫で軽く、機能性に富んでいます。
フランスでは買い物をする際、プラスチック袋は日本と違い有料なので、誰もが食料品を買うときのためのエコバッグを最低二~三つは自宅に置いてあります。
現在、世界中で問題提起されているプラスチック廃棄問題。エコ大国でもあるフランスの反プラスチック活動には、我々日本人にも参考になるアイデアがぎっしり詰まっています。今回は、そんなエコ大国フランスのエコバッグ事情を徹底解説していきます!
大型スーパーマーケットが販売するエコバッグ
フランス政府は2016年7月1日から、スーパーマーケットでのプラスチック袋の提供を全面禁止にしました。食料品を購入する際は、エコバッグが必需品です。各スーパーに買い物かごが設置されており、持参したエコバッグにそのまま欲しいものを詰めて、レジでお会計する人がほとんどです。
フランスで店舗数の多い大手スーパー、MONOPRIX(モノプリ)のエコバッグはデザイン・機能性ともに評判がよく、販売している種類も豊富です。
1.5リットルのペットボトルが6本は余裕で入り、耐久性も抜群です。ひとつ1.5ユーロ(約180円)。持ち手が2パターンあるのが便利で、折りたためます。フランスの一家に一枚はこの形のエコバッグがあるのではないでしょうか。
また、エコバッグ表面に大きい文字で『UN SAC POUR DEUX MAINS ET APRES POUR DEMAIN AUSSI』と書かれています。これは日本語に訳すと『二本の手のためのバッグ——そして明日もこのバッグで』となります。フランス語だと、「二本の手」と「明日」の発音が同じです。そのためフランス語ならではの言葉遊びと言えますが、MONOPRIX(モノプリ)ではこのようなメッセージ性のある文字のデザインを、エコバッグによく起用しています。
MONOPRIX(モノプリ)と言えばこのエコバッグを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、小さく折りたためるこのエコバッグはとても便利で、外出先で「そういえばアレ買わなきゃ!」と何かを思い出したときなどにカバンに入れておくと大活躍します。ひとつ1.5ユーロ(約180円)。限定デザインがシーズンごとに出るので、フランス旅行のお土産としても大変人気のあるアイテムです。
これは買い物以外でも便利!と思ったのがこちらの保冷用エコバッグです。近年フランスでも温暖化が深刻化しており、今年の夏はパリで40度を記録しました。暑さに慣れていないフランスでは、食品の衛生環境が日本のように快適でないことも…。
フランスでは猛暑対策のグッズが未だに少ないのが現状です。この保冷用エコバッグは生鮮食品の買い物以外にも、ピクニックなどの外出時に活躍しそうです。お子様のいる家庭は学校行事の時などに役立ちそうです。こちらもひとつ1.5ユーロ(約180円)。
非常に大きな売り場面積で有名な郊外型スーパー・AUCHAN(オーシャン)が販売するエコバッグは、MONOPRIX(モノプリ)ほどデザイン性が良いものではありませんが、値段も安く破れにくいです。
『L’economie circulaire, pensez-y!』と書かれてあります。日本語に直訳すると、『経済は回る、考えましょう!』となります。つまり、このバッグはまた使えますよ、経済のことも地球のことも考えましょう!と企業側が提起しています。廃棄の際はもちろんリサイクルゴミに出します。
個人的な意見ですが、企業側がここまで強めのメッセージをエコバッグ自体に添えるのは良いことだと思います。というのも、筆者がフランスに移住したての頃は、エコバッグを持参してスーパーに買い物に行く行為にまだ慣れず、いつも忘れることが多かったので、その度にエコバッグを購入していました。
AUCHAN(オーシャン)のエコバッグなどは高価なものではないので、「まあいいかな?」と買ってはゴミ袋にして廃棄を繰り返していたところ、フランス人の夫に叱られたものです。「日本人は地球のことは考えないのか?」と。かなり耳に痛い言葉でしたので、今ではエコバッグは絶対に忘れずに無駄なプラスチックは増やさないようにしています。
事実、プラスチック問題は“向こう側の誰か”の責任ではなく、私たち一個人の責任です。目先の「まあいいか」の感覚が環境破壊につながっているかもしれません。
毎日目にするエコバッグにこの『L’economie circulaire, pensez-y!』のようなキャッチコピーがあり、日常的に無駄なプラスチックを増やさない習慣が出来たら、もっと環境保護問題に向き合う時間が増えるでしょう。
好感度セレクトショップが販売するデザイン型エコバッグ
パリの流行の発信地、マレ地区にある「Merci Paris(メルシー・パリ)」は、パリで一番と言ってよいほど規模の大きなライフスタイル提案型セレクトショップです。地下1階~2階建ての造りで、取り扱うアイテムは衣・食・住に関わるもの全て。「Merci Paris(メルシー・パリ)」のエコバッグは特に人気の高いアイテムです。値段はひとつ35ユーロ(約4200円)~と少し高めですが、丈夫でサイズも大きめなので、筆者も通勤用として使っています。
「Merci Paris(メルシー・パリ)」では、よく一階のイベントスペースで商品キャンペーンやプロモーションが行われています。訪れた日は偶然にもリサイクルのイベントが行われていて、ガラスを再利用して造られたグラスや花瓶、エコバッグなどが販売されていました。
「Merci Paris(メルシー・パリ)」で扱う商品の多くは、エコ大国フランスの主流となっている「リユース・シンプル」を最大限に表現したものです。
ちなみに「Merci Paris(メルシー・パリ)」の収益の多くは、マダガスカルの女性と子供を支援するために使われています。クリエイティブなインスピレーションを刺激するだけでなく、その人道的な哲学も他のショップと一線を画していると言えるでしょう。人にも環境にも優しい、厳選されたエコバッグが手に入ります。
フランス人に根付いた倹約精神とフランス政府の取り組み
実は「断捨離」という概念が存在しないフランスでは、物を捨てない傾向にあります。日本ではできるだけ物を減らすシンプルな暮らしが提案されていますが、フランス人は物をほとんど捨てません。といっても、生活していると物は増えていくので、洋服にヴィンテージ加工をして再利用したり、雑貨を蚤の市で売り出したりします。
こうして一度購入したエコバッグも破れるまで使うので、自然とプラスチックごみは減ります。唯一、スーパーで無料提供しているのが下述する野菜用プラスチックバッグです。
また、フランスならではのエコな法律もあります。例えば、個人が環境にやさしい暖房/冷房器具を買ったり、エコカーを買ったり、電気代を抑えるために窓を二重サッシに買い換えたとしたら、なんと行政からキャッシュバックがあるのです。
そのシステムの詳細は、自己申告制となっており、領収書を行政に証明できれば、その年の所得税から一人あたり上限8,000ユーロ(約96万円)引いてくれるというものです。(フランスは所得税の支払いは年にまとめて一度です。)96万円もの金額をエコアイテムに使うほうが逆に難しそうですが、家の建て替えやエコカーの購入時にはかなり助かるシステムです。
さらに、支払うべき所得税が上限の8,000ユーロに満たない場合は、差し引いた額が口座に振り込まれることになっています。(例:所得税の支払総額が3,000ユーロだった場合、5,000ユーロが支給されます。)
慣れると楽しいエコ生活
フランスで生活をしてみて感じたのが、「便利」と「エコ」が真逆の位置にあることです。生まれながらに便利でスピーディーな日本の環境に甘えることができた筆者は、今更ですが不必要な「便利」をあえて避けることにしています。
フランスがエコ大国と言われるようになったのは、政府のエコ対策が分かりやすい形で国民に還元されていることに始まっています。小さなことでも地球のためになっていると実感できるのは嬉しいものです。今度はどんなことをしよう、何かエコ対策で良い情報はないのかな?と次第に能動的になります。
私たち一人ひとりや企業が環境保護のためにできることは、実に様々です。ですが、プラスチック袋を辞めてエコバッグに買い替えることは、一番身近で誰もが簡単に始められる第一歩ではないでしょうか。
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