日本でもドイツでも生理用品に大きな動き
最近、生理用ナプキンやタンポンのパッケージデザインに関する話題をよく目にします。昨年は、日本のあるメーカーがタンポンのパッケージデザインについてプロジェクトを立ち上げたり、別のメーカーがブラウン1色のシンプルなパッケージの生理用ナプキンをネット通販限定で販売したりと、大きな動きがありました。
実はドイツでも動きがありました。ベルリンのスタートアップEinhorn(アインホルン)が、これまでにない生理用品を発売したのです。アインホルンの生理用品ラインナップは、昼用と夜用の生理ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、タンポン3種、そして月経カップ2種。いずれも、これまでの製品とは一線を画したパッケージデザインが特徴です。
素材にはオーガニックコットンや、トウモロコシからできたバイオプラスチックが使われています。アインホルンのホームページでは、既存の生理用ナプキンやタンポンのほとんどにはプラスチック素材が使用されているが、同社製品にはオーガニックコットンが使われているために体と環境にやさしいと説明しています。
日用品を通して持続可能な社会へ
アインホルンは2015年2月に誕生したスタートアップ。スーパーで買うような日用品をフェアで持続可能、かつグッドデザインにすることを企業理念に据えています。つまり、単にデザインのよい商品を製造するのではなく、日用品を通して持続可能な社会に変えようというビジョンを明確に訴えています。
こうした強いビジョンは、特にスタートアップでは不可欠だと思います。多くの商品の中から一つを選ぶ際の理由は品質や価格、パッケージの好み、なんとなくの印象など様々でしょうが、「企業のビジョンに共感する」ことを重視するドイツ人は珍しくありません。
アインホルンが最初に商品化したのはコンドームで、次に生理用品のラインナップが発売になりました。さらに生理用品に対して、軽減税率7%の適用を求める署名運動も展開。ドイツではこれまで生理用品は19%の付加価値税(日本の消費税に相当)の対象でしたが、その運動によって今年2020年から生理用品の税率は19%から7%へと下がりました(ただし、税率は下がったものの一部メーカーが商品価格を上げたために、結局消費者が購入する金額は変わらないという報道もあります)。
また、利益の50%は、自分たちのサプライヤー内での社会的・持続可能なプロジェクトに投資しているそうです。
こうした動きからも、強いメッセージ性を受けます。現代では、企業は単にモノを作って売るのではなく、社会をより良く変える、問題を解決するなど、社会に関わる姿勢が問われる時代だと感じます。
環境に配慮したパッケージ
実際に昼用生理用ナプキンを購入して、中身を見てみました。
ポップなイラストを用いたパッケージは店頭でも人目を引きます。日本人の好みとは異なるかもしれませんが、既存品とは明らかに異なるデザインという意味では、日本で広がっている新たな生理用品デザインのムーヴメントと共通しそうです。
この商品の外装は、紙箱とプラスチック製の袋で構成されています。紙箱はリサイクルペーパーでできており、印刷に使われているインクは公的機関で保証された鉱物油不使用のもの。紙箱とプラスチック製の袋は中で接着されており、店頭で箱から袋が落ちることはありません。
箱からプラスチック製の外装を取り出すと、箱の内側にはナプキンの素材について詳しい説明が書かれていました。ナプキンは3層構造になっており、上2層にはオーガニックコットンが、下はバイオプラスチックが使われているとあります。この時点で、かなり説明が多い商品だという印象を受けます。商品説明だけでなく、生理に対する偏見をなくそうという姿勢がパッケージ全体から見て取れます。
外装の袋のミシン目を破ると、個別包装された中身が並んでいます。
価格は一般的な製品の2倍以上
個人的な感想になりますが、使用感はこれまでの一般的な生理用ナプキンに遜色はありませんでした。ただし、格段に快適とも思いませんでした。アインホルンの商品は、同社のホームページから通販で購入できるほか、ドイツ全国に展開するドラックストアチェーンのdm(デーエム)でも取り扱っています。
価格はこれまでの一般的な生理用ナプキンに比べると2倍以上。毎月使用するものですから、この価格の違いは年間にすると大きな額になります。果たして「持続可能、フェア、オーガニックコットン」という要素でどれだけの人が継続して購入するかはわかりませんが、アインホルンがこれまでの生理用品に一石を投じたのは間違いないでしょう。
ドイツで暮らしていると、持続可能な社会、脱プラスチックという言葉を日常的に耳にします。「自分ができるところから一つずつ実行していこう」と考えている人に、アインホルンの製品は一つの選択肢となりそうです。
▼パケトラおすすめの関連記事
社会の変化を映し出す、北欧の生理用品事情(前編)